第38話 クリオネ的『スプーフィング』法
おはようございます( ´∀`)
本日、ストックの最後を放出させていただきます。
よろしくお願いします!
「でもこれを実行するのが大変なんだよねぇ」
クリオネは悩むフリをしながら続ける。
「どうやってユーゼンとコマイサンの合否の行き違いを作るかずっと考えていた」
もし彼女が不採用だった場合は社員証自体、発行されない。ユーゼンも彼女に不採用通知を送って終わり。社員証を手に入れるという計画は御破産になる。
だが彼女が内定を取れたとすれば、ユーゼンは本物のコマイさんへ社員証を送るだろう。しかし普通なら社員証は決してこちらには渡らない。
先程クリオネが言った通りの犯罪紛いな……いや、というかモロ犯罪になるようなことをしない限りは。
「ほんと、よくできた計画ですよね」
マオは不謹慎ながらもこのトリックに胸が高鳴っていた。
「オレがコマイサンの面接のことを知った時、まだユーゼンは彼女に内定通知を出していなかった。
これはチャンスだと思ったよね。
マジで運が良いよ、オレたち。
早速ユーゼンのPCに入り込み、彼女のメールアドレスを調べて、ユーゼンのPCからお祈りメールを送ったように見せかけた。
同じような手を使って、ユーゼンから彼女へ送られるはずのメールは全部オレの元へ。
だから彼女に送られてくることはない。
ユキトくんなら分かるかもしれないけど、IPスプーフィングっていうやつの応用だね」
「なるほど。なかなかやるな」
ニヤリと笑うユキトの顔にはやはり感心と驚きが浮かんでいた。
「なんですか、ソレ。そんなスプーンとかフォーク? とかよく分からない方法で採用を不採用にできるなんて……。
コマイさんが気の毒ですよ」
マオがそう言うとユキトは冷静に答える。
「気の毒なんてことはないだろう。
ユーゼンなんて所詮、得体の知れないことばかりやってる連中の集まりだろう。
寧ろ、そんなところに入社しなくて良かったと俺たちは感謝されるべきだ」
「まぁ……、それもそうなんですけど……」
そう言われると変な納得がマオにも生まれてくる。
「さて、これでコマイサンはユーゼンに関わって来れなくなった。
だけど彼女なら心配しなくてもいいと思うよ。
確かに可哀想なことしたけど、そこそこ優秀だったから。
この業界からは引く手数多だろうしね。ほら」
そう言ってクリオネは自分のPCにダウンロードしてあるコマイさんの履歴書を見せた。
マオとユキトが揃ってPCを覗き込むとそこには輝かしい経歴が幾つも書いてある。
ざっとまとめると科学系の超一流大学を出て、外国で数年ほど医療クローニングを学び帰国。
医療クローニングか。
ユキトから話は聞いたが、ユーゼンにはその技術師たちとのコネもある。
もし素人がそんな経歴を語ろうものなら、途端にそれが偽物だと彼らは分かってしまうことだろう。
「どうしよう……。
私、医療クローニングなんてやったことありませんよ。確かあれってかなり高度な技術ですよね?
今から少し勉強したくらいではとても……」
自分とコマイさんの経歴があまりにも違いすぎる。
これは人の心配をするより、自分の心配をした方が良さそうだ。
「大丈夫、もっと簡単な方法があるよ」
クリオネは不敵な笑みを浮かべる。
「どうすればいいんですか?」
困っているマオにクリオネは得意気に答える。
「なりきればいい。
そこに絶対的な自信と少しのトーク力を持って。
知らないことは自然に話題を変えて答えないように、知ってることだけを話せればいい。
立ち振る舞いに自信を持って!
じゃないと怪しまれる。なんてね。
…………どう?
今の説得力あったでしょ?
これが潜入時に役立つオレ的『スプーフィング』法!」
「んー……。
よく分からないです」
マオの冷ややかなコメントにクリオネはガックリと肩を落とす。
「えー!!
そりゃないよぉ。
ま、何処かで役立つかもしれないから覚えておいて損はないと思うけどね」
確かにクリオネの言葉には妙な説得力があった。
でもこれはクリオネだからこそ成せる技だ。
果たして自分がやってどこまで通用するのか分からないが、他に方法がないならやるしかない。
「努力します。
絶対にヤヨイさんを見つけて一緒に帰らなくちゃいけないから」
マオの目を見たクリオネはうん、と頷いた。
「今、ヤヨイサンがユーゼンで使ったであろうPCを調べてる。
ユーゼンには社内のPCに独自の識別番号をつけて管理する決まりがあるから、その識別番号が分かればあのGPSの情報と照らし合わせてヤヨイサンの正確な居場所が分かるはずだよ。
居場所が特定できたら、マオちゃんとユキトくんには救出に向かってほしい」
「分かりました」
「ああ」
ふたりが返事をした後、クリオネは少し言いにくそうに続けた。
「それと……お宅の所長さんの事なんだけど……」
「何だ。何か分かったのか?」
ユキトが早く話せと促す。
「確かにユキトくんの言う通り所長さんのPCから怪しいデータは見つからなかった。
もう、ずうっと半日もPCの動きを監視してたから疲れちゃったよ。
だけど今日の午後、動きがあった。
PCにUSBメモリを使った記録が残ってたんだ。おそらくその中に何か大切なデータを保管してるんじゃないかな?
データの名前は『sideB 研究記録』ってなってたけど……心当たりある?」
「sideB?
聞いたことないけど……何でしょう?」
正直、マオには全く検討がつかなかった。
sideBがあるということは、sideAなんてものもあったりするのだろうか。
マオに尋ねられたユキトも気難しい顔をしながら答える。
「心当たりなんてないな。まったく。
そのデータの他には何か残っていたか?」
「いいや、なぁんにも」
クリオネがあっけらかんとして言った。
「なら、普段はUSBを使った痕跡を綺麗さっぱり消しているのかもしれん。
今日はよっぽど焦っていたか、急いでいたか。
うっかり痕跡を消し忘れたってことか」
ユキトがひとりごとのように呟く。
クリオネはそれを聞き、大きく頷いた。
「オレも同意見だね。
お宅の所長さんを疑うようで悪いけど。
こんなことしてたら、まるで何か隠しているみたいだ。
所長さんが何を隠してるのか……。
メチャメチャ気になる。
ねぇ、知りたいよぇ?
暴いちゃおっか!」
怪しく楽しげに笑っているクリオネを見て、マオは心底思った。
情報屋とはユキトと同じか、それ以上に恐ろしい職業なのだと。
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ストック分はこの回で出尽くしました。
その為、次回からまた出来上がり次第、順次投稿させていただきたいと思います。
毎日投稿ではなくなりますが、完結させたいと思いますのでまた見に来ていただけたら嬉しいです。
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