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第129話 良いニュースと悪いニュースがある

いつも読んでいただきありがとうございます^ ^


この時期、毎年恒例の風邪を拗らせて更新が遅れてしまいました……。(気管支炎、咳喘息野郎ですwwww)

すっかり遅くなり申し訳ありません!!


ぜひ暇な時に読んでいただけたら嬉しいです♪

よろしくお願いします。


 『sideB研究記録 良いニュースと悪いニュースがある』


 その夜、キーラボの所長室では簡潔な書き出しで始まる研究記録が綴られていた。


 『良いニュースはヤヨイくんが戻ってきたこと。悪いニュースはユーゼンの内通者がこのラボに居たこと、さらにその内通者がアズマくんだったということだ。喜美所長は私たちの定期報告を信用していなかったのかもな。だからアズマくんをキーラボへ寄越した』


 そこでキーボードを打つ手は一度止まり、暫くしてからまた動き出す。


 『人の脳とは、感情とは不思議なものだ。私は未だに理解に苦しむよ。アズマくんだってよく考えれば分かったはず。例の実験の見届け役、内通者なんてやらずともあの子を守る方法はいくらでもあった。しかし、そうするしかないと考えるほどに追い込まれていたんだ。喜美所長はアズマくんの感情を乱すような状況を作り出し、言葉によって彼の思考を操った。


 だがそれでもアズマくんは真央くんの作り出したトレースバースの研究記録を破棄したのだという。これには流石の喜美所長も驚いたことだろう。


 それを聞いた私はふと考える。

 では私たちの思考は? 行動は? 


 最良の選択だと思っていた自分たちの行動が、実は知らないうちに追い込まれ選択肢を奪われ、全て喜美所長の思い通りに操られている結果なのだとしたら?


 だからこそ君が居なくなった今、喜美所長の意表を突いた行動を取るのが得策だと私は考える。


 ヤヨイくんの協力者だった彼がそうしたように。


 私はひとりでも、君を助けに行く。

 この研究記録をあの子たちに託して。


 どうだ、なかなか意表を突いているだろう?

 慎重な君なら絶対に選択しないはずの手段だ』


 再びキーボードを打つ手が止まる。

 所長室にはひとつ、小さなため息が漏れ出した。

 

 『だが気がかりなのは、ヤヨイくんが連れてきた少女のこと。あの子の身体には判別チップが入っていた。チップの摘出を行ったのは本当にユーゼンなのか?


 一流の技術者や研究者を雇っている企業で、あんないい加減な摘出手術を行うだろうか?


 それとも喜美所長はユーゼンとは別に実験の拠点を持っているのだろうか?


 例えばそこは設備すら不十分で、例えばそこは身を隠す為だけに使うような、もし仮にそんな場所があるとすれば……。


 碓氷国時化.E(ウスイクナシケ.イー)、やはりこの人物が何か関わっていそうだ。


 まさか碓氷国時化.Eはひょっとすると……いや、よそう。これ以上は考えすぎか。


 とにかく現時点での私の考えをこの研究記録に残しておく』


 キーボードから離れた手が本のページをめくるかのようにPCモニターをそっと撫でた。


 すると画面は切り替わり、モニターにはある日の『sideA研究記録』が表示される。



 『そうだ、この件が落ち着いたら駅前のラーメン屋にでも行こう。君にご馳走したい、味のいい店なんだ』


 「カイ博士……」


 テロメアは瞬きもせずモニターをじっと見つめ、その名前を口に出す。彼にとっては唯一無二のかけがえのない存在。


 自分が身代わりになろうとも、絶対に助けに行かねばならない存在であった。

 

 ――コンコンコン。


 不意に所長室の扉を叩く音が聞こえ、テロメアはふと我に返る。


 一体誰だろう、こんな夜に。


 「どうぞ」


 椅子に座ったまま視線を扉へ向けたテロメア。


 所長室の扉が遠慮がちに開かれる。

 そこから顔を覗かせる人物が誰か分かった瞬間、テロメアの眉は僅かに上がった。


 「君は……っ!」


 「お久しぶりです、甲斐所長。それともテロメアさん?」


 所長室に響くのはコロコロとした澄んだ声。


 首に痛々しい手術痕の残った少女が、小さな身体に似合わない大人びた表情を浮かべてテロメアに一歩ずつ近づく。


 「テロメアだ。カイ博士はここには居ない。目が覚めたんだな?」


 「はい。きっとまたすぐ眠ってしまうでしょうけど。脳のデータ量が多すぎて、この子の身体では処理が追いつかないみたいなんです」


 ヤヨイが連れてきたその少女は自分の頭をクシャクシャに撫でた後、困った顔をテロメアに向けた。


 「テロメアさんなら分かるでしょう。脳死した少女の身体、それを動かしているのは真央の脳に似せてプログラムされたAI。今の私は動いてるけど真央じゃない。真央じゃないのに真央の知識や記憶、経験則をもとに動いてる。なんだか……変な感じですよね」


 テロメアは苦笑する少女から目を逸らす。


 「分からない。私は君とは違って初めからカイ博士の知識や記憶が入っていたわけじゃないんだ。少し君と話がしたいんだが……君のことは真央くんだと思って接しても構わないんだろうか?」


 その問いに少女がふふっと笑みをこぼした。


 「構いませんよ。今の私は死の前日までの真央の記憶や行動なら完璧に再現できます。ですがオリジナルの真央ではないので、その先の行動は経験則に基づいて判断するしかありませんけど」


 「そうか、それは……頼もしい。喜美所長を止めて、カイ博士を助けるにはどうも君の記憶が必要な気がするよ」


 テロメアは目を閉じて、やがて何かを思いついたように少女を見た。


 「そういえば君は自分が作られた前後の記憶はあるのか?」


 少女はこくりと頷く。


 「勿論、残っています。この身体で私が起動したのは廃墟の一室。そこで初めて目にした人物は生天目(ナバタメ)と、その他ユーゼンの研究員数名でした」


 「廃墟……? その廃墟というのは、場所は?」


 「分かりません。私には教えたくなかったのかも。首から判別チップを摘出された後、私は何故か急にその場から逃げ出したくなったんです。仕方なく脳内に地図を写して位置情報を拾おうとしましたが、その瞬間に眠気が襲ってきて。次に目が覚めた時にはユーゼンの処理場と呼ばれる場所にいました」


 「位置情報!? 君はそんなことまで可能なのか」


 あり得ないと声を荒げるテロメアに少女は淡々と言った。


 「もともと私は人間を再現する為に開発された高機能AIです。情報処理に耐えられる身体さえあればそれも不可能ではありません」


 「凄いな、まるでアズマくんの言っていた新人類だ。高機能AI……その情報処理に耐えきれる身体を作ることができれば、よりスペックの高い人間を生み出せるというわけか」


 「ええ。それでも彼らは真央が幼い子供の姿なら、扱いやすくなると考えたようですね。だから敢えてこの身体を選んだ。これは秘密裏に行う実験で、成果が出るのを急いでいるのだと彼らは言っていました。生天目に急かされた研究員たちは医療の知識も持たない中、この身体から無理矢理に判別チップを引き抜いたんです。私は与えられた身体で、この目で、彼らが私にしたことをずっと見ていたので間違いありません」


 「チップの摘出がいい加減だったのにはそういった事情があったんだな」


 少女は自分の首筋をそっと触る。

 指で手術痕をなぞって確かめるように。


 「あの時の私はこの身体を与えられたばかりで、AI……つまり脳と身体感覚の結びつきが充分じゃなかった。良かったです、痛覚を感じ取ることができなくて」

 

 少女が語るその先の話を聞きたくなかったのか、テロメアは顔を顰めて遮った。


 「本当に酷い話だ。真央くんは私たちよりも前からユーゼンの企みに気づいていたのだろう? 死の前にカイ博士に警告してくれた。『ユーゼンの喜美所長には気をつけろ』と。だがその後すぐに真央くんと連絡が取れなくなってしまった。何かあったのではないかと疑った私とカイ博士は、あれから喜美所長について少しずつ調べ始めたんだ」


 「そうでしたか」


 一瞬、悲しそうな顔をテロメアへ向ける少女。


 「だけど甲斐所長がここに居ないということは、警告は間に合わなかったようですね。ユーゼンにとって真央と甲斐()()はどちらも必要不可欠な存在、だからこそ手に入れる方法ならいくらでも考えつく。真央は喜美所長からそれを聞いて、ずっとあなたたちを心配していたんですよ」


 「真央くんが……私たちをずっと?」


 立ち上がったテロメアは少女の方によろよろと歩み寄り、そのまま押し黙っている。


 静まり返った所長室には時計の秒針の音だけが響いたのであった。


〜今日のひとりごと〜(どうぶつの森風)

この間働いてる横で自称クズ人間の上司にエグい咳してるねーと珍しく心配されました。びっくりして明日は雨でも降るんだべかと思ってたら本当に雨が降りましたwwww さてはあの上司、持ってるな……っ!!笑


それはさておき、いつも優しい皆様の応援、感想が励みになっておりますっ!!

ありがたや〜。゜(゜´Д`゜)゜。



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