第132話 s-10.
こんにちは^ ^
また投稿しにやってきました!
ぜひ暇な時に読んでいただけたら嬉しいです♪
よろしくお願いします。
「喜美くん、また図案見たよ。万博に展示する作品、やっぱりあれ凄く良いね。面白い!」
ある研究所の所長が私に声をかけてきた。
なんという研究所だったかはもう覚えていない。
若い頃に勤めていた小さな研究所での些細な会話。
何十年も前の勤め先が夢に出てきたか。
こんなもの……今の私にとってはもう必要のない情報だ。
「本当ですか!? ありがとうございます、所長」
あの頃の喜美維吹は満面の笑みを見せ、自分が所長と呼んだ男に頭を下げる。
「いやぁ、本当に面白い。離れた場所にいても脳波を飛ばして会話ができる機械か。テレパシーだ、これは。人の感情とAIを合わせた脳科学者らしい作品が出来上がりそうだな」
利益は何ひとつ生まない。
ただのお遊びのような作品。
「当日も僕の作品を見た人たちが所長のように喜んでくれたら嬉しいです。この先、脳科学がもっと発展していけばよりたくさんの人を幸せにできるかもしれない。未来ある子供達が脳科学に興味を持ってくれたら、機械万博は大成功ですよ!」
所長は大きく頷く。
「その通りだ。これからの未来は明るい。あと少し、準備は大変だと思うが頑張りなさい」
「はいっ!」
機械万博の開催に意味なんてあったのか。
今の私にもそれは分からない。
分かるのはこの青年が後に絶望を味わうことになるだろうという未来だけ。
自嘲したくなるような明晰夢を見せられ、喜美は胸の奥にちくちくとした痛みを覚えたのだった。
『次のニュースです。
先日見つかった新種のウイルス、S-10.が早くも諸外国で猛威を振るっています。これを受け、政府は今後の入出国に制限をかけるなどの方針を発表しました』
「出た、また〈エスト〉の話だよ」
「このウイルス、感染力はインフルエンザの比にならないんでしょ?」
「特効薬もまだ見つかってないらしい」
休憩室に置かれたテレビに齧りつき、それとなく会話を始める研究員たち。
喜美維吹はそれを横目に弁当を広げていた。
s-10.
この国の人間たちは口々にそう呼んだ。
人を死に至らしめるという新種のウイルス。
海外の山村に住む村人が、蚊に刺されたことで発症したのが始まりだった。3週間ほど前にその村人が第一感染者として発表されてから、瞬く間に世界中へと広がる。
山村は第一感染者が亡くなった7日後にピタリと静かになったそうだ。
そうしてひとつ、村が消えた。
遅からずこの国にも感染者が出るだろう。
他人事のように喋っていられるのも今のうちだ。
私はこの時からそう感じていたのに……なのにそれでもやっぱりどこか、他人事だったのだ。
『今回は大木碕大学の大学院教授をお招きしております。感染症学、公衆衛生学に詳しい笠根教授です。よろしくお願いします』
『はい、よろしくお願いします』
テレビに映ったアナウンサーが白髪だらけの頭の、大きな眼鏡をかけた男を紹介する。男は名前を呼ばれるとペコリと会釈した。
『教授、早速お聞かせください。エストに感染した場合、どのような症状が現れるのでしょうか?』
『えー、このウイルスに感染するとですね、まず発熱や頭痛、吐き気といった風邪のような症状が現れます。ウイルスは体内で増殖を続け、やがて血液をつたって脳を侵しだすのです。すると人格の変化、異常行動、記憶障害など脳炎のような症状を引き起こし、さらに症状が進むと強い眠気を感じるようになります。ここで相応の対処をしなければ患者は昏睡状態に陥って呼吸が止まってしまうでしょう。なので……このことからも死に至る確率が非常に高いウイルスと言われています』
『教授は相応の対処とおっしゃいましたが、特効薬もない現時点ではどのような対応が考えられるのでしょうか?』
『えー、現時点ではウイルスの増殖を抑えるべく患者に対しあらゆる薬を試している段階です。もし薬効がない場合は重症者に人工呼吸器を使って延命治療を施すしかありません』
『ウイルスの感染力はどのくらいのものなのでしょう?』
『どのくらいって、そりゃあもう、爆発的ですよ。潜伏期間だって2日……いや、早くて1日だと言われてますからね。いいですか、エストは空気感染するんです! 所謂、エアロゾルです。保健機関の対策が追いつかなければパンデミックは免れません』
『ありがとうございます。ではここからの予定を一部変更して、引き続き笠根教授に解説していただきましょう』
神はいつだって無慈悲だ。
どんなに願ったところで、自分が一番に叶えたい願いは聞き入れてくれない。
私は……たくさんの人を幸せにするなどというふざけた未来を掲げて、呑気に笑っているこの青年を今ここでぶん殴ってやりたいと思った。
「芽衣、すまないな。今日も遅くなる。自分の納得のいく展示品を作りたいんだ。研究所でもう少し作業を進めようと思うから、君は僕に気にせず寝ていてくれ」
「分かった。あまり無理はしないでね? お休みなさい、維吹さん」
「あぁ、お休み。いつもありがとう」
芽衣との通話を終え、喜美維吹は少し淋しそうな顔を見せる。
所長に推薦され機械万博に展示することになった作品、そして我が最愛の妻である芽衣。
この時私が天秤にかけ、選んだのは自分の作品の方だった。
自分が納得のいくものを作りたい、その作品が誰かに喜んでもらえたら……あるいはそれで何かが変わってくれたら……。
甘い幻想を抱いた青年は、機械万博が近づくにつれ帰りがどんどん遅くなっていった。
帰ってきても眠る時間なんてさほどなかった。
自分が帰る頃にはもう眠っている芽衣。
当然ながら会話も減り、私の考えることと言えば万博の展示品のことばかり。
それでも帰って来たかった。芽衣の待つ家に。
彼女が……芽衣が毎朝毎朝、私の弁当を作るためだけに早起きしてこう言ってくれるから。
「行ってらっしゃい」と。
向日葵のような明るい笑顔を私に向けてくれるから。
天秤にかけられたものをどちらかひとつだけ、確実に選び取るなんて難しい。
私にその覚悟が足りていなかったからこそ、芽衣をあんなことに巻き込んでしまったのだ。
まだ終わってはくれない過去の夢が『呪い』となって喜美に纏わりつく。
いつも読んで頂き本当にありがとうございます( ´Д`)y━・~~
鬼滅の刃で冨岡さんが好きだと噂の鮭大根ってうまいのだろうか……?
レシピ見てたら調味料の段階ですでにうまそう(*´∀`)♪
今日のゆうげのおかずは鮭大根にしたいと思いますwww
(うまいっ! うまいっ! →煉獄さんが再生されたw)
次回から鮭大根編に移りたいと思いますっ!(嘘)




