第39話 才能と煩悩
こんばんは( ´∀`)
遅くなり申し訳ありません。
最新話が書き上がったので投稿させていただきます。
また見ていただけたら嬉しいです。
「というワケでユキトくん。
キミにはもう一度、管理センターに入ってもらうよ。
キミなら何度も管理センターに入ってるみたいだし大丈夫だよね。
あのラボの管理センターなら、PCに繋いだUSBメモリのデータくらい出せると思うし」
「本当に何でもお見通しなんだな。
出来なくはないが、USBを使った痕跡を復元するところから始める。
少し時間がかかるがな」
「よし、決まりだ」
余裕のある笑みを浮かべ、クリオネが指をポキポキと鳴らす。
「あのー、ユキトさん?
次、勝手なことをしたらラボを出て行ってもらうってカイ所長が言ってましたよね?
こんなこと見つかったら今度こそ本当にまずいですよ!」
そんなマオの制止は全く気にしていないユキト。
「なら見つからなきゃいい話だろう。
ラボをクビになりゃ、他の研究所に行くだけだ」
愛ラボ精神とでも言うのだろうか。
ユキトにはそんなものなど全く持ち合わせていないらしい。
それはそれで少し淋しい。
きっと今回はクリオネのサポート付きだから上手く見つからずに切り抜けられると信じたいが……。
マオは大きくため息をついた。
――――――時は遡り、その少し前のこと。
ユーゼンのとある一室では奇妙な機械が稼働していた。
ヴゥゥゥゥゥンと低く唸るそれは部屋の半分くらいを占めており、かなり大きい。
陽光が全く射さない部屋にも関わらず、たいした電気がついていないのは研究の妨げになるからだ。
明るい蛍光灯の代わりに薄暗い、かなり弱めのブラックライトで照らされた室内が不気味な雰囲気を醸し出している。
大きな機械の近くには寝台がひとつあり、そこに横たわる若い男性は露わになった上半身に、頭に、幾つもの電極をつけて目を閉じていた。
「やはりあと2年か……。
天才には到底及ばない」
喜美はそう呟き、機械に繋がれたPCの画面を確認してから部屋を出た。
「お疲れ様です、喜美所長。
ウシオのメンテナンスは順調ですか?」
声をかけてきたのはショートヘアの女性研究員。
少しクセのある髪が無造作に生えているが、本人は全く気にしていないようだ。目の下にはいつもクマができている。
まるで死んだ魚のような虚ろな目をして、低めの単調な声からは感情が読み取れない。
水乃 衣織。
喜美は彼女が苦手だった。
「良くも悪くも順調だな。
クローニングの身体、その機能を補助する体内の機械には何ら問題ない。
ただ、何度計測しても脳はもってあと2年といったところだろう。
現状で人間の営みを普通に行うにはやはり負荷がかかりすぎる。
改善が必要だな。
新しい検体を用意してくれ」
「それはウシオはもう用済みと言うことでしょうか?」
立ち去ろうとする喜美に彼女が声をかける。
声の起伏は変わらないが、いつもの虚ろな目がより一層深くなった。
「水乃くん、以前にも話したと思うがあまり実験体に思い入れを持たないでくれ。
そもそもウシオはまだ試作段階だ。
篝社長の目に留まったから世に出して様子を見ていただけの事。
それがなければとっくに処理場行きだったことを忘れるな」
「なるほど。
結局はテレビ局の社長が気に入りそうな玩具を用意する為に、間に合わせで作ったのがウシオだった訳ですね」
「何が言いたい?」
喜美は彼女の角が立つような言い方に苛々していた。
「何も。
なぜウシオの作成を我々に急がせていたのか意味が分かりました。
そしてあの日、あなたがウシオを連れてテレビ局に出資を依頼しに行った意味も」
彼女が何を考えているのか、表情や声からもやはり全く読めない。
喜美はこの得体の知れない扱いづらさにいつも嫌悪感を抱く。
「君も脳科学者の端くれだろう。
ならば『新人類』の脳をもう少しまともに作ってくれなければここにいる意味がない。
いっそのこともう一度、あの天才の頭脳を借りたいくらいだ。
君のせいで『エヴァンディール計画』が機能しなくなるのは遠慮願いたいからな」
「…………努力します。では」
彼女は丁寧に一礼をしてその場を去った。
ウシオは彼女が手掛けた2作目の『新人類』試作品だ。
特に今回、脳は彼女ひとりでプログラムを組んだと言っても過言ではない。
しかしそれでは足りないのだ。
まだだ、まだ求めているレベルには到底及ばない。
「人を作ると言う行為は天才にしか成し得ないのかも知れないな」
喜美は目を閉じて何かを考え込んだ後、階段へ向かって長い廊下を歩き出した。
目的は『クローンボット研究室』だ。
ピピッ。
目当ての部屋の前にある機械に自分の社員証をかざすと扉が開く。
その入り口を当たり前のように通る喜美。
「お疲れ様です、所長」
部屋の中にいた研究員数人が喜美の顔を見た途端、そちらへ向き直り挨拶を交わす。
「クローンボットの方は順調か」
喜美の問いかけに彼自身、名も知らぬひとりの研究員が答えた。
「極めて順調です。
あと何度かテストを行い、合格すればすぐにでも製品化ができるかと」
「あぁ、例のお披露目会のことか。
あれは宣伝も兼ねた良い製品テストだ。
このまま問題なく製品化出来ることを期待しているよ」
「はい!」
研究員が気合の入った返事をする。
喜美は自分が研究室に入った時から研究員のピリピリとした空気を感じ取っていた。
それは『絶対に失敗は許されない』という緊張感からなのだろう。
あまり好きではない空気感だが、研究員のモチベーションがそれで保たれるというのなら問題はない。
「実は今日ここへ来たのは、先日のお披露目会の事なのだが……。
あの時にクローンボットを操作した人間の脳波データを見にきた。
誰か持ってきてはくれないか」
研究員たちの緊張感が何故かさらに増している。
そこへ先程とはまた別の研究員が喜美の元へやってきて、資料を手渡した。
「申し訳ありません。
他のデータはまだPCとの同期が済んでいませんので……済み次第すぐにお持ち致します」
研究員がペコリと頭を下げる。
喜美は時間がかかっている事に不満を漏らしそうになるが、努めて冷静に振る舞った。
「構わない。
クローンボットが製品化しても引き続き脳波データの収集を頼むよ。
あぁ、それともうひとつ。
お披露目会の開催場所を提供いただいた白鷺優吾氏に謝礼の準備を」
そう言って喜美は『クローンボット研究室』を後にする。
そして再び、あの大きな機械が唸る部屋へと向かったのだった。
今日の晩ご飯はおでんでした。
皆さんは味噌おでん派ですか?普通のおでん派ですか?
私はおでんってご飯のおかずには厳しいと思いますが、どちらも好きです笑
ではまた最新話を書きに行ってきます(^^)
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