第2話 書類の山を舞うウサギ
こんにちは( ´ ▽ ` )
たまに三日坊主になる私が2話目、書くことができました!!
また今日も更新させていただきます。
感想やご指摘あればコメントをよろしくお願いします!
「ごめんねぇ、マオちゃん。ユキトがいつも感じ悪くて。まぁ、ワタシがいつも感じ悪くさせてるんだけど。もうちょっとおおらかになってくれれば助かるのよねぇ……。マオちゃんはこんな研究室に来て後悔はしていない?」
ヤヨイはそう言うと、マオの向え側にあるソファにトンと腰掛けた。
ユキトとは対照的で穏やかに笑っているので、なんだか独特の雰囲気だ。
ヤヨイの雪のように真っ白い肌。
すらっとした身体に肩より長い金糸のような細い髪の毛、色素の薄いブルーの瞳が笑顔と合わさると神秘的な儚さがある。アルビノの特徴とも言えるだろう。
「後悔はしてませんよ。ヤヨイさんとユキトさん見ていると毎回、夫婦漫才みたいで退屈しないし」
マオはそう言ってコーヒーをちびちびと飲む。
「いやぁね! 退屈しないって、見せ物じゃないのよ! むしろあなたとユキトの方が似たもの同士でお似合いだと思うけど……」
「え!? 私とユキトさんが?? 勘弁してくださいよ。私、そんなに無神経で無愛想ですか?」
無愛想であまり身なりに気を使っていないユキトだが、実はああ見えて整った顔立ちをしているのだ。
もう少しユキトが身だしなみに気を遣えば、ヤヨイと隣に並んでも美男美女で本当にお似合いなのだが……。それでもユキトに似ていると言われて全く嬉しさが込み上げてこない。
驚いているマオにヤヨイは笑って優しく答えた。
「んー、なんとなく雰囲気が似てる……かな? でもマオちゃんもだいぶ表情が柔らかくなった気がするわねぇ。時々、無神経なこと言ってくれるけど」
「それはどうもすいません……」
口をとがらせて怒るフリをするヤヨイに、マオは自分の無自覚な無神経さを反省した。
「ふふ。いいのよ。それがマオちゃんだもの。ユキトもきっと、そうやって受け入れて貰える人がいるからこそ、あの性格のままなんでしょうね」
「確かに。ところでその受け入れてくれる人っていうのは、ヤヨイさんのことですよね?」
「んー、どうかしらねぇ。ワタシはもうあの人の性格は仕方ないなぁって諦めちゃってるけど……。婚約者がいるみたいよ。ユキト」
髪の毛を指でぐるぐる巻きながらヤヨイは苦笑いした。
「えー!? あのユキトさんが? 信じられない。
あのいかにも、性格に難ありの人のどこが良いんでしょう?」
「さぁ……? ぐいぐい引っ張ってくれる凛々しい所とか? ありそうよねぇ。前にどんな子がタイプかって聞いたらね、知的かつ柔軟で俺の意図がすぐ分かるような女、ですって。ユキトは……まぁ、ようは頭で選ぶ人らしいわ」
「うわぁ……。さすが脳科学者。頭でしか人を見ないんですね」
マオもヤヨイにつられて思わず苦笑いする。
「それがユキトだから。 それじゃあ、ワタシはそろそろ研究室に戻るね。っと、その前に……。ちょっとデスクに来てもらえないかしら?」
「どうしたんですか、急に」
「いいから、いいから!」
言われるがままにヤヨイのデスクに招かれたマオは、目の前に飛び込んできた惨状に呆然と立ち尽くしていた。
「ヤヨイさん、これ………。
いつにも増してすごいことになってませんか?」
いつの時代にも片付けができない人というのはいるものだが、いやはやこれは……。
ゴミ屋敷とはこうして出来上がっていくのか。
紙だらけの小さなゴミ屋敷が机の上に広がっている。
「あはは……。資料室から過去の資料、色々引っ張り出してきたらこんなになっちゃった! PCのデータにも打ち込まれていないくらい古い情報だけどどうしても必要で。それでこの中から茶色の小さな封筒探してるんだけどね……多分、奥に………あっ!!!」
机が見えてくるまで資料を掻き分けていたヤヨイが突如、大きな声と共に消えた。
どうやら足元に置いてあった紙の束でバランスを崩した拍子に机が揺れ、そこで発生した紙の雪崩に飲み込まれてしまったらしい。
「だっ、大丈夫ですか。ヤヨイさん??」
マオが慌てて駆け寄ると資料の山からすぐヤヨイが出てきてニコっと笑う。
「もう! 心配しましたよ」
まるで雪の中から真っ白なウサギが顔をひょこっと出しているかのようだ。
「あった、あった!! これ、マオちゃんに渡そうと思って。ねぇ、一緒に行かない?」
細長い茶色い封筒を手に持ってヒラヒラさせながらヤヨイが言う。
「なんですか、これ?」
「クローンボット特別お披露目会の招待券よ!
当たったの!!」
「クローンボットってあの、さっきテレビでやってた……?」
「そう! あんな自分の分身みたいに動かせるロボットなんてこの国じゃ初めてでしょう。これからの実用化に向けてお試し操縦もできるんですって! こんなお披露目会めったにないわよ」
ヤヨイの脳科学者としての血が騒ぐのだろう。
「へぇ。よくこんなお披露目会知ってましたね。ヤヨイさん、これどこで手に入れたんですか?」
「先週、さっきのテレビ番組で抽選50名様にプレゼントしてたから応募したのよ。なんて言ったってお披露目会には、あのテレビの大人気リポーター、ウシオさんがゲストで来るって話よ。これは応募しないわけにはいかないじゃない?」
うん、撤回しよう。この人は脳科学者としての血が騒いでるわけではない。
ただのミーハー女子としてのファン魂が騒いでるだけのようだった。
今からほんの数十分前、あのテレビ番組で紺色のスーツを着て、カメラ目線で整った黒髪をかき分けながらコメントしているあの姿を思い出す。
一体なぜ、あのどこにでもいそうな感じのリポーターが世間を騒がせているというのだろう。
興奮している本人を目の前にして水を差すような真似は流石にしたくないのでマオはそのまま黙っているが、ヤヨイの興奮は治らない。
ひとつのことに一度熱中するとひたすらそのことについて考え続けるところは科学者のタチとでも言うべきか。
「それじゃあ3日後の土曜日、9時に駅前でね」
「え? あ、ちょっとすいません。何も聞いてませんでした。というか、まだ行くとは一言も……」
「おーい、ヤヨイくん。今ちょっといいかな?」
マオの言葉を遮るかのようにちょうどいい、いや決して良くはないタイミングで所長の声が聞こえる。
読んでくださりありがとうございました。
また次回の更新もよろしくお願いします♪
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