第23話 アクアリウム
こんにちは(*´꒳`*)
今日はお昼になってしまいましたが、上司の目を盗んで休憩の合間にポチッと投稿しました笑
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
『アクアリウム』と呼ばれた地下室には文字通り魚の入った水槽がたくさん並んでいた。熱帯魚が趣味なんだろうか。
PCも何台か置いてあり稼働しているところを見るときちんと電気は通っているのだろう。
〈クリオネ〉がスイッチを押すと、剥き出しの電球に明かりが灯る。
今まで薄暗く不気味だった地下室の印象がかなり変わった。
それでも潮の匂いとカビ臭さが時々鼻をくすぐってくるが、先程よりはマシと言ったところか。
「まぁ、座りなよ」
そう言って〈クリオネ〉は近くにあった手頃なコンテナボックスをふたつ、マオとユキトに差し出した。
まるでどこかの水産会社が使っていそうなやつだ。
ふたりは顔を見合わせ、コンテナボックスをひっくり返して椅子がわりに使う。
「さて、どこから話そうか?」
そう言って〈クリオネ〉はPCの前にあったパイプ椅子へ雑に座った。
「聞きたいことが山ほどある。
まず、お前は一体何者なんだ?」
間違いなく、まともな人じゃないことは確かだ。
マオもユキトの質問に激しく同意した。
「ふぅん。まずは自己紹介が先ってワケか!」
〈クリオネ〉がニヤリと笑う。
「さっきも少し話したけどオレはまっとうに働いて生きてきた、とはとてもじゃないけど言えない。
ブローカーやったり、薬の売人もやったり。
あ、スカウトもやったことあるなぁ。
今は情報屋として落ち着いてるけどキミたちのお察しの通りまともな人ではないだろうね」
どうやら〈クリオネ〉自身も自分がまともじゃないことを自覚していたらしい。
「情報屋?
そもそも具体的には何をしてるんだ?」
「もちろん売ってるんだよ、情報を!
ウチの商品は情報だからね。
商品を仕入れる為ならどんなこともするし、危ない橋だって渡ってるさ」
「そうか。
ならお前は俺たちがあの動画を見たという情報をどうやって掴んだ?」
件名に書かれていたあの文章のことを遠回しに聞きたいのだとマオは思った。
『やっとあのファイルを見たようだね』
〈クリオネ〉は『動画』ではなく、『ファイル』と確かにそうメールに書いていたということはズィファイルの存在に気づいた可能性が高い。
「鋭いな。
あの動画がヤヨイサン以外の端末で再生された場合、そこにオレのメールが自動送信で届くようプログラムを組ませてもらった」
ユキトが問いかけると〈クリオネ〉は飄々と答えていく。
どこか掴みどころのない〈クリオネ〉を言葉で問い詰めていくユキト。そこから逃げるようにふわりと上手くかわす〈クリオネ〉。
それを見ていると、マオはこんにゃくが包丁でつつかれているのを見るようなもどかしい気分になった。
「残念だが俺たちが動画を見た端末は、お前が普通にメールを送ったところで届くことがないものだ。
自動送信のわりにはあの件名、俺たちが『動画』ではなく『ファイル』を見たことになっている。
そこには何か意味があったのか?」
ユキトは賢い。
敢えてズィファイルが存在することをこちらから言わず、相手から言ってくるのを待っているのだ。
いくらヤヨイの協力者といえどマオたちは〈クリオネ〉とは初対面である。
そんな怪しい相手に、ましてや情報屋と名乗る得体の知れない人物に簡単にこちらの情報を渡すわけにはいかないだろう。
「意味か。何を言っているかよくわからないけど。
でもキミのアドレスにはちゃんとメールが届いたよね?
だからここにきたんでしょう」
〈クリオネ〉もユキトに負けていなかった。
自分の持つ情報をはぐらかした上でさらにこちらの情報を引き出そうとしている。
これがプロの仕事というものか。
「どうして俺のアドレスだとわかった?」
「違うのかい?」
「じゃあはっきり言おう!
お前はそのメールが俺に送れなかった。だからその後、ラボのPCにハッキングして何か見つけたんじゃないのか?」
「だからメール自体自動送信なんだってば。
仮に届かなかったとしてもその後にハッキングして何か見つける暇なんて……」
「それにしては俺たちの情報を色々持っているな。
お前がはっきりとは言わなくてもおかしな点がたくさんあるんだ!
それをきちんと説明してくれなければお前を信用することができない」
〈クリオネ〉は黙っていた。
先程まであれだけよく喋っていた〈クリオネ〉が黙っていた。
「答えろよ、おい!」
「ふふ。やっぱりそこら辺に転がっているような言葉で屁理屈を並べてもキミは誤魔化しきれないか。
前評判通りの人で安心したよ!」
突然、ぱっと〈クリオネ〉は笑った。
「は?」
不機嫌になるユキトを見て可笑しそうにしている。
「ごめん!
嘘ついた。キミの言う通りだよ。
動画を再生した端末にメールを自動送信したのは間違いない。
でも送れなかったみたいで返ってきたんだ、一度目は」
「ようは俺を試したってことか」
「そういうことになるね。
だっていくらクライアントであるヤヨイサンのお友達といえど簡単には情報を与えられない。
どうせなら情報をうまく使ってくれる人じゃないとね。情報を与えたオレも危ないでしょ?
でも実際に対峙してみて、キミになら託しても大丈夫そうだと思った」
「その前評判ってのはヤヨイからだな?」
「あたり。
あの人、キミなら賢いから色々なことに気がついてきっと力になってくれるって言ってたよ。
オレはそれを自分の目で確かめてみたくなった」
「ふん。俺も相当バカにされたものだな」
ユキトが静かに怒っているのが伝わってくる。
〈クリオネ〉はどこかユキトに似た性格だ。
捻くれ者だというところが特に。
「メールが返ってきた後、何とかキミに連絡を取る方法を考えた。
あの人からはキミの連絡先は何も聞かされていなかったからね、少し手がかかったよ。
動画を再生した端末のIPアドレスを調べて管理している事業者にアクセス、キーラボという研究施設の管理PCだということが判明。さらにキーラボにアクセス、そしてキミにたどり着く。その過程であの人の動画が何かの隠しファイルみたいなものに入っていることを知った。それから――――」
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