第113話 Carpe diem!
おはようございます^ ^
また続きを投稿させていただきます。
ぜひ暇な時に読んでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします!!
眩しいっ。
処理場から外に出たマオは目を細め、抱えている少女をギュッと抱きしめる。
先頭を歩くユキトに辛うじてついてゆくがユキトが長い廊下の半分くらいまで来たところで急に立ち止まったので、マオも慌てて歩みを止めた。
何やら廊下の向こう側が騒がしい。
「遅かったね。君たち」
中低音の甘く心地良い響きのする声がすぐ近くで聞こえる。
段々と明るさに目が慣れてきたマオは、ユキトが廊下の真ん中で睨みつけている人物を目にして複雑な表情を浮かべた。
「クリオネさん……」
「残念。もうちょっと早くここから離れて欲しかったな」
いつの間にか警備服に着替えていたクリオネがマオたちの行く手を遮るように突っ立っている。
「ちょうど生天目がお偉いサンの接待中でさ、こんなことオレの仕事じゃないんだけど……まぁ、喜美からお金貰っちゃってるし。だったらオレがやるしかないもんねぇ」
出会い頭に世間話でもするような雰囲気で愚痴をこぼした後、クリオネは鋭い目つきをマオに向けて微笑んだ。
「さぁおいで、マオちゃん。『解体』の時間だ」
マオが何か答えようとする前にユキトの眉がピクリと動く。
抱きかかえていたヤヨイを床に立たせるようにして下ろし、目の色を変えてクリオネに近づくのだ。
「なぁ、お前は動物か何かか? ついさっきまで俺たちを助けようとしてたんじゃなかったのか。途中で気が変わった、なんてのはナシだ。人間ならちゃんと分かるように口で説明しろ」
「ユキトくん、そんなに怖い顔しないで。君たちがモタモタしてるからこうなっちゃったんだよ?」
「俺はどっちつかずが嫌いだ。だから今、ここではっきりしてもらいたい。お前はユーゼンと俺たち、どっちの側に付くつもりなんだ!」
ユキトの問いを嘲笑うかのごとく、クリオネは肩をすくめる。
「んー……より面白い方、かな。ちゃんと報酬を支払えるクライアントで、オレを楽しませてくれるのなら何だっていい。でもここの所長サンは人使いが荒い。情報屋の仕事ってもんをまるで分かっちゃいないね」
「情報屋の仕事だと? 俺たちをゲームの駒みたく扱って楽しむことがお前の仕事か?」
「そうだよ。お仕事はゲームだ。だから楽しまなくちゃ!」
「良い加減にしろっ!!」
ユキトは両手でクリオネの胸ぐらを掴んだ。
それでもクリオネは鋭い目つきを崩すことなく、ユキトから目を逸らさずに一息で語る。
「オレの仕事はあくまで情報の売買。散らばったパズルのピースを探すところから始める。それらをうまく嵌め込んで、繋げるのが仕事だ。そのピースを見つけるのだって、オレの手で誰かを動かしていかなきゃならない時もある。そうやって完成させた一枚絵を眺めるのが好き……いや、認めるよ。最っ高に気持ちいい。快感だっ!」
「こいつ……っ!」
「でもそれって悪いことかな。逆にオレが気持ちよくなって何が悪いの?」
「……この快楽主義者め」
「あははっ。いいね、ありがとう。とても良い褒め言葉だ」
恍惚とした表情のクリオネを睨みつけたまま黙り込むユキト。
いつも愛想笑いを浮かべ、本心は奥底に仕舞い込んで絶対に見せようとしない。
ユキトはそんな彼を得体の知れない奴だと思っていたが……。
これがこいつの本心、なのか?
そう思わずにはいられない程、普段よりも言葉に感情を乗せてきているのが伝わる。
「ここの所長サンは例えるなら……そうだな。先に一枚絵を見せてきて、パズルのピースまでオレに与える。んで、ピースを切っても削っても足してもいいから絶対にこの絵を完成させろって依頼が専らなんだ。それじゃあ面白くもなんともない。オレの言ってること、分かる?」
鼻を鳴らし吐き捨てるようにユキトが言った。
「悪いがお前の言ってることは理解できないし、理解したくもないな。虫唾が走る」
クリオネはその言葉を待ってましたとばかりに口角を上げる。
「あぁ、そうか。分からないか。だってユキトくんは動物か何かだもんねぇ。そりゃあ分からなくて当然だ」
「なんだと!?」
「ね、ほらダメだよ、すぐ熱くなって掴み掛かっちゃ。人間ならちゃんと口で説明しろって、たった今キミが言ったんじゃないか」
「っ……ッ!!」
ユキトは舌打ちをし、乱暴にクリオネの胸ぐらから手を離す。
「まぁ、所詮人間も動物だもの。なら仕方ないよね、オレだって動物なんだから口よりも先に足が出ちゃうのはさぁっ!」
クリオネはそう言うと足のつま先を僅かに内側へ向け、膝を軽く曲げる。身体を勢い良く捻って繰り出された足が、ユキトのふくらはぎを思い切り蹴り上げた。
「ぐっ!」
まるでふくらはぎを鋭いナイフで切られたかのような激痛。ユキトはその場に倒れ込んで動けなくなる。
「ユキトさん!」
「ユキトっ!!」
マオとヤヨイが揃ってユキトの名前を叫んだ。
クリオネは慌ててユキトに触れるヤヨイを一瞥すると、申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんね、風間さん。オレってこういう人間なんだ。信じてくれたのは嬉しいけど、やっぱりオレには嘘をつくことしかできない」
ヤヨイは首を動かさず、目線だけ上に向けるとこう言った。
「そう。それがあなただもんね」
マオはふたりのやり取りに首を傾げる。
「このっ……、ふざけやがって……!」
「おぉ、すごいすごいっ♪ 立ち上がった!」
急にクリオネが興味深そうな声をあげたので、マオはその視線の先を追う。
そこには蹴られた足を庇いながら、悪態をついて立っているユキトの姿があった。
その息は荒く、殺気を纏った目がクリオネを捉えて放さない。
「ユキトくんの闘志はまだ消えてなかったか。まさに手負いの獣って感じだね、驚いたよ。アレを受けて立っていられる人なんかそうそういない」
「たかがカーフキック一発当てたぐらいで調子に乗るなよ」
歯を食いしばりながら床を蹴りクリオネとの距離を詰めたユキト。
身体の重心を落とし、見ていて胸糞の悪い顔面めがけて重い拳を放つ。
「ふぅん? 意外と楽しめそうだ」
鼻先ギリギリのところでその拳をかわしたクリオネは、踊るように回転しながらユキトの耳元に近づいた。
「ねぇ、上に監視カメラがついてる。ちょっとだけこの茶番に付き合ってよ」
「あ"ぁ?」
ユキトはドスの効いた声を出しつつも、すぐにその意図を理解してしまう。
そんな自分にまでなんだか胸糞が悪くなった。
本当に勝手な奴だっ!
足を引いてクリオネと距離を取る。
苛立ちを打ち出すかの如くユキトの拳は下から上へと突き上げられるが、またもやクリオネは上体を反らして拳を綺麗に避けたのだ。
「あのさ、もしかしてさっきからオレの顔面ばっかり狙ってない?」
「……気のせいだ」
「あ、それ絶対嘘だね」
クリオネは楽しそうな笑みを浮かべる。
そして、勢いよく伸ばした鉄拳にありったけの力を込めてユキトのみぞおちを狙った。
ーーーー来るっ!
瞬時にそう判断した。
ユキトがみぞおちを守るべく腕でガードを固める。
ガツンと衝撃が走れば、腕の関節がビリビリと痺れた。
こいつ、なかなかやるな。
硬派な男と軟派な男。考え方も対極なふたりが同じことを思った瞬間であった。
いつも読んでいただきありがとうございます!!
ブックマークなども大変感謝ですっ(/ _ ; )
次回の情熱大陸のゲストには是非ともクリオネをっwwww
引き続きプロフェッショナルと根性野郎の戦いをお楽しみただけたら嬉しいです笑
では続きを書いてきますっ!




