第109話 機巧 -Internal marionette-
こんばんは^ ^
今日もまた投稿させていただきました。
ぜひ暇な時に読んでいただけると嬉しいです♪
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「あぁ!? どういうことだ。まさかお前がここにいるとは思わなかった」
「そりゃ驚くでしょうね。僕だってあなたと行動することになるなんて、予想もしていなかったので」
携帯の画面を頼りにユキトは資料室へやって来た。
クリオネの指示通りに行動してユーゼンへ入り、何故かこの部屋に誘導され、そこで出会った人物がまさかアズマだったとは。
本来ならばこの状況、とてもまずいのではないか。
「クソっ、完全に油断したな。奴のことを少しでも信じた俺が馬鹿だったのか」
クリオネの情報をもとにユキトが動く。
数日の間にこの構図がすっかり出来上がっていたせいで、今回も疑うことなくここまでやって来てしまった。
だが、誘導された先に現れたのはユーゼンの内通者。
ここへ来る前に見せられた動画。
ヤヨイの部屋から資料を運び出そうとするアズマの姿……。
あの動画はフェイクか?
内通者がアズマであると、自分にそう言ったのはクリオネだ。
もしそれが真実の情報ならば、なぜわざわざ内通者と会わせるような真似をした?
答えは簡単だ。
クリオネがユーゼン側に寝返ったから。
そう考えるのが妥当なんじゃないのか。
自問自答を終えたユキトはアズマを睨み付けると、身構えるように一歩下がる。
ユキトの行動を見たアズマが首を傾げた。
「ユキトさん、彼から何も聞いていないんですか?」
「彼だと?」
「あの情報屋です」
「何故お前が奴を知ってる?」
「僕は情報屋に言われて、あなたを案内するためにここで待ってたんです。マオさんとヤヨイさんは今、この地下で捕まっています」
「あいつも捕まったのか! 俺は詳しく聞かされていなかったぞ!?」
「説明している時間がなかったのでしょう。事は急を要します。早く助けに行かなければ……」
「助けに行く、か。随分ムシの良い話だな。元はと言えばお前がユーゼンの内通者なんてやってるから、こんなことになったんじゃないのか!」
ユキトの指摘を受けたアズマは唇を噛み、俯く。
「…………確かに。全て僕のせいです。カイ所長とヤヨイさんがエヴァンディール計画を調べていると気がつき、僕は喜美所長に報告した。そうしなければ、今日まで自分の守りたかった人たちを……守ることができなかった」
どこで歯車が狂ってしまったのか。
彼は答えの出ない問いに、一瞬もがき苦しむような目でユキトを見る。
「……守ることができなかった、か。どんな事情があったにせよ細かい話は後だ。お前のことは正直好きじゃないが、今はそうも言ってられないんだろう?」
鼻を鳴らしユキトはニヤッと笑うと、憎まれ口を叩いた。
それにつられてアズマの口角が少しだけ上げる。
「困りましたね。あなたのその態度、やっぱり僕も好きになれない」
アズマの目には僅かだが、光が戻ってきたようだった。
「俺を案内してくれるんだろう。行くぞ、アズマ」
ユキトは携帯電話の画面をアズマに見せる。
ユキトにマオたちの位置情報が送られていることを確認したアズマは頷いて歩き出した。
「ええ。僕について来てください」
階段を降りながらアズマは手短に状況を説明する。
シークレットゲートを潜りEフロアへ到着するふたり。その間ユキトの脳内には自分の置かれている状況が手に取るように浮かんでいたのだった。
どうやらユキトはアズマの説明で大体のことを把握できたらしい。
「そうか。あいつは知ってしまったのか。自分が真央の代わりに作られた存在だと。あいつを作った幹部の水乃とお前、そしてクリオネがこうして繋がっていたとはな」
「いえ、あの情報屋は特別です。彼はスリルを楽しんでいるようにしか見えない。今回は僕たちと彼の利害がどういうわけか一致したから良かったものの……下手をすれば僕は死んでました」
ユキトはアズマの腹部に目を落とす。
腹を庇いながら階段を降りるアズマの姿に、ユキトがため息をついた。
「痛むのか?」
「まぁ、多少は。でも本当に怖いのは彼がここまで計算して事を進めていたということ、そして僕たちはそれを知らずに彼の遊び道具になっていたということでしょう」
「あぁ、全くもってその通りだな。背筋が寒くなる。まるで奴の操る糸で動かされている人形、か」
「あまり良い気はしませんが。彼の協力が無ければ現状を打開できなかったのも事実。ある意味こんな救出方法、考えもしませんでしたから」
Eフロアのさらに奥へと廊下を進んでゆくアズマ。
途中、分厚い鉄扉の前で足を止めてユキトの方へ振り返る。
心なしかその顔が引き締まっているように感じた。
「ここから先は生天目の管轄です。見つかれば僕たちもただでは済まない。覚悟は出来てますか?」
「今更聞くな。こんな絶妙なタイミングでやっぱり引き返しますなんて言えるわけないだろう!」
「…………ですね」
ユキトは開かれる目の前の鉄扉を、眉間に皺を寄せ睨みつけるのだった。
時は少しだけ遡り――――――。
アズマが屋上を去った後、何処から出したのかクリオネは隠していたPCを使って仕事を始めていた。
「よし来たっ! 今の電子キーの解除コードは『3349』、日によって違うのか。しかしありがたいねぇ、処理場には防犯カメラがない。ふたりが映り込む心配もなさそうだし。Eフロアや階段も警備が手薄となると、映像を差し替える手間が省ける」
真剣な表情だ。かなり集中しているらしい。
イオリはそろそろ喜美が戻って来るのではないかと、しきりに屋上の出入り口の方へ目を向ける。
「大丈夫だよ、もう終わるから。それにしてもお宅の会社ってけっこうセキュリティ、ガバガバなんだね」
「情報屋のあなたに言われてもね……」
キーボードを素早く叩きながらクリオネは笑った。
「よく言うよ。喜美に隠れてイケナイ事ばっかりしてるのにさぁ。月城センセイにあの映像を送ったのもキミでしょ。さっきセンセイからオレにも送られてきたんだ。それに何が映ってたと思う?」
答えようとした時、ポーンと通知音が鳴ったのでイオリは自分の携帯電話を確認する。
「ごめんなさい、部下から連絡が来た。数十分後に警視庁の人間が死刑囚の脳を持ってEフロアに到着するそうよ。20体の警備ロボットと一緒にね」
「あはははっ! それはもっと面白いことになりそうだ!」
「対応は生天目くんがすると思うけど……。アズマくんたちは大丈夫かしら」
クリオネはそれに答えず、じっと画面を見つめながら手を動かしていた。やがて仕事を終えたのかPCをパタンと閉じ、大切そうに抱えてその場を離れる。
どうやらまたPCを隠しに行ったようだ。
「実はオレさ、アズマクンにはさぁ、予定してた時間よりもここから早めに立ち去ってもらったんだ」
戻って来るなり、ポツリとそう呟いたクリオネ。
「助かったわね。喜美所長に協力する警視庁の人間なんかとかち合ってしまったら、面倒になるから……」
「じゃなくて!」
クリオネはイオリの言葉を否定して真顔になった。
いつも読んでいただきありがとうございます(*´∇`*)
勢いついて書いてしまったので、この後もう一話投稿させていただきたいと思います……笑
(ほんと、不定期で申し訳ありません……っ!!)
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします!!




