第120話 追うもの、追いかけられるもの
またまた投稿させていただきました♪
暇な時に読んでいただけると嬉しいです。
⭐︎スーパークリオネタイムっ⭐︎
『残念。ここまでみたいだね、オジサン。追いかけっこ、なかなか楽しかったよ』
クリオネの声と共に4体のロボットが胸部から大きなハンマーを出して振り上げた。
『だけどこれは最後まで気が付かなかったユキトくんの失態だ』
「何が言いたい?」
ユキトはロボットを睨みつける。
『キミさ、前にオレの電話番号特定したでしょ。実はあの時からキミの携帯はもうオレのものになってたんだよ』
「特定だと? まさか……ミコトのことを調べるのに俺から連絡を取った時か!?」
ユキトの顔つきが変わる。
クリオネに個人的な依頼をしたことを思い出したユキトは、悔しそうに奥歯を噛み締めた。
『あははっ! あんな子供騙しみたいなやり方で不正アクセスなんてするからさ。まさか情報屋からタダで情報を抜き取れるとでも思った?』
「クソっ! 全く気が付かなかった」
「ユキト、どういうこと?」
ヤヨイの問いに、ユキトが素直に頭を下げる。
「すまん、迂闊だった。俺のミスだ」
『あぁ、そう言えばあの時の依頼の報酬はもう貰ったから心配しないで。キミの電子マネーアカウントからバッチリ送金しておいたよ』
「は……、なんだって……っ!?」
「あれぇ、これにも気が付かなかった? 流石はお坊ちゃんだ!」
どうやらユキトの携帯電話の情報は、全てクリオネの手に渡っているようだ。
そうなるとこの警備ロボット4体には、ユキトの携帯電話の位置情報が使われているのかもしれない。
マオがそう考えていると、クリオネはそれを見透かしたかのように笑う。
『賢いマオちゃんは気が付いたようだね。ロボットにはユキトくんの携帯電話の情報を入れた。キミたちが追われてるのもそのせい。もしこのハンマーを振り下ろされたくなければユキトくんの携帯電話を窓から放り投げるか、ユキトくん自身を車から降ろせばいいワケだけど。さぁどうする?』
ロボットに行く手を阻まれたせいで、ついにワゴン車も動きが止まってしまった。
もう後がないと判断したリョウイチは助手席側の窓を全開にする。
「何だ、あんちゃんの携帯が悪さしてるってか? ならそんなもの、捨てちまえ! なっ、命あっての物種だ」
「簡単に言うなっ! あれは俺の財布で、研究のレポートで、目覚ましで、他にも大事なものが……っ!!」
顔を真っ青にして狼狽えるユキトへ、クリオネは含みたっぷりな声を投げかけるのだ。
『ふふっ。なんだかキミのその顔見たら、ちょっとスッキリするな。キミにとっては何よりも大切なものだもんねぇ、ソレ』
クリオネはユキトに対して、一番耐え難い仕返しをしている。
大切にしていたバイクを壊され、本来は自分しか見ることの許されないプライベートな空間を覗かれて、さらには自分からそれを手放さなければならないなんて……。
マオはユキトの様子をそっと伺った。
「ユキトさん……」
目を閉じユキトは暫く黙っていたが、次に目を開けた時には決心した様子で携帯電話を取り出し、顔の高さまで持ち上げたのだ。
「ああぁぁぁぁっ!!」
ユキトが叫び、窓から一思いに携帯電話を遠くへ放り投げる。
それがワゴン車の前にいた鎮圧型警備ロボットにカツンと当たった瞬間、ロボット4体はすぐさま反応した。
『タイショウシャノキュウドウサヲ、カクニン。タダチニ、チンアツヲカイシシマス』
今度はユキトの携帯電話を取り囲みに向かうロボット達。リョウイチはその隙を見て車をバックさせる。
高々と掲げられた4本のハンマーがユキトの放り投げた携帯電話目掛けて勢い良く振り下ろされた。
ガツン、ガツン――――。
振動で車が揺れ、携帯電話の落ちた場所だけ地面がへこんでゆく。道路のコンクリートと共にユキトの携帯電話はバリバリと砕かれていった。
「あちゃー……。あんだけ潰されたら中のデータも修復できるか分かんねーな」
気の毒そうにリョウイチが呟くが、ユキトには全く聞こえていないらしい。
ユキトは死んだ魚のような目で、ただ呆然とその光景を眺めているのだった。
『鎮圧完了っ。ありがとう、ユキトくんへの仕返しはもう充分だ。ほら、キミたちも喜美が飛び出してこないうちに早くキーラボへ戻った方がいい』
つい先程まで笑って鎮圧の様子を眺めていたクリオネは、もう興味が無いと言わんばかりにマオたちを追い払う。
「お……、おう? そうか……。したら行くわ」
これ以上彼に関わるのは危険だと感じ取ったようでリョウイチは車の向きを変え、そそくさとその場を立ち去った。
マオたちがキーラボへ到着したのは明け方のこと。
瑠璃色の空とオレンジ色の光が上空で混じり合う時間帯。
クリオネから解放され、傷ひとつないピカピカの赤いワゴン車がオレンジの光をバックに輝く。にも関わらず、車内の様子はユキトを筆頭にまるで葬式のよう。
車から降りる前にマオがリョウイチに礼を言うと、リョウイチはニコニコして何度も頷いていた。
「いやぁ、ぶっちゃけちょっと焦ったけど面白かったわ! あんた達とはまた何処かで会いそうだな」
窓から出した手を上げ、リョウイチはブルルルンとワゴン車を唸らせる。
ハザードランプを2回点滅させて繁華街の方へ走り去ってゆくワゴン車を、マオたちは見えなくなるまで見送っていたのだった。
「さて、次のニュースです。昨夜未明、地震のような揺れが発生した直後に『奇妙なロボットが街を徘徊している』との通報が警察へ相次ぎました。目撃情報によると、昨夜の時点で同じ形状のロボットが4体確認されています。この騒動により周辺地域の建物と道路が一部破損したようですが、詳しい原因はまだ分かっておりません。なお怪我人はいない模様です。警視庁はこれを受け、何らかに使われていたロボットが暴走した可能性があると見て捜査を続けております」
「ねぇ、これって見ずっとTVだよね? いつもこの時間はウシオさんが出てるはずでしょう」
キーラボの休憩室。
コーヒーを片手にサンドイッチを頬張るヤヨイが不満そうに呟いた。
「ウシオさん、しばらくお休みするらしいですよ。数日前に他のリポーターがテレビで言ってました」
「えぇー、聞いてないよ! 久しぶりに帰って来られたしウシオさんに会えるの、楽しみにしてたのに」
マオはふたつ目のサンドイッチに手を伸ばすヤヨイを見ながらコーヒーをちびちびと飲む。
昨夜は散々だった。
キーラボに帰ってきたマオたちをテロメアが出迎え、アズマはカイ所長と瓜二つの彼に驚いて腰を抜かした。理由を説明して何とか納得はしてもらえたものの、今朝はまだアズマの姿を見ていない。
テロメアはユキトがヤヨイのマンションから一向に戻って来なかったので心配してキーラボでずっと待っていたらしい。
今朝の朝食、このサンドイッチだってテロメアがコンビニで全員分買ってきてくれたものだ。
「そういえばユキトさんも朝から姿を見かけませんね?」
マオはハムとタマゴサラダが入ったサンドイッチを一口齧りながらヤヨイに訊ねる。
「ユキトはまだ仮眠室でふて寝してるんじゃないかしら。携帯電話、相当ショックだったらしいわよ」
「やっぱり……現代人には欠かせない物ですからね」
ユキトが不憫に思えてならない。
クリオネの行き過ぎた仕返し。やはり彼はそれほどまでにあの目を向けられるのが嫌だったのだろうか。
マオが昨日の事をぼんやりと考えていると、休憩室のテレビには何やら騒がしい様子が映し出された。
「えー、たった今速報が入りました。現場に残されていたタブレットからこの一連の騒動に関わるメッセージが出てきたようです。現在、警視庁はこのタブレットの持ち主の特定を急いでいます」
いつも読んでいただきありがとうございますっ^ ^
酷いことするよ、クリオネさん。
次回はついにこの舞台もグランドフィナーレを迎えます。
これでクリオネさんの暴走からようやく解放されるぞぉぉ・゜・(ノД`)・゜・。
また暇な時に読んでいただけると嬉しいです!




