第110話 蠢動するヌミノーゼ
またまた投稿させていただきました!
暇な時に読んでいただけると嬉しいです♪
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「ねぇ、あの映像はどうやって手に入れたの? サカキとナバタメの処理場でのやり取り。あれはサカキの目線と同じくらいの高さで撮影された映像だった。きっとサカキの目にはコンタクト型カメラが付いていたんじゃないかな」
「……よく知ってるのね」
『今、私の上着には小型カメラがついている』
サカキのこの言葉、あながちハッタリでも無かったようだ。だがついていたのは上着ではなくサカキの目の中。コンタクトレンズのように目に入れて使う超小型カメラだった。
クリオネはさらにイオリを問い詰めてゆく。
「オレはサカキのPCデータが丸ごとコピーされたUSBを持ってる。でもその映像はUSBの中に入っていなかった。ってことはさ、データをコピーした後に映像が撮影されたか、サカキが敢えてPCにデータを残さないようにしたか。答えはどっちかに絞られるワケだけど……。確かサカキはエヴァンディール計画に同意していたよね?」
「……そうね」
「何でそんな人物の死に際の映像をキミが持ってたの?」
なるほど。それを聞きたいがためにアズマを体よく追い払ったのだとイオリは思った。
彼女はクリオネの指摘を受け、表情を変えることなく理由を話す。
「彼は組織の同調圧力に負けてエヴァンディール計画の同意書を書いただけ。本当は中立的な考えを持つ立場だったし、用心深くもあった。私が計画を良く思っていないのはサカキも知ってたから、もし自分の身に何か起こっても証拠だけは私に渡るようにしてたんじゃないかしら。映像データがPCに飛ぶよう設定してね……」
「へぇ。警察官の知人じゃなくてキミに?」
「あれはサカキのブラフでしょう」
「驚いたな。もしかしてイオリサンってほんとは情報屋?」
「何が言いたいの?」
クリオネが不意にポケットの中へ手を入れる。
「いやいや。サカキもキミも随分、巧妙な手を使うなぁって感心してただけ。オレも周りくどい手を使うのは好きだけどさ、キミは賢いし妙にカンも冴えてるから。もしかして同業者なのかと思った」
「それ、冗談よね? 情報屋なんて別になりたいとも思ってない」
イオリは嫌そうにため息をつき、首を振って静かに続けた。
「もともと研究職じゃないサカキにプランAの責任者なんて無理があったのよ。私はプランBの人間だけど、サカキの仕事を手伝ってたからプランAのことも知ってる。私があの映像を持っていたのはね、そういう兼ね合いがあったからなの」
「今、その映像はサカキのPCの中に?」
「いいえ。生天目くんに見つからないよう、部下たちに頼んでプランBルームに転送させた。サカキが持っていたデータと一緒に」
「なるほどねぇ。つまり、オレの持つUSBに映像が入っていなかったのは、サカキがコンタクト型カメラを使って撮影する前のデータをコピーしたからってことか」
「サカキが処理場に連れていかれたのは今日の話よ。コンタクト型カメラをつけて所長室に入っていった彼を部下が見てる」
「どうして急にカメラなんかつけたのかな? まるでこれから自分の身に危険な事が起こるかもしれないって、分かってたみたいだ」
「彼はプランBの被験者をプランAの実験に呼んでしまったの。それだけじゃない。その被験者が逃げてしまったことで計画に遅れが出て、喜美所長の機嫌を損ねた。いざとなれば記録した映像をネットに公開して助けてもらおうと考えていたのかもね。私じゃ結局、助けられなかったけど……」
しばらく何かを考えていたようなクリオネであったが、ポケットから手を出すとイオリをじっと見つめてこう言った。
「嘘だ、それはおかしい」
「……どこがおかしいの?」
「だってイオリサン、キミの話はメチャクチャだよ。本当は助けられなかったんじゃなくて、助けなかったの間違いじゃない?」
否定も肯定もせず、イオリは沈黙した。
「あぁ、ごめん。キミを責めてるワケじゃないんだ。ただ教えてほしくて。サカキのPCにあった書類には殆どキミのサインが書かれてた。内容は何のことかさっぱり分からなかったけど、同じ人物のサインってことは分かったんだ」
「私がサカキの仕事をその都度、確認していたから……」
「そう。そこなんだよね」
イオリを見るクリオネの目が鋭くなる。
「マーライオンのヘソのイベント、あのリストにもキミのサインは書かれていた。でも変だ。リストの500番目にはオレがイベントで申し込んだユキトくんの名前があったのに。ユキトくんのことをプランBの被験者と今、キミは言った。賢いキミならプランBの被験者がプランAのリストに入っていることに気がつくはずだ」
イオリは何も言わない。
クリオネは気にする素振りを見せず、ひとりごとのように続けた。
「処理場の下ってどんなふうになってるか知ってる? あの映像の中でナバタメがボタンを押すと床が消えて落とし穴ができたでしょ。あの穴は滑り台みたいになっててね、最終的には海の近く、工業地域と繋がってるんだよ。そこにある工場の一室で、みんな燃やされちゃうんだ。いくら電波が届きづらい処理場でも、ここまで来ればもうそんなこと関係ない」
「……もし私がそれを知っていたとすれば、どんなことが起こると思う?」
イオリはクリオネに向かって無表情で問いかける。
「んー、そうだな。例えばキミは始めからサカキを処理場へ送ろうと考えていた。処理場へ送るためには、サカキに何かミスしてもらわなければならない。だからキミは敢えてユキトくんがプランBの被験者である事を黙っていた。そうすればサカキの処理場行きは確定だ。そしてキミ自身、処理場の造りを知っていたのなら……サカキが電波の届く場所に行き着くことも分かっていた。そこでコンタクト型カメラを通した映像が、サカキのPCに送られる。後はナバタメにバレないようにサカキのPCデータをプランBルームに転送すると、今みたいな状況が出来上がるよね」
「私がそんなことをする理由は?」
「キミ、喜美所長に言ったでしょ。碓氷国時化.Eに会わせて欲しいって」
「…………っ!」
クリオネは表情を変えたイオリを見逃さなかった。
「これはオレの憶測。喜美はこの先、サカキの必要性を感じなくなった。だからキミが処理するきっかけを作ってくれたら会わせてあげてもいい…………とか言われたんじゃないの?」
「そんなこと……っ!」
「もしかして月城センセイを味方につけて、あの映像を持って、碓氷国時化.Eに直接交渉しようとしていたのかな。『エヴァンディール計画を中止しないとあの映像を公開する』って。処理場での出来事なんてネットに公開されたら、流石に揉み消すのが大変そうだもんねぇ」
イオリの肩は微かに震え、普段よりも顔色が悪くなっていた。
少し虐め過ぎたかとクリオネは反省する。
しかし多少強引な手を使ったとしても、これだけは知っておきたい。
今度はできるだけ優しい声色で、クリオネがイオリに尋ねた。
「ねぇ、教えて? 碓氷国時化.Eの正体って――――――、だよね」
クリオネの言葉に震える息を吐きながら、イオリは小さくゆっくりと頷いたのだった。
いつも読んで頂き感謝です(´;ω;`)
イオリさん、組織の動きに逆らってまで真央との約束を果たすべく頑張ってました……。
(頑張り方がえげつない)
だいぶ纏まってきた?(と信じている)ので少しホッとしています笑
また続きを書きたいと思いますので、ぜひ暇な時に読んでいただけると嬉しいです。
では、ご飯を食べにいってきます!!




