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第128話 結ばれる予定調和

こんばんは^ ^


また投稿させて頂きました。

ぜひ暇な時に読んでいただけると嬉しいです♪


よろしくお願いします。


「マオさん!」


 そのまま空を眺めていると自分の名前を呼ばれたような気がして、マオは声のする方へ身体を向けた。


 「やっぱりここにいましたか。目が覚めたみたいで本当に良かった」


 マオを見つけた途端、息を切らしながらもアズマは安堵の笑みを浮かべる。


 「……あの、ユキトさんたちは?」


 「先ほど帰りましたよ」


 「そうでしたか……」


 アズマは自分の目が覚めるまで、帰らずに待っていてくれたのだろう。


 持っていたブランケットをマオの肩に掛けると、アズマがマオの手を取った。


 「もう中に戻りましょう。体調を崩したばかりで、今度は風邪でも引いてしまっては大変です」


 「待って、もう少しだけ……」


 マオはアズマに掴まれている手に軽く力を込める。


 なんだか帰るのを嫌がっている子供が母親に手を引かれて駄々をこねているみたいだ。


 急に恥ずかしくなりマオは俯く。


 アズマは困ったように笑い、その手にそっと何かを握らせた。


 「どうぞ」


 マオの隣に立った彼は屋上から空を眺める。


 「これ……」


 アズマが渡してきたのは温かい缶コーヒーだった。キーラボの入り口に置かれてある自販機で、マオがよく好んで買う砂糖とミルクがたっぷり入ったもの。


 「あ……、ありがとうございます」


 ポツリと礼を言い、マオは暫く両手で缶コーヒーの温もりを感じていた。


 「マオさんはさっき何を考えていたんですか?」


 空を眺めたままのアズマがマオに訊ねる。


 「あぁ、その……記憶が頭の中に流れてきたんです。さっき見た夢でもそうだったので。でもあれは……夢や白昼夢とかじゃなくて、真央が実際に見た記憶だったんだろうな……って」


 会話がぎこちない。

 正直、今のアズマとどう接していいのか分からなかった。


 それでもやっとの思いでアズマに伝える。

 カイ所長とテロメアがした事、『お化けと意思疎通が取れる電話』を初めて目にした時の事を。


 話を黙って聞いていたアズマは、やがてマオの方を向きこう言った。

 

 「マオさんの言う通り、それは記憶です。あなたが眠っている間に僕はそれと同じ話をテロメアから聞きましたから。『お化けと意思疎通が取れる電話』は真央さんがトレースバースを作った時、それをヒントにしたって言っていたでしょう?」


 「そっか……、そうでしたよね。ならやっぱりあれは……全部本当のことだ」


 俯いたまま淋しそうに笑うマオを、そしてマオの持つ缶コーヒーをアズマはじっと見つめる。


 「そのコーヒー、前はユーゼンにも全く同じ自販機があったんです」


 「え?」


 唐突な話にマオが思わず聞き返すが、アズマは構わず続けた。


 「プロテクトのせいで記憶が不安定なのでしょうけれど、真央さんはよくこれの隣にあるボタンを押してました。ブラックコーヒーです。あなたがそのボタンを押してるところ、見たことがなかったもので」


 「その……苦いの、得意じゃなくて」


 マオを見つめるアズマの目は愛おしそうに細くなる。


 「やっぱりあなたは真央さんと違う。違う魅力を持った全くの別人です。僕はそれでもあなたを……」


 「アズマさん?」


 言葉に詰まったアズマを見て、マオは彼の名前を呼んだ。


 「すいません。マオさんは前に僕がユキトさんと喧嘩した後、ふたりきりで話したことを覚えていますか?」


 「えっ……!? あぁ、それはっ……そのっ!」


 『ずっとあなたが好きだったんです』  


 あの時の言葉を思い出したマオの顔が瞬く間に赤くなった。


 アズマは苦笑いを浮かべる。


 「いえ、返事が聞きたくなったとかそういう話ではないんです。ただあの時は勢いで言ってしまったような気がして……。だからその、もう一度……」


 「ど、どうして突然、あんな事を……?」


 マオはひどく動揺しているアズマから目を逸らした。


 「あの日あなたは体調不良で休みだとユキトさんから聞いていたんですが、ラボに来ましたよね?」


 「そういえば……、そうでしたね」


 「駆け寄った時に僕は気付いてしまったんです。マオさんから、ほんの僅かでしたが柑橘系の匂いがしたことに。びっくりしましたよ、あれはユーゼンのホールで焚かれているアロマの香りだ。それであなたがヤヨイさんの調査を引き継いでしまったのだと……」


 「じゃあアズマさんはあの時から分かってたんですか!?」


 「ええ。いずれ僕が内通者だと知られるのも時間の問題だと思った。あのまま気が付かないでいてくれたら……どんなに良かったか。僕はあなたに内通者だと気付かれて、追求されるのが怖かったんです。例えあなたとは別の道を進むことになっても、想いを伝えるだけ伝えておきたかった」


「 ごめんなさい。調べていたこと、ずっと黙っていて。まさか匂いでバレてしまうなんて考えもしませんでした」


 一呼吸置いてからマオは包み隠さず正直に話した。アズマには誠実でありたい、そう思えたのだ。


 「アズマさんはキーラボに来た自分を見て心配そうに駆け寄ってきてくれたのに……あの日、本当はユーゼンにいたから、だから……っ!」


 本当のことは言えなかった、でも言いたかった。心配してくれるアズマを騙しているようで、ずっと気が引けていたのだ。


 それなのにアズマはゆっくりと首を横に振った。


 「それで良かったんです。自分勝手だとユキトさんに指摘されて、目が覚めました。本来の目的を見失っていた僕があなたの口からそれを聞いたら……また選択の間違いを犯してしまっていたかもしれません」


 「そんなこと……っ!」


 「いいえ、だって僕はこうも思ってしまったんです。あなたがユーゼンを調べていると分かった瞬間、ふたりでどこか遠い国へ逃げてあなたを匿ってしまおうかとも……。ね、自分勝手でしょう?」


 アズマも真央も互いを想いあった結果、自分勝手になった。イオリも、キーラボのみんなだってそうだ。


 みんな自分から真実を遠ざけようとする。


 でもよく分かっている。自分にはみんなを非難する資格なんてないことに。


 マオが何も言えずにアズマを見ると、アズマは自嘲気味に笑ったのだった。


 「あなたは強い。僕なんかと違って。辛かったでしょう。それでも()()()()()は諦めなかった。今もこうして、真実から目を背けようとはしない」


 「私は……強くなんかないですよ。ただみんなに助けられて、守られているだけ」


 再び俯きかけたマオだったが、アズマがじっとこちらを見つめてくるので目が離せなくなってしまう。


 「助けてもらうのも、守られるのも悪いことじゃない。あなたにはそれができる人たちが周りにいる。そしてあなた自身、周りを惹きつける魅力があるんです。それはあなたが先頭に立って、みんながその後ろを歩きたいと願うような魅力じゃない。あなたと並んで、共に歩いていきたいと思ってしまうような……そんな魅力なんです!」


 言ったそばからアズマの顔がみるみる赤くなる。それでも目を逸らさず、真っ直ぐにこちらを見ようとしてくるアズマにマオは目を丸くした。


 「アズマさん……」


 今まで誰かに、こんなに許されたことがあっただろうか。マオの心にかかったもやが、少しずつ晴れてゆく。


 「僕はあなたの大切な人たちを守るどころか、盾に使ってしまった最低な裏切り者だ。そのうえ、おこがましいことを言っているのも承知です。だけど……、これからも僕があなたの側にいることを……どうか許してもらえますか?」


 ――――アズマが好きだ。

 ドクンと心臓の鼓動が主張する。


 それは真央の気持ちなのかは分からない。


 でも、これだけは言える。

 これだけは真央の気持ちじゃない、自分自身がそう思っているから。


 「側に……いて欲しいです。これからも」


 今度は答えを聞いたアズマが目を丸くし、はにかんだ。


 「ははっ……参ったな。てっきりその、拒絶……されるかと思ってました」

 

 「決心して本当の気持ちを伝えてくれたのに、拒絶なんてするわけありません!」 


 そう言ってそっぽを向くマオ。


 近いうち、自分のこの気持ちもはっきりさせなければ。そしてエヴァンディール計画のことが綺麗さっぱり片付いたら、アズマに伝えるんだ。


 ――――きっとその頃には自分の気持ちに、答えが出ているはずだから。


 マオは横目でアズマを見つめて恥ずかしそうに微笑むのだった。


いつも読んで頂きありがとうございます!!


アズマさん……うぅ……。゜(゜´Д`゜)゜。




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