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第30話 支配人との駆け引き

おはようございます。

また投稿させていただきました(´∀`*)


ぜひ読んで頂けたら嬉しいです。

よろしくお願いします!


 「それで、ユキト様の方のご用件は?」


 咳払いをした支配人はまるで早く話題を逸らしたいかのようにユキトの用件を聞く。


 「あぁ。

実はこのホテルでここ数年行ったイベントの内容や日時を全て調べて教えてほしい。ついでに主催者も。


 あんたならいつも色んな事をマメに記録に残しているから、数年間のイベントの記録くらいなら分かるだろ?」


 支配人は不思議そうにユキトを見る。


 「確かに。それなら記録は取っているので構いませんが……。

 また何故、そのような事を?」


 「ちょっとな。

特にユーゼンが関係しているイベントが知りたい。


 その……今後の研究のために?」


 「なるほど、分かりました。

お時間は少しかかりますがすぐお調べしましょう」


 「あぁ、頼む」


 今後の研究のためにというのは便利な言葉だ。


 研究のため、というよりは全く別の調査のためなのだが。

 どちらにせよユキトが上手く理由を誤魔化してくれたおかげで支配人に怪しまれる事は無さそうだ。


 しかし支配人はユキトの言葉を聞くと含み笑いを浮かべた。


 「ではその前にひとつ、条件があります。

そちらを呑んで頂けましたら記録をお渡ししましょう」


 冷静に笑う支配人にユキトは身構える。


 「なんなんだ、その条件というのは?」


 「簡単な事です。

 一度、ご実家であるシラサキ家に帰られてお父様にお会いになってください。


 お父様はユキト様と会えるのを心待ちにしております」


 ユキトは即座に否定した。


 「その条件は却下だ。受け入れられない」


 「では残念ながらイベントの記録もお渡しできませんね」


 「うっ……卑怯だぞ!!」


 「申し訳ありません。

 お父様から何とかユキト様を説得して欲しいと頼まれていますので……。

 お父様には日頃よりお世話になっていますから」


 「……クソッ!!

 あんたは俺の味方じゃないのかよ!」


 「私はあくまでも中立な立場ですよ?」


 そう笑って支配人は肩をすくめる。


 なんて見事な交渉術!

賢く、冷静で我儘なユキトをここまで丸め込める人はまずいないだろう。


 家庭の事情だから私が無闇に口を出す事はできないが、おそらくユキトは実家に帰ると結婚の話を持ち出されるかもしれないと思っている。だからこそ今は帰らずに逃げている最中なのだ。


 何か事情がありそうな気もするが、このままユキトが大人しく結婚をするとは思えない。


 そんな事を考えながら、マオは目の前の光景を昼ドラマを見ているかのように見つめる。


 ユキトは少しの間考え込んでいたが、立ち上がり重い口を開いた。


 「分かった……。分かった、帰る!

家に帰ればいいんだろ!?」


 「必ずですよ?」


 「分かったから!!」

 

 「では、取引成立ですね。

すぐに資料をコピーするのでお待ちください」


 苦虫を嚙み潰したような顔をしているユキトを見た支配人は困ったように笑うと部屋を出た。

 

 「はぁ……。気に食わん奴だ」


 独り言を呟くユキトにマオは声をかける。


 「そんなに家に帰るのが嫌なんですか?」


 ユキトはマオをチラリと見て死んだような顔で答えた。


 「さっきも言ったが、俺の親父はここのオーナーだ。支配人は親父の古くからの友人。ホテルの経営は信頼できる奴に任せて自分は研究に明け暮れている」


 「え、ユキトさんのお父様は研究者なんですか?」


 「まぁ……そうだな。

自分の研究のためなら手段を選ばない研究者だ。

 使えるものはなんでも使う。例え自分の息子でもな」


 「え、それってどういう意味ですか?」


 「……悪い、夜も遅いからか今日は喋り過ぎた。

今のは忘れてくれ」


 ユキトはそれ以上何も話そうとはしなかった。


 ふたりの間に気まずい沈黙が流れる。


 少しして、それを破ったのは支配人だった。


 「お待たせ致しました。これを」


 ノックの後、部屋に入ってきた支配人はそう言って、いくつかの資料をユキトに手渡した。


 じぃっと資料を眺めるユキトを見て、マオはぼんやりと考える。


 研究のためなら自分の息子を使う……。

一体それはどういう意味だろう。


 ユキトの父親が何の研究をしているのかは分からないが、研究費用の工面に困ることは確かだろう。


 研究とはそういうものだ。必ず莫大なお金が必要になる。


 もしかして今回の結婚の話と何か関係があるのだろうか?

例えば、研究費の援助のための政略結婚のような。


 そうだとすると相手側のメリットは何だろう。


 まぁ、でも所詮は人のプライベートな話だし。

やっぱりあれこれ詮索するのはナンセンスだ。


 自分自身で結論づけてマオは考えを振り払う。


 「資料はこれで全部か?」


 「ええ。これで3年分、と言ったところでしょうか」


 「数ヶ月前からユーゼン関係者主催のイベントが度々入ってきているな」


 「そうですね。あの話題のクローンボットが完成したとかで最近、よくこのホテルを貸し切ってイベントを行なっていました」


 ユキトは資料の数カ所を指で指し示した。

 

 「ここのクローンボットお披露目会というのは?

見たところ複数回行われているようだが……。


 お披露目会は一昨日が初めてじゃないのか?」


 一昨日。マオは部屋に置かれた時計を確認する。

時刻はもう午前12時を過ぎていた。


 バタバタと一日が過ぎていったがもう、マオとヤヨイがクローンボットお披露目会に参加したのは一昨日の話になっていたのだ。


 ユキトの問いに支配人が答える。


 「確かに、一昨日のお披露目会は一般のお客様向けで抽選で当選した方だけが参加しています。

 お客様向けとしては初めてでしょう。


 ユキト様の言うお披露目会というのはおそらくユーゼン関係者、つまり取引先の企業向けお披露目会だと思います。


 該当の日、ホテルはユーゼンの貸切でしたが、スーツを着たビジネスマン風の方々が何度も出入りするのを見かけましたから」


 「なるほど……。

それに参加していた企業がどこかは分かるのか?」


 支配人はしばらく考え込んでから口を開いた。


 「殆どの段取りはユーゼンの方々が進めていましたから我々はただ場所を貸しただけでした。


 ひとつだけ、会場でテーブルに置く席札の作成を任されていたのでそのデータが残っていれば……いや、残っていなかったかもしれません」


 今までとは違い何となく歯切れの悪い答え方だった。


 席札とは、それこそ結婚式などのテーブルに紙で自分の名前が書かれて置かれてあるアレだ。

 おそらく会社名を書いて各団体が座るテーブルを分けていたのだろう。分かりやすいように。


 「ではそのデータを探してもらえないだろうか?」


 ユキトがそう言うと支配人の表情が一瞬だけ曇った。

それから意を決したように歯切れの良い答えが返ってきたのだった。


 「申し訳ありません。

やはり、いくらユキト様と言えどそれはできかねます」



 

いつも読んでいただきありがとうございます(´∀`*)


朝起きるのが辛い……笑


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何卒よろしくお願いします。

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