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第131話 一輪の向日葵

こんばんは^ ^

また投稿させて頂きました。


今日からついにあの人の思考へダイブしていきたいと思いますっ♪


ぜひ暇な時に読んでいただけたら嬉しいです。

よろしくお願いします!!



 ――――時は同じくして。


 ユーゼンの所長室ではコツコツと小さくも、規則的な音が鳴り響いていた。


 「それで……生天目(ナバタメ)君。要するに君は鍵を取られた訳だ、あの情報屋に。そのせいで失敗作たちと風間ヤヨイが処理場から逃げていなくなった。情報屋もその後すぐに姿を消した、と。そう言いたいわけだな?」


 先程から立ったまま、喜美は指で机の端をずっと叩いている。


 彼の眉間に寄った皺、その顔。

 重々しい空気。


 それらは普段から氷のように冷たい表情を浮かべ、人を嘲笑っている生天目が怯むのには充分すぎた。


 「……申し訳ありません、喜美所長。私が警戒を怠ったせいです」


 深々と頭を下げ、生天目は喜美の次の言葉を待つ。


 「風間ヤヨイを渡すよう約束していた海外の研究施設には何と説明すればいい? 部下の管理が悪かったせいで商品が逃げ出したとでも? あぁ、情けない。ユーゼンの信用に関わる」


 「…………申し訳ありません」


 風間ヤヨイをもう一度捕まえてくることは難しい。

 当然、彼らはユーゼンを今までより警戒しているはず。


 キーラボの研究員たちは知りすぎてしまったのだ、こちら側の事情を。

 

 あれこれ考える生天目の謝罪を聞き、喜美は鼻で笑う。


 「あの情報屋には前金をたんまり支払った。だが奴はこちら側に協力するふりをしてネズミたちを逃したのか。情報屋め、よくも私をコケにしてくれたものだ」


 所長室の窓から喜美はユーゼンの建物を見下ろした。


 「取引は中止。加えて警備ロボットの弁償と建物の修繕費……採算が合わない」


 今にも雨が振り出しそうな灰色の空の下。

 建物の外壁は深く抉れたような傷がついたまま。


 警備ロボットが突き破った出入り口にはブルーシートがかけられ、使用禁止の張り紙が貼られていた。


 散らばったガラス片こそ清掃員がとうに片付けたものの、クリオネが操る警備ロボットがユーゼンに残していった爪痕は大きい。


 ヤヨイが逃げ出したことで失ったであろう自身の信用、弁償代と修繕費、採算。

 それらの単語を口にし喜美は黙り込む。


 「今、警視庁の手を借りて全力で情報屋の居場所を割り出しています。見つけ次第ここに連れてきてすぐに対応を……」


 「必要ない。その場ですぐ殺せ」


 「えっ?」


 当たり前のように淡々と出された指示。

 生天目は喜美の思考に困惑した。


 「なんだ、君にしては珍しい反応だな。今さら何を躊躇う? 今までだって散々殺してきた。邪魔者や被験者、計画に口出しする連中……。その度にあの人が一役買ってくれている。例え君が誰かを殺したとしても、それが世に広まることはないと前にも言ったはずだ」


 「ええ。勿論、理解はしています。しかし……警視庁によると情報屋の戸籍は偽物。しかもこの国の人間ではないようです。あんな得体の知れない者に手を出してしまっては……この先何が起こるか分かりませんよ」


 おそるおそる発言する生天目を見て、喜美が不敵に笑う。


 「何が起こる……? 戦争か? はっ、馬鹿馬鹿しい。どうせこの国はもうすぐ滅ぶ。心配ならあの工場で証拠も残らないくらい八つ裂きにしてから燃やせ。夜の工業地域であれば多少黒い煙が出たとしても、誰も気に留めない。そうだろう?」


 「そう、ですね………………承知しました」


 生天目はそれ以外、何も言うことができなかった。


 「あの情報屋は私の大切なものを滅茶苦茶にした。殺せ……殺せ、殺せっ!! あのいやらしい顔から薄ら笑いが消えるまで殺し続けろ!!」


 ポツポツと降り出した雨が所長室の窓を叩く。


 「分かりました……。そのように致します。ではこれより廃工場での準備と水乃衣織(ミズノイオリ)()()がありますので……。少しお休みください、喜美所長」


 目を細めた生天目は喜美の顔をまともに見ることなく、足早に所長室を立ち去ってゆく。

 

 「休む……? 私がか??」


 喜美は軽く笑い、革張りの椅子にドカッと腰掛けた。


 今まで目的を達成する為には際限なく、それこそロボットのように黙々と働いてきた。


 全ては計画の為……いや、芽衣のため?

 そうではない、けいかくのため……。


 今ひとつ思考がはっきりしない。


 生天目君の言う通り少し休んだ方が良いのかもしれない。掃いて捨てるほどいる研究員の中で、どうしてか彼だけは憎む気になれなかった。


 例え彼の失敗で計画が遅れようが、彼を処理するのだけは躊躇してしまう。


 何故だ?


 まさか私に月城禅(ツキシロゼン)と同じような感情が湧いたか? 


 曲がりなりにも教え子……すなわち部下を守りたいと思っている?


 反吐が出る。全くもってくだらない。

 そんな事して、今さら何になるというのか。

 

 両肘を机につき喜美は手で顔を覆った。

 目を閉じてから最初に思い浮んだのは一昨日の出来事。


 『先生は認知症を患っていてね。そのせいで資料を送ったことすらも忘れていた』


 あの情報が本当なら、月城禅は馬鹿だ。


 私のようにさっさと頭や身体を新しいものに取り替えて生き永らえば良かったものを。

 

 結局のところ、たいした目的も持たずに変化を拒む人間は、目的を達成しようと進化し続ける人間には勝てない。弱肉強食。


 自然の摂理?

 昔は良かった?


 ふざけるなっ!

 私はあんな腑抜けとは違う。


 喜美の眉間に寄せられた皺が、より一層深くなる。


 「どうしてこんなにも心を乱される? あの情報屋のせいなのか………」


 窓に打ちつけられた雨音を聞いているうち、喜美は段々と眠気に襲われた。





 「はい、これお弁当。維吹(イブキ)さんの大好きなしょっぱい卵焼き、入れておいたからね。今日も頑張って!」


 花が咲いたような明るい笑顔の君に……その名前を呼ばれるのは何十年ぶりだろう。


 「ありがとう。万博予定地には高級レストランか観光客向けの飲食店しかないからね。いつも助かるよ」


 所長とは程遠いあの頃の世界。


 「あなたも頑張ってるんだもの。たまには高級レストランにでも行ってきたら? 家じゃ絶対に食べられない美味しいものがあるかもよ?」


 「ははっ! 昼食はすぐ済ませて万博の準備を進めないと。それに君の作ってくれる弁当の方が僕の口には合いそうだ」


 「フフッ。維吹さんったら嬉しいこと言ってくれるのねぇ」


 どこにでもいる仲の良い夫婦。

 どこにでもいる仕事に追われた研究員。


 「愛してる、芽衣。行ってきます」


 最愛の妻を優しく抱きしめて家を出た。

 それが『喜美維吹』の幸せな日常。

 

 「行ってらっしゃい、維吹さん!」


 左手を上げながら喜美に向かって健気に手を振る芽衣の薬指には、真新しい銀色のリングが輝いていたのだった。

 


 

いつも読んで頂きありがとうございます。゜(゜´Д`゜)゜。


そろそろ洗濯槽クリーナーしようと思ったのにうっかりお風呂に入浴剤入れてしまいました……。


よく分からんけど変な気体が発生しそうでこれじゃあ残り湯を使えないじゃないか。゜(゜´Д`゜)゜。

(↑科学の知識ゼロwwww)


くそぅ洗濯槽めっ!

処理場に送ってやるー!

(↑家事に手こずる喜美所長ww)


という話になりそうなので今回はここまでにさせていただきます笑


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