第35話 天才ピアニストの秘密
遅くなってしまい申し訳ありません。
本日もよろしくお願いします!
今日は休日出勤、頑張ります(´;ω;`)
優吾は首を横に振って目を閉じた。
知らないという事なのだろう。
「じゃあ、逆に俺と結婚する事でミコトの方には何のメリットがある?」
優吾はまた首を横に振る。
「それは私たちが気にする事ではない。
母さんが戻って来てくれればそれでいいじゃないか」
優吾はアカリを生き返らせる事にしか興味がないようだ。
そんな優吾にユキトは若干苛つきながらも懸命に諭す。
「いや、おかしいだろう。
今まで何も接点のなかった家同士の結婚がどうして突然、喜美の口から話に出てくるんだ。
政略結婚でもあるまいし。
だとするとお互いに何かメリットがあって、当然ユーゼンにもメリットがあると考えるべきだろう?」
「何を言っているんだ、ユキト。
ユーゼンは、喜美所長は、損得関係なく人々の力になってくれているんだ。
あまり悪く言ってくれるな、失礼に当たる」
優吾の顔が少し歪む。
まずい、言い方が悪かったか?
また親父が暴れだしたら大変だとユキトは冷静になる。
「悪いな、そんなつもりじゃなかった。
ただ結婚の話はもう少し待ってくれないか。
今、俺には大事な仕事がある。
できればそれに専念したい。
そのやるべき事が終わったら俺も協力的に話に参加する、それでどうだろう?」
優吾は黙っている。
言い方を間違えしまっただろうか。
ユキトは少し不安になった。
今やるべき大事な仕事とはヤヨイの救出とユーゼンの企みを探り阻止することだ。
先延ばしになるだけだが、結婚はいつかしなければならないのだろう。
そうすれば親父とこの屋敷と、ヨネさんを守ることができるかも知れないのだから。
「わかった」
そんなユキトの思いが通じたのか、優吾は首を縦に振った。
「ただ、あまり長くは待てんぞ。
先方にも迷惑がかかる」
「ありがとう、親父。
必ずまたここへ来るから」
ユキトはそう言って優吾の肩を抱いた。
昔よりも痩せて細くなってしまったその肩には、今までどれだけの苦悩がのしかかっていたのだろう。
いつかは親父の目も覚ましてやらなくてはいけない。
あんな研究は何としてでも辞めさせなければ。
やるべき事は山積みだったが、ユキトはそれでも安堵した顔で書斎を出た。
「ユキト様、本当にもうお帰りになられるのですか?」
少し名残惜しそうにヨネさんが言う。
「帰ってやるべき事をやってくるさ。
ヨネさん、もし何か困った事があったら俺に電話してくれ。なるべく帰るようにするから」
「承知致しました。
ユキト様はあまり無茶をなさらないでください。
私はいつでも待っておりますので。
たまには老人の話し相手にでもなって頂けたら嬉しいですがね」
「ああ」
ユキトは短く返事をして屋敷を出る。
ヨネさんはニコッと微笑むとバイクに跨って走ってゆくユキトを見送ったのだった。
それから時刻は正午を少し過ぎた頃。
しばらく田舎道を走っていたユキトは、適当な場所にバイクを停めて休憩をする事にした。
ペットボトルに入った水を一口飲みタバコに火をつける。
店も何もない道を走って来た為、昼飯を食べそびれてしまった。
だが、どうせもうすぐ家に着くのだからこのまま走り続けても良いだろう。
今は時間が惜しい。
一分、一秒でも。
ユキトはふぅと煙を吐く。
その後、携帯電話を取りだしてある人物に電話をかけたのだった。
「もーしもーし!
凄いなぁ、よくこの番号が分かったね?」
電話に出た相手が相変わらずふざけた態度で人をおちょくっているように感じユキトは少し苛つく。
「そりゃあんたが一番良く分かっているだろう」
「あはは。ユキトくんは何でもお見通しってワケね。
朝もマオちゃんと似たような会話したんだ。
まぁ、立場は今の逆だったけど。
それでご用件は何?」
「個人的に調べてほしいことがある。
ミコトというピアニストがいるだろう?
そいつ自身やそいつの家のこと、関連する全ての情報が欲しい」
「個人的に……ね、オーケー。
じゃあ情報提供料貰っても問題ないよね?」
クリオネはその言葉を待っていたとばかりに調査に承諾した。
電話の向こうでクリオネがもみ手をする姿が想像できる。
対して面白くなさそうに舌打ちをするユキト。
「あぁ、いいから早く調べてくれ」
電話から、少し待ってて。というクリオネの言葉とカタカタとPCのキーボードを叩く音が聞こえる。
「えーっと……。
本名は瀬戸美言。天才ピアニスト•ミコトでお馴染みだね。
国際ピアノコンクールはじめ、沢山のコンクールで受賞してる。
演奏は非常に的確で表現が多彩、美しいと評価を得てるみたいだよ。
父親が外科の開業医で瀬戸医院っていう病院を経営していて、母親が弁護士だって。
かなりハイスペックだよね」
「いいとこ育ちのお嬢様ってとこか」
「あたり。おまけに才色兼備!
性格も悪いわけではなさそうだし?
言動や表情から見るに内気で穏やか、でも芯は強そう。
警察のデータベースも見たけどもちろん家族全員、犯罪歴なし。真っ白だ」
「そんなものまで見れるのか。
この国の警察も終わりだな」
「素直にオレが凄いって褒めてくれりゃいいのに」
「あぁ、分かった。
凄いな、良くやったぞ。
それで一応聞くが、誰かユーゼンと関係があったやつはいるのか?」
「もう、ユキトくんはさぁ……。
いい性格の悪さしてるよ。
今、調べてるけどみんな関係なさそうだなぁ」
クリオネが面白くなさそうな声で答えた。
「思い過ごしだったか?」
ユキトはひとりごとを呟く。
先程の優吾の話から、ユキトはミコトの家がユーゼンと関係があるに違いないと思っていたからだ。
「あ、でも父親の方は医療クローニングの技術師と接点があるみたいだね。
そこからユーゼンと繋がってもおかしくはなさそうだけど……」
「医療クローニングってあれか?
体の欠損した部分を再生するとかって」
最近、認可が下りたばかりだと聞く医療クローニング。元々は外国で戦争をしている兵士への治療として密かに使われていた技術らしい。
自分の細胞を使って失った体の一部を複製し再生させる。言わば自分のクローンだ。
法律では手や足や目、といったごく一部を医療行為として再生するならよしとされている。
一流の技術師ならできなくはないのだろうが、全身を複製し自分と全く同じ人間を作ってしまうのは倫理に反する。つまりクローンを作る事は違法になるわけだが……。
「ユーゼンは医療クローニングにも手を出していたのか?」
ユキトは顔をしかめながらクリオネに尋ねた。
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