第122話 眠り姫
こんばんは^ ^
また投稿させていただきました。
ぜひ暇な時に読んでいただけたら嬉しいです!
よろしくお願いします♪
「ふたりとも、ここに居たのか」
マオとヤヨイが神妙な面持ちで朝食を済ませてから間もなく、キーラボの休憩室に慌てた様子のテロメアがやって来た。
「テロメア、どうしたんですか。そんなに慌てて」
マオが訊ねれば、テロメアは咳払いをして落ち着きを取り戻そうとする。
「あの少女について分かったことがある。一緒に仮眠室に来てはもらえないだろうか。ちょうどユキトくんとアズマくんの手当も終わったところだ」
昨夜、ユキトはクリオネに蹴られた足を引きずって戻って来た。アズマも同じくクリオネにゴム弾を撃ち込まれた腹を庇いながら戻った。
警備ロボットから逃げるためとは言え、リョウイチの荒すぎる運転がふたりの怪我に響いたのだろう。
そんな怪我人ふたりに対しテロメアは手慣れた様子で、テキパキと応急処置を施していたのだ。
「ヤヨイくんは昨夜診た限り、どこにも異常は見られなかったが……今日の調子はどうかな」
「ええ、お陰様で。まさかあなたにも医療の心得があったなんて驚いちゃった」
ヤヨイにそう言われて、テロメアは誇らしげに胸を張る。
「人の異常は数値だけが全てではない。思考そのもの、心や脳にも寄り添える医療が必要だと以前のカイ博士が言っていた。今の私はそれを忠実に守っているだけだ」
テロメアはカイ所長と同じようになりたいのだ。それはカイ所長のクローンとして役割を果たそうとしているからだろうか。
知らぬ間にマオは自分とテロメアを重ねていた。
生まれる前から生きる意味を与えられて生まれてきたテロメア。
ヤヨイの言う通り、自分たちは似ている。
ひとりの人物から分かれた表と裏のような存在。
では自分はどうか。
真央と同じようになりたいのだろうか。
今はまだ、分からない。
ヤヨイと休憩室を出て行こうとするテロメアに声をかけるマオ。
「あの、テロメア。あの子は目を覚ましたんですか?」
テロメアは一瞬、足を止め「いいや」
とだけ答えた。
「そうですか……」
あぁ、違う。
もちろんあの子のことも心配だが、テロメアには他にも聞きたいことがあるのに。
マオの頭の中をたくさんの言葉が通り過ぎる。
「行こう、マオくん。これからのことや、君にも関わる重大なことを話しておきたい」
僅かに微笑んだテロメアを見て、薄茶色のマオの瞳は揺れていた。きっとテロメアは気が付いている。
マオが自分の生まれた意味を知ってしまったことに。
テロメアの言葉にゆっくりと頷いたマオは、ふたりの後に続いて休憩室を出た。
「よし、これで全員揃ったな」
カプセルホテルよろしく簡素な寝台が並べられた仮眠室にはユキトとアズマがいた。
彼らはそれぞれの寝台の上に腰掛け、仮眠室へ入ってきたテロメアを無言で出迎える。
ユーゼンの仮眠室のような豪華さは無い。
しかし一夜を明かせないほど不便な造りでもないので、ユキトも心置きなくふて寝ができたことだろう。
後から部屋に入ったマオはユキトの腫れている目を見て、昨夜どのような様子で彼が眠りについたのか想像できてしまった。
「少しこれからについて話し合おう。マオくんとヤヨイくんも連れて来た。それで、まずはここにいる少女のことだ」
テロメアが再び咳払いをして仮眠室の寝台で眠っている少女に視線を向ける。
「私の見立てでは生命活動に問題は無い。今もこうして普通に眠っているだけなのだろう。ただ……」
「ただ?」
ヤヨイはテロメアの言葉を復唱し、先を促した。
「この少女の首には手術痕があった。まるで首から何かを取り除いたような痕だ」
「手術痕……、首……まさか判別チップ!?」
マオの呟きにテロメアは頷く。
「その可能性が高いと私は考えている」
「あの、判別チップ……って?」
ヤヨイが目をパチパチさせながら訊ねた。
「判別チップの制度は数年前からようやく医療現場で使われるようになった。亡くなった人間の身体にマイクロチップを埋め込む。チップには死亡した場所や時間、年齢、生年月日などの情報が細かく記録されているんだ」
テロメアの説明でマオは思い出したように頭の引き出しを開け、記憶を取り出す。
「確かこの国の科学とか医術が急激に進歩したのもあのパンデミックが原因ですよね。だから亡くなった人間に判別チップを入れるのが当たり前になったって」
「あぁ。そうでもしなければ科学者や医者が誰の同意もなく死体を使って実験をしかねない。無縁仏なら尚更だ。実際にそういった例は過去に何件もあった。みんなあの病の治療法を探すのに必死だったからな。勿論、死者を使った実験は法に触れる。だがもしそんな事が起こってしまった場合、判別チップがあれば何か証拠が残るはずだと、上に立つ人間はそう考えたんだろう」
「反対する声もかなり多かったそうですね。せっかくマイクロチップを入れてもこうやって取り出されてしまえば意味がないと、そう思ってた人もいたみたいですし」
「いや、それがそうでも無い。少女の場合、チップの摘出手術は不完全だった。もともと判別チップは簡単に取り出されないよう、敢えて特殊な形状に作られていてね。身体に引っ掛かるような作りにすることで摘出を難しくさせているんだ。だから今朝、ダメ元でスキャナーを使って情報を読み込んでみた。その結果、読み込めてしまったんだよ。まだ身体に残っていたであろうチップの破片から、あの身体が9歳だという情報だけが」
テロメアは目を閉じ、眉間に皺を寄せて続ける。
「間違いない。これは判別チップを雑に摘出した手術痕だ。この少女はもうとっくに亡くなっている!」
「これがユーゼンの、死者を使った実験……?」
「少女の脳は莫大な情報が入ったAIで構成されていた。身体活動、生命維持も体内の機械があってこそだ。だがこの幼い身体にあまりにも情報量の多すぎる脳が負荷をかけている、耐えられないんだよ。当然だ。これは真央くんの脳に似せてプログラムされたAIなのだから。彼女が眠っている時間が多いのもそのせいだろう」
「酷い……。ユーゼンはこんな幼い子の身体まで使って……っ!」
マオは震えた声で言葉を絞り出す。
「ちょっと待ってよ、ふたりとも! この子が亡くなってるって……、まるで……。テロメアはともかく、何でマオちゃんが医療現場についてそんなに詳しいの?」
ひどく驚いた様子で、ヤヨイの丸々とした目はテロメアとマオを交互に見つめるのだ。
「ユーゼンの資料室である本を読んだんです。『私はこんなシケた国に興味はない。倫理感と文明の発展、どちらかを選べと言われればそれは間違いなく文明の発展だ。いい国は鏡に映して見える理想の世界、それが私である』こんな謳い文句の」
「まさかそれ、ワタシのデスクに置いてた……?」
「そうです。碓氷国時化.E。ユーゼンで見た彼の本には、判別チップについてもあれこれ書かれていました」
「死体を使った実験の資料と判別チップについて取り上げた本……。じゃあやっぱりこれ、生天目の実験の内容?」
クリオネが与えてくれた最後の情報、月城先生という人物の資料。イオリがEフロアで教えてくれた事。そしてヤヨイの話。
碓氷国時化.Eがユーゼンに絡んでいるのは確実だろう。
マオはため息をつく。
「そうか、その人物が……。碓氷国時化.Eが生天目と共同で研究していた大物かもしれない。当然、喜美とも関わりがありそうだな。それにしても大物か……」
それまでマオとヤヨイのやり取りを聞いていたテロメアは、やがて顎を撫でて何かを考え始めていた。
いつも読んでいただき本当に感謝ですっ(/ _ ; )
実は最近、ローソンのスープパスタ(トマト)にハマってしまいローソン呪縛から抜け出せなくなってしまいました。
誰かたすけてくれぇぇぇ笑
よし、また続きを書いて気を紛らわせることにします……。




