第116話 マルウェア感染
こんばんは!
昼夜逆転してしまいこの時間に投稿失礼します^ ^
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「警備ロボットにワタシたちを捕まえさせようだなんて……。クリオネは何を考えているの? ワタシたちを助けようとしてくれたんじゃなかったの!?」
「さっぱり分からん! ひとつ分かるのは俺が奴を怒らせてしまったらしいってことくらいだ」
階段を駆け上がりながら、ヤヨイとユキトがあれこれ議論している。
「さっきユキトが思いっきり殴っちゃったからじゃない!? 彼、結構痛がってみたいだし」
「整合性を取るために殴ってくれと言われたんだ。あの場ではそうするしかないだろう!」
「なにも本気で殴らなくても……。というより殴るフリでいいって言われたのに何でわざわざ殴っちゃったのよ!?」
「それはっ…………、アイツの思考回路がどうかしてるからだ」
Eフロアを抜け地下2階まで辿り着いたのは良いが、ふたりは段々と大きくなるサイレンの音にも気が付かないくらい痴話喧嘩に没頭しているらしい。
これはまたお熱いことで……いや、今はそんなこと言ってる場合ではない。
マオはふたりの様子を暫く伺う。
「あぁもう、前に仕事を依頼した時もそうだった。あの人は怒らせたら最後、依頼そっちのけで相手にやり返そうとするからちょっと面倒なことになるのよね」
「お前は……っ、何故それをもっと早く言わない!?」
「そんなのいつ言えば良かったのよ? そう思ってあのUSBもワタシの引き出しで保管してたのに。ユキトがクリオネに渡しちゃったから……」
「待て、それは俺のせいなのか!?」
マオは堪らず口を挟んだ。
「ちょっとふたりとも、痴話喧嘩はそのくらいにしてくださ……」
「痴話喧嘩じゃない!」
マオの仲裁に口を揃えて否定するユキトとヤヨイ。
「じゃなくて……、まえっ……前!!」
いよいよ慌てたマオが前方を指差せば、ふたりは揃って前を向き絶句する。
階段から降りてきた警備ロボットが1体、丸っこい銀色のボディをゆらゆらと動かし、頭上には赤いパトランプを光らせじっとこちらを見つめていたからだ。
『対象者の位置情報が確保可能な圏内に入りました。距離、25メートル。これより確保モードに移行します』
「まずい、顔を見られたぞ!」
ロボットから発せられる無機質な声にユキトが慌てふためく。
「確保モードって……アレ!? いつも逃げた犯人が絶対に捕まってるやつよね? これ、ワタシたちが犯人と同じ状況になってるってこと!?」
警備ロボットはドキュメンタリー番組でも取り上げられている。つまり知らない者はいないくらいに有名なのだ。犯人や不審者の確保はお手のもので、登録された追跡対象者の写真や似顔絵、行動範囲をもとに追跡と確保を行うまでが仕事。
その番組の終盤では確保モードに移行したロボットが追跡対象者を追い詰め、必ず捕まえるというのがお決まりの展開なのだが……。
皮肉にもユーゼンの技術を駆使して作られたそれは警察に導入され、クリオネにハッキングされて今、こうして自分たちを困らせる存在になるとは誰も予想していなかった。
「なんか引き返した方がいいかな!? 凄い速さでこっちに向かって来てるみたいだけど」
「ダメだ、それじゃすぐに追いつかれる!」
ヤヨイとユキトの慌てぶりがマオをかえって冷静にさせた。
「確か地下2階にも出入り口があったはずです。とりあえずついてきてください!」
とは言ったもののマオ自身、地下2階のことなんてよく知りもしなかった。だが今はとにかく、この追跡から逃れられる場所ならどこでもいい。
マオは少女を抱え直して『地下2階』のプレートが貼られた扉を勢いよく開ける。
ヤヨイ、ユキト、続けてアズマが入ってきたところで扉が閉まりギリギリのところで警備ロボットの追跡は免れたのだった。
ユキトとヤヨイ、マオが息を切らして地下2階の廊下に座り込む。
「なんとか助かった! ちょうど扉の前にいたのが幸いだったな。あの扉が上手くロボットを遮ってくれなきゃ捕まってたぞ」
しかしそれまでずっと黙っていたアズマがユキトの言葉に対してボソッと口を開いたのだ。
「いえ、そうでもないみたいですよ。あれを……」
アズマの視線が向かう先を目で追うマオ。
廊下の突き当たりには『商品開発室』という文字が見える。
サイレンが鳴った直後、自動扉が左右にスライドしてその部屋から次々に飛び出してきたのは、またもや人型をした銀色ボディのロボット。その数、10体以上。いや、もっといるのか?
それを見たヤヨイの顔が完全に引き攣っていた。
「嘘でしょ……! まだこんなにいたの!? このロボット、いったいどれだけいるのよ!?」
『対象者の位置情報が確保可能な圏内に入りました。距離、15メートル。これより確保モードに移行します』
あちこちから聞こえてくる警備ロボットたちの容赦ない確保宣言に、流石のマオもどうすれば良いのか分からなくなる。
「来るぞっ!」
3人は休む間もなく立ち上がるしかない。
「おかしい。部屋の扉が開くまで俺たちは顔を見られていないはず。なのに奴らはその前から既に動き出してて、扉まで開けてこっちに向かって来る。何故なんだ!?」
ユキトが声を荒げてそう言うので、マオもつられて荒っぽい声が出てしまう。
「知りませんよ、そんなの! クリオネさんは警備ロボットに私たちの画像か顔写真か何かを入れて追跡対象だと認識させてるんじゃないんですか!?」
「いや違う! 何故このロボットたちにこんな動きができる、どうやってアイツは俺たちを追跡対象に仕立て上げた!?」
「あぁ……もうダメだ……、ここまでなのか」
諦めたような声を出すアズマ。
その時、何を閃いたのかヤヨイは言った。
「マオちゃん、GPSよっ!! クリオネから渡されたあのGPSを捨てて!!」
「GPS!? はっ、……そうかっ!」
全て言われずとも、マオはヤヨイの意図することを理解した。ヤヨイはユキトとマオの会話を聞き『何故』の理由に気がついたようだ。
上着のポケットから指先ほどの黒い球体を取り出しできるだけ遠くへ……自分たちから離すようにして、力の限り前へ放り投げる。
警備ロボットたちはその動きを感知し、動きに合わせてぐるぐると目を動かす。
『対象者の急動作を確認しました。ただちに確保を開始します』
その合図と共にロボットたちの胸部分が開き、そこから一斉に蜘蛛の巣のようなネットが放たれた。
マオの投げたGPSはその中央、幾重にも張り巡らされたネットの中にすっぽりと収まっている。
『確保が完了しました。応援を要請します』
こうして警備ロボットの動きが止まった。
これ以上、マオたちに向かって来ることもなければサイレンを鳴らされることもない。
「助かった……、の?」
おずおずと訊ねるヤヨイにユキトが答える。
「みたいだな。アイツはこのロボットに俺たちの位置情報を与えて追跡させていたのか」
『そういう事っ♪ なぁんだ、懲らしめてやろうと思ったのに意外とやるね。ヒントはあげたつもりだけど正直、見くびってたかも』
廊下に取り付けられているスピーカーから調子の良いクリオネの声が聞こえる。このスピーカーはおそらく、研究員を呼び出したりする時に使われる館内放送用のものだ。
『喜美はマオちゃんを処理場に運んだ時、イオリサンの社員証を持っていることに気がついたけどGPSには気がつかなかった。だからコレでちょっと遊ぼうと思ってさ』
「この期に及んで……っ! 俺たちがどれだけお前に振り回されているか、考えたことはあるか!?」
激昂するユキトにクリオネは冷たく言い放つ。
『黙れよ色男。アンタが去り際に人を見下したような目をして、さも憐れんでるような気色の悪い面向けるからこうなったんだ。自業自得ってやつだね』
「なんだと……っ!」
『ははっ。きっとお坊っちゃんのアンタには一生かかっても分からないだろうさ、この気持ちは』
ユキトを軽蔑するようにクリオネが笑った。
『ユーゼンの警備や電気関係の設備は粗方もう乗っ取ってある。もし今アンタがエレベーターなんて呼んでも絶対にその階には止まらせないし、天井のスプリンクラーで頭からずぶ濡れにしてやることも、なんならここにアンタを閉じ込めておくことだってできる。けどなんでそうしないと思う? 彼女、風間ヤヨイさんに感謝することだね』
「クリオネさん、やり過ぎですよ。確かにユキトさんは時々かなり腹が立つ人です。でもだからってこんな酷いことを……」
ユキトが向けたあの目。やはりあれはクリオネを刺激し、怒らせる原因となってしまったようだ。
マオは先程の出来事を思い浮かべ、あくまでもユキトをフォローしつつクリオネを諫める。
『酷いこと……?』
クリオネは一瞬キョトンとしたような声を出したかと思えば、ゲラゲラと笑いだした。
『オレはずっと自分の欲望に正直に行動してるだけだよ。面白いことには関わりたくなるし、ムカつく奴は徹底的に叩き潰す。依頼だのユーゼンだのロボットだの……オレにとってそんなものは欲望を満たす為のツールでしかないんだ』
嘘か真か――――。
クリオネは優しい声でマオにそう告げたのだった。
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▼今日の一言
(おい、クリオネ。いい加減暴れないでくれよ。後処理が大変なんだよ。他は暴れても良い流れを作ってくれるのにお前が暴れてしまうとダメなんだよ)とぼやいてみたり……笑
くそぉ、今度『クリオネが伝授するハッキング嫌がらせ術100選』を執筆してやるーっ(ノД`)
ではまた続きを書いてきたいと思います!!




