第125話 オーバーヒート
こんばんは^ ^
また投稿させていただきました。
布石が生きる時がやってくるとつい、来たぞっとソワソワしてしまう今日この頃です笑
また暇な時に生暖かい目で見ていただけたら嬉しいです♪
「だがな、考えてみろアズマ」
タバコの煙を吐き出したユキトはゆっくりとアズマの方を向く。
「お前は自分の本来の目的を見失ってる」
「本来の、目的……」
「あぁ、そうだ」
顔色の悪いアズマを、ユキトはじっと目で捕えた。
「真央を守りたかった、聞こえの良い理由だが実際はどうだ。お前はエヴァンディール計画を外部に漏らさないよう画策し、あの脳にかけられたプロテクトを解除する実験にだって協力している。それも真央を守るため、だったら仕方のないことか?」
「ちょっと、ユキトさん!」
思わず一歩前に出て叫んだマオの制止を振り切り、ユキトは続ける。
「真央はトレースバースの悪用を防ごうとして自分の脳にプロテクトをかけたんだよな。お前には何も言わずに。これがどういう意味か分からなかったか。真央はお前とあの幹部の女を巻き込みたくなかったんだよ」
「そんなのっ……分かっています!」
「分かっているなら何故こんなことをした? さっきお前は言った。真央のやってきたことが無駄になると。無駄にしているのはお前の行動だ。お前は真央を守るため、真央の守ろうとした者たちを同じように守ろうとはしなかった。正直言って真央の取った行動が正しかったのかは俺にも分からん。たがこれだけは言える。お前も真央も、自分勝手だ!」
息荒々しく紡がれた言葉はアズマの胸にしっかりと絡みつき、解けなくなった。
「ユキトくん、もうそのくらいにしよう。それに、ここは禁煙だ。吸うなら外へ行ってくれないか」
テロメアがユキトの持つタバコへ視線を向ける。
「…………分かった」
テロメアの言いたいことを察したのだろう。
冷静に答えたユキトは寝台から立ち上がって仮眠室を出てゆく。
「ユキト……っ!」
ヤヨイはユキトの背中を見つめ、彼を追いかけようか迷っていたようだ。
「行ってあげるといい。私はアズマくんとマオくんに、話しておかなければならないことがある」
コクリと頷き仮眠室を飛び出していったヤヨイを見送った後、テロメアはアズマに声をかけた。
「やむを得ず追い出してしまった。だがユキトくんも君を責めようとしているわけじゃない」
「分かっています。……彼の言うことは正しい」
そう呟いたアズマへ、テロメアが不器用な笑みを作る。
「大丈夫。君たちをこれ以上巻き込むつもりは無い。こんな事はもう、これっきりにしよう。後は私がカイ博士を助け出し、エヴァンディール計画を止める。だから何も心配しなくていい。これは元々、私とカイ博士が抱えていた問題だからな」
「問題って……それはどういうことですか?」
すかさずマオが訊ねると、一拍の間を置いてテロメアが答える。
マオにはそれが、これ以上聞かないでくれと言いたげな声の調子に感じたのだ。
「実はマオくんがキーラボに来る前、カイ博士は喜美所長とある取り決めをしていたんだ。彼は君たちも見たあの論文を掲載サイトで見て、それでキーラボを訪ねてきたんだよ」
「喜美所長が……!?」
マオの頭の引き出しにはその前後の記憶が残されていない。いや、どこかにきっとあるはずなのだ。奥底に隠れていて引っ張り出せないのだろうか。
自分がキーラボに来た理由はユーゼンのプロテクト解除の実験。なら自分はどうやってキーラボに来た……?
はやる気持ちを抑えるために、マオは着ていた白衣の袖をギュッと握る。
「喜美所長はカイ博士には本当のことを話していたんだ。真央くんが事故で亡くなったこと、真央くんを再現したAIを作ったこと、それをキーラボに置いて学習させてもらえないかとね」
アズマが大きく首を横に振る。
「全部間違いではありません。ですが喜美所長は何ひとつ肝心なところを伝えていない!」
テロメアはゆっくりと頷いた。
「そうだ。私たちも初めはユーゼンで何が起きているのか、全く知らなかったんだ。私とカイ博士はこの提案を断った。しかし、それでも喜美所長は引き下がらなかった。あんまりにも頼まれるからついに私たちが根負けして、半年だけという条件をつけてマオくんを迎え入れてしまったんだよ」
「そんなことがあったなんて……」
それならやはり、あの研究記録に書かれていたことは――――。
強く握られた白衣の裾から、シワが深く広がってゆく。
「この取り決めのことはヤヨイくんも、ユキトくんも知らない。カイ博士と話して黙っておくことにしたんだ。私たちも同様、みんなを巻き込みたくは無かった。……ユキトくんには自分勝手だと思われてしまうだろうな」
テロメアは力なく笑った。
「でもヤヨイさんは私に違和感を感じて、真央に何があったのかを調べようとした」
「あぁ、そして私と出会った。カイ博士と私はヤヨイくんに協力して……」
「待ってください!」
そこでついに、マオはテロメアの話を止めたのだ。
「どうしたんだ、マオくん?」
そう言ってテロメアが僅かに目を逸らしたのを、マオは見逃さなかった。
「ヤヨイさんに協力して……? 違う、ヤヨイさんは『ワタシにも手伝わせてほしい』と言ったんですよね。それならカイ所長とテロメアだって、何かを調べていたんじゃないですか……?」
「……そういえば君もあの研究記録を見たのだったな」
テロメアは諦めたようにため息をつく。
「はい、それにテロメアは言っていました。『ユーゼンを調査して潰そうとしていた』って……。どうしてそんなことになったんですか?」
「……全く、このラボの連中ときたら手強い。カイ所長を尊敬するよ」
マオの真剣な眼差しに再びため息をついたテロメア。
「ここから先は君に聞かせるべき話じゃない。でも、話そう。やはりもう潮時だな。いよいよ話さなければ……」
悩む彼の口からは、やがて決心したかのように堰を切って真実が溢れ出した。
「当初マオくんをキーラボで預かるのは半年間の約束だった。そして約束の半年後、喜美所長が君を迎えに来た。その時カイ博士は何気なく訊ねたんだ。マオくんをこの後どうするのかーー、喜美所長は平然と言ってのけた。思うような結果が出なかったから処分する予定だとね」
「処分……。失敗作を処理場に……」
「そこで私たちは初めて彼の口から聞いた。君の身体は医療クローニング、君の脳にはAIだけでなく、真央くんの脳そのものが使われていることを。信じられなかった。そればかりか喜美所長は君という人間を、自ら求めて作り出した命を、無かったことにしようとしている! 私たちはマオくんを引き渡すわけにはいかなくなった。カイ博士は喜美所長に殴られ、ボロボロになりながらも君を守ったんだ!」
「知らない……私そんな記憶、知らないんですっ!」
眩暈がする。
心臓の鼓動がやけに煩い。
シノミヤに助けられた時と同じだ。
いや、それよりもっと酷い。
背中に嫌な汗を感じながらも、マオは辛うじて立っていた。
「知らないのも当然だ。その記憶はカイ博士が消したのだから」
「えっ……」
今、なんて……?
身体中の血液が脳に集中して、頭が沸騰するような感覚を覚える。
マオは堪らずその場にへたり込んだ。
「マオさん!」
それまで仮眠室の寝台に座っていたアズマが青白い顔をしたマオの元へと駆け寄る。
「まずい、オーバーヒートだ。カイ博士が殴られた時と同じ。あの時も君は泣きながら錯乱し、気絶した」
「オーバー……、ヒー、ト……?」
ぼんやりとした意識の中、マオは誰に訊ねるわけでもなくただ漠然とその言葉の羅列を声に出す。
「これは君にしか起こり得ない現象なんだ。条件が重なるとあの少女のように、君のAI部分の脳が真央くんの脳の動きについていけなくなる」
テロメアの言葉を半分も理解できないまま、マオの目が少しずつ閉じられる。
「ダメだな、意識が混濁し始めた……アズマくん!」
テロメアに名前を呼ばれ、マオの横で屈んでいたアズマが顔を上げた。
「どうすればいいんです?」
「なに、心配はいらない。まずは給湯室に行って氷を持ってきてくれないか。時間が経てばすぐ治まるだろうから」
ふたりが慌しく動く音や声を耳で微かに感じ取る。
マオの意識は脳の奥、深海のように深い場所へと沈んでいった。
いつも読んでいただきありがとうございますT^T
本当に励みになっております。
シノミヤさんが運んでくれたあの時と同じ展開……!
螺旋のようにぐるぐると回り、時には反転する出来事の中に一本の棒を入れて完成するイメージで好き勝手作ってます笑(意味不明wwww)
でもあともう少しで……棒がっ!!。゜(゜´Д`゜)゜。
(テトリスwwww)
仕事で顧客に送る締め切りの近い媒体と併せて、なんとか完成させる所存です笑
(申し訳ありません、たぶん酔ってますwwww)
ではボロが出る前に……退散しますっ!




