第26話 目覚め
おはようございます(*´꒳`*)
今日も投稿させていただきました。
またよろしくお願いします!
「ヤヨイさんがユーゼンの研究所にいるのは間違いないんですよね?
具体的に研究所のどこにいるかは分かるんですか?」
マオの問いかけに〈クリオネ〉は少し考える。
「うーん……。
研究所の中に入ることができればだいたいの居場所は分かるかな?
ここからだと距離があるから特定しづらいかも」
「おい、ヤヨイは自分からユーゼンに入り込んだのか?
それとも……」
「残念だけど誰かにここへ連れて来られたみたいだね。
あの人のGPSの動きをずっと追ってたけど、昨日の夜は家を出て近くの高架下に20分くらい立ち止まっていた」
「誰かと会っていた……のか?」
「動きから見てそうだと思う。
誰かは分からないけど。
そしてその後、高架下から離れて家に戻る途中ここで突然向きを変えてユーゼンの方へ向かっていった」
〈クリオネ〉の指がそれに合わせてスクリーンをなぞってゆく。
「確かにそこで連れ去られたんだな!?」
「そうだね。
移動の速さがそこそこあったから拉致られて車か何かに乗せられたのかもしれないってオレは考えている」
「ならユーゼンの奴らに連れ去られたのか、高架下で会っていた奴に連れて行かれたのか……」
「えっ!? ちょっと待ってください。
2人とも随分冷静ですけど、よくよく考えたら〈クリオネ〉さんはずっとそうやってヤヨイさんの行動を監視していたってことですよね?
しかもそんなことまで分かっちゃうなんて……。
というか、それってストーカー……」
ユキトと〈クリオネ〉の会話を黙って聞いていたマオだったが、思わずそんなことを口走ってしまう。
「あのねぇ、マオちゃん。
人聞きの悪いこと言わないでよ!
一応これも仕事のうちなんだから」
「まぁ、それは無事にヤヨイが戻ってきてからたっぷりと問い詰めることにしよう」
「ちょっと! ユキトくんまで酷くない!?」
「それよりもまだお前から聞いていないことがある」
「もう、なにさ!」
ユキトが弁解する〈クリオネ〉を無視したものだから、彼は面白くなさそうに口をへの字に曲げた。
「ヤヨイが調べていたことはユーゼンと関わりがあることだったんだよな。
じゃなきゃヤヨイを研究所へ連れ去ったりしないだろう?」
「あぁ、ごめん。
それを最初に話そうと思ってたんだけどすっかり話が前後しちゃったね」
〈クリオネ〉は耳につけたピアスを弄りながらスクリーンに映る画像をリモコンで消した。
「あの人がここ数年、ずっと調べていたのはユーゼンそのものさ!」
「ユーゼンを?
どうしてそんな事……?」
確かにライバル会社と言えばそうなのだろう。
向こうはどう思っているか知らないが、キーラボと同じく応用脳科学の研究をしている点では変わりない。
ただ単純にライバル会社の動向をヤヨイがずっと探っていたとでも言うのだろうか?
いや、それは考えにくい。
「クローンボットってもう知ってるでしょ?
アレ、凄いよねぇ」
「私、お披露目会行きましたよ。ヤヨイさんと」
「へぇ。マオちゃんも……」
〈クリオネ〉は興味深そうにまじまじとマオを見つめる。
今思えばヤヨイさんが私を誘ってクローンボットお披露目会に行ったというのも、その調査の延長線上なのかもしれない。
ヤヨイがその後、一度は家に帰って夜にまた家を出て高架下でユーゼンへと連れ去られたことがこれで分かった。
「で、ヤヨイはそのクローンボットを調べていたのか?」
ユキトが早く話せと目で訴えている。
せっかちなユキトを見て〈クリオネ〉はクスッと笑みをこぼす。
「違うよ。
もっと凄いモノ!
ユーゼンはもうその先を見据えてる」
「どういうことだ?」
「『新人類』だよ。
人間と寸分も違わない、感情を持ったAIロボットがユーゼンの研究所で作られているのさ」
――――――同じ頃。
薄暗い地下室の中で誰かが咽び泣く声がする。
ヒヤッとした床、鉄格子から伸びた鎖に繋がれている感触、ガシャガシャとその鉄格子を揺さぶる音でヤヨイは目を覚ました。
「ここは……?」
頭がクラクラする。
確か最初はベットのあるビジネスホテルのような部屋に閉じ込められていたはずだ。
そこにあったPCを使ってユキトにあのメールを送って……。
何が起こったのか記憶をぼんやりと辿っていると、鉄格子を隔てた向こう側にいる男に声をかけられた。
「ようやくお目覚めかな?」
「喜美っ………!!」
最悪だ。
ワタシはこの鉄格子の中で眠っていた。
それをあいつがわざわざ起こしにきたのだ。
その意味が、まだはっきりしない頭でもよく分かった。
ワタシにとって何か良くないことを伝える為にあいつ自身が出向いたのだ、とヤヨイは警戒する。
「残念だな。
あまり手荒な事はしたくなかったから、ぜひ君に我が社の仮眠室で寝ていてもらおうと思っていたのに。
全く、油断も隙もない」
喜美はため息をつき、その場に屈むとポケットから取り出したものをヤヨイヘと見せる。
「これをどこで手に入れたんだ?」
ヤヨイの目の前にあるそれは、いずれユーゼンに潜入した時の為にとクリオネに作ってもらった偽造IDカードだった。
しかしヤヨイは答えない。
「これを使い仮眠室に置いてあったPCを動かして誰かにメールを送ったようだね?
キーラボのお仲間かな?」
何も答えないヤヨイを見て喜美は無表情で話を続けた。
「君がここに連れて来られた時点でもう何もできないだろうと見くびっていたよ。
まさか偽造IDを持ってるとは思いもしなかった。
誰が作ったのかな?」
やはりヤヨイは何も答えない。
答える代わりに喜美を睨みつけた。
「そうか、だんまりか。
キーラボの風間ヤヨイくん、だったかな?
君がいかに反抗的な目をして、何も答えなくとも調べればそんな事はすぐに分かる。
もう時間の問題だ。
ここへ連れてくる時に麻酔を使ったせいか。まだ頭がはっきりしていないようだな。
あるいは自分の立場を分かっていないかだが……これを見たらもう反抗する気力も起きないだろう」
喜美はヤヨイに背を向けてゆっくり歩き出し、ある場所まで来るとそこで歩みを止める。
ヤヨイは喜美のその動きを目で追った。
喜美が止まったのはヤヨイと同じく鉄格子に囲われて鎖をつけられている男の前だった。
ヤヨイの向かい側、5メートルか6メートルくらい先だろうか。
薄暗くてよく見えない。
だが目を凝らすと自分がよく知っている男がそこに見えた。
毎日何度も同じ顔を見て、会話を交わし、無事であってほしいと願っていた。
こんなの、今更見間違えるはずがない!
「カイ所長っ!!!!!!」
ヤヨイの悲痛な声が地下室に響いた。
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