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第111話 夜に昇った太陽

おはようございます^ ^

また更新させて頂きました。


また暇な時に読んでいただけたら嬉しいです♪

よろしくお願いします!!



 「それでね、ユキトったらその時なんて言ったと思う? 『俺が壊したんじゃない! 普通に使ってたらいきなり爆発したんだ』だって。あの人がPC普通に使ってるの見たことある? ふふふっ、ワタシそれ聞いて笑っちゃってさ」


 「あ、そう言えばカイ所長の記録を調べてた時もそんな感じでしたよ。熱い部屋の中で白衣脱ぎ捨てて、汗までかいて……。『冷却装置を用意しておくべきだった』なんて言ったんです。いや、そこじゃないでしょって突っ込みたくなりましたね」


 「やだぁそれ。想像できちゃうのが怖い」


 処理場の中に似つかわしくない笑い声が響く。


 固く冷たい床、湿った嫌な空気、カビの臭い。最悪な目覚めを迎えた場所……のはずだった。


 それがどういうわけか今ではすっかり話に花が咲いてしまい、全くと言っていいほど緊張感の欠片もない場所に様変わりしている。


 いけない。これでは街角の喫茶店で同僚の奇談を肴にコーヒーを飲むOL、マオとヤヨイになってしまうではないか。


 マオの頭の中にはそんなイメージが浮かんでいた。

 こんなこと、想像できてしまう自分の脳が怖い。


 うっかりヤヨイのペースにでも呑まれてしまったんだろうか。


 おかしい、つい先程まで脱出方法を考えていたはずだったのに……。


 奇妙なイメージを振り払うべく頭を強く振ったマオは、ヤヨイへ向かってキッパリと言った。


 「じゃなくて、ヤヨイさん。そろそろどうやってここから出るか考えておかないと。クリオネさんもユキトさんも全然来る気配がないじゃないですか! このままだと本当にまずいですよ」


 マオの必死な説得も虚しく、ヤヨイはなかなか首を縦に振ろうとはしない。


 「……ユキトなら絶対に来てくれる。だって、ずっと待ってたんだもん」


 ヤヨイが急に拗ねた子供のように口を尖らせるのでマオはそれ以上、何も言えなくなった。


 自分の脳の半分はAIで出来ている。

 きっと真央の脳を補助する目的で取り付けられた機械の脳。


 イオリの話を聞いた時、自分の中で何かが繋がったような気がした。


 今まで自分も気がつかないうちに、この脳は起きた出来事をひとつの情報として記録し、処理している。積み重ねられた情報をひとつ、またひとつ。関連のありそうな別の情報と勝手に紐づけてゆく。自分の脳はそうすることで常に考え、推測することを止めない。


 でもそれは普通の人と大して変わらないものだろう。


 ただ人と違うところと言えば、この機械の脳が『記憶』を『記録』として半永久的に保存しておけるのだと気がついたこと。そして真央の思考パターンのお陰なのか、全体像の見えた情報に関しては処理速度が少しだけ速くなる……気がする、ということぐらい。

 

 だからこそこんな無機質な自分でも分かる。


 ヤヨイはユキトのことを無条件に信じているのだ。


 いつもユキトのことを話す時には表情がコロコロと変わり、いつも楽しそうな様子で、自分が困った時には真っ先に信じて頼ることのできる相手。


 それがヤヨイにとってユキトなのだということを。

 

 「大丈夫。マオちゃんの話を聞く限り、クリオネも本当はワタシたちに協力してくれてる。彼は生き方が器用過ぎて、一周回って不器用になっちゃってるだけよ。きっと」


 不器用なところはまぁ、ユキトもともかくとしてなのだが……。


 マオは思い切ってヤヨイに尋ねてみることにした。


 「ヤヨイさんは何でクリオネさんのこともそんなに信用してるんですか?」


 普通なら絶対に会うことのない人間。

 ましてやいかにもお嬢様、といった雰囲気のあるヤヨイからは絶対に想像の出来ない人間だというのに。


 「えっ? そうねぇ。彼には前に一度、依頼を頼んだことがあったから」


 「えっ!? 依頼って……」


 そこまで言いかけて、マオは慌てて口を閉じる。


 ギィィと鉄の軋むような重たい音が聞こえたからだ。


 「扉の音……? 誰か入ってきたみたい」


 ヤヨイは鋭い囁き声でマオに伝えた。

 マオは素早く頷く。


 靴音が反響してその人物が扉から今、どの辺りまで移動しているのかがはっきりと分からない。でも早足でこちらへと、確実に向かってきているのだ。


 喜美が戻ってきたのか、それとも…………。


 「マオさんっ!!」


 処理場に凛として澄んだ声が響く。


 「えっ、その声……っ! 嘘……!?」


 もう絶対に聞くことの出来ないと思っていた声が急に聞こえた。マオは声の主をよく確認しようと、鉄格子を掴み顔を近づける。

 

 「アズマさん……!? 生きていたんですか!?」


 アズマはマオが閉じ込められている鉄格子の前に立つと、ほっと安堵の表情を浮かべたようだった。


 「マオさん、良かった。間に合って……!」


 「おい、アズマ。あいつの言う通りシノミヤって女の研究員が何か持ってたぞ」


 少し遅れて、息を切らしながらやって来たのはユキトか。


 ユキトは扉からアズマの横まで走ってくると、マオを見るなりこんなことを言い出す。


 「ヤヨイはどこだ!? お前と一緒に捕まってたんじゃ無いのか?」


 「もう、ちゃんとよく見てよね! ここにいるでしょう。ここに!!」


 ユキトがはっとして振り返り、声のした方に歩み寄る。


 「ヤヨイ……っ!! 本当に、ヤヨイなんだな……?」


 「…………遅い、ユキトのばか」


 頬を膨らませるヤヨイ。

 ユキトは鉄格子に取り付けられた電子キーに数字を打ち込んでゆく。


 マオはその手つきを見て、ふぅっと息を吐いた。

 どうやらユキトは既に解除コードを知っていたようだ。


 アズマがユキトの手の動きを真似する。


 これで同じようにマオの鉄格子に取り付けられた電子キーにも解除コードが打ち込まれたのだった。


 なんとか助かった。後はヤヨイを連れてユーゼンから逃げるように立ち去ればいい。


 「ヤヨイさん!」


 マオは開いた鉄格子から飛び出すと、ヤヨイの元へ駆け寄った。


 とうとう……ヤヨイを救い出す事ができるのだ。


 ところが鉄格子を開けたユキトは視線を下に移動させると、顔を曇らせる。


 「喜美はお前にこんなものまで……」


 マオはそこで初めて、チャリッという金属音を耳にした。

 鉄格子から伸びた鎖に繋がれているのはヤヨイの両手。


 「ひどい……。ヤヨイさん、すみません。私っ……全然気がつかなくて……!」


 マオの悲痛な顔を見て、当の本人は困ったように笑うばかりだ。


 「あはは。みんなあんまり湿っぽい感じにならないで……。そういう空気、苦手なの。だからワタシ、なるべく動かないようにしてた。マオちゃんにこの音を聞かせたくなかったから」


 ヤヨイがそう言って手を動かすと、鎖はチャリチャリと音を立てた。


 「まさかシノミヤが持ってたのは……この鍵、なのか?」


 鎖の繋がれた先、ヤヨイに嵌められた手枷には鍵穴がある。その場に屈んだユキトはそこへそっと鍵を差し込み、押し回した。枷はヤヨイの手から滑り落ち、離れてゆく。


 「あ、開いた!」


 ヤヨイはすぐ感覚を確かめるように、自由になった両手を握ったり開いたりしていた。それからユキトの目を見ると、エヘヘと聞こえてきそうな笑みを浮かべるのだ。


 ヤヨイの笑顔は、雲の隙間からパッと太陽が出てきたかのように明るく、爽やかなものだった。


 「ったく、心配かけやがって」


 ユキトは手を伸ばし、ヤヨイの額にぺちんと一発、デコピンをお見舞いする。


 「ごめんなさい。でも……ありがとう」


 そして額に手を当て痛い、とぼやく若干不満そうなヤヨイ。


 ユキトは鼻を鳴らすと、今度はそんなヤヨイの頭を優しく撫でた。


 「よく頑張ったな」


 「ヤヨイさん、お帰りなさいっ!」


 マオもその場に屈んで、勢いよくヤヨイに抱きつく。



 「ただいま、ふたりとも」



 ヤヨイの目から一筋の雫が、静かに頬を伝っていった。

 

 

 


 

いやぁ、ついにヤヨイさんの救出に成功しましたっ!!

皆様のおかげです。ありがとうございます(*´∇`*)


ですが……これで終わりではありません笑  


まだ残された謎があるのでここから本当の最後に向けてまた頑張りたいと思います。


皆様、もう少しお付き合い頂ければ嬉しいです♪

よろしくお願いします!!


※評価•感想•ブックマークなどいつもありがとうございます^ ^

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