第107話 deus ex machina
ご都合主義は嫌いですか?
また投稿させていただきました!
暇な時に読んでいただけたら嬉しいです♪
よろしくお願いします^ ^
確かに言われてみれば、そんな気もする。
「ねぇ、あの人にGPSは持たされてなかった? ワタシ持たされてたんだけど、ここへ来る間に落としちゃったみたいで……」
GPS、そうか!
マオはハッとなった。
仮眠室のベットの下に落ちていた、ヤヨイのGPS。
あれをクリオネに持たされていたのだ。
自分の上着のポケットを探ると、指先ほどの黒い球体が出てきた。
「あっ、それ! ワタシが持ってたのと同じ。ビジネスホテルみたいな部屋で目が覚めてからあのメールを送って、その後ナバタメに見つかりそうになって……。寝たフリしてやり過ごそうとしたの。でもそこからがよく覚えてなくて……」
しばらくこの薄暗い中にいたからか、ヤヨイは目が慣れているようだ。
マオのポケットから出てきた球体を見つめるなり、彼女が驚きの声をあげる。
「仮眠室に落ちてたGPSです。ヤヨイさんが使ってたものをクリオネさんが見つけて私に渡してきました。おそらく仮眠室でナバタメにGPSを外されて、ヤヨイさんはここへ来たんだと思います」
ヤヨイが寝たフリをした後のことをよく覚えていないのは、処理場へ連れて行かれる前に薬か何かで眠らされたから。
…………運びやすくするために。
マオは自分がクリオネにされたことを思い出し、顔が赤くなった。無意識のうちにそれを誤魔化そうとしたのか、唇に指が触れ、そして全く誤魔化せていないことに気がつく。
「やっぱりあの部屋で無くなってたんだ。無くしたことに気がついた時、ワタシはもうこの鉄格子の中に居たんだけどね……。でも、これであの人の考えてることが分かったかも!」
「クリオネさんは何をしようと……?」
声のトーンを低く、そしてヤヨイははっきりと言った。
「やっぱりワタシたちを助けようとしてくれてる。あの人のやり方は敵も味方もみんな欺いて、状況をメチャクチャに壊してしまう。だから分かりづらいんだけど、多分きっとそうよ」
本当にクリオネを信用して良いのかどうか。
でも解決策がない以上、クリオネを信じているヤヨイを信じるしかない。
そう思ってマオは大人しくその場に座り込んだが、頭の中ではぼんやりと脱出の方法を考えていたのだった。
――――同じ頃。
「やっと連絡が来たか」
ユキトは自分の携帯画面を見てそう呟く。
時刻は午後11時、だいぶ待たされた。
ユーゼンの入り口に向かい歩いていると、ユキトの携帯画面には通知がまたひとつと増えてゆく。
ユキトはそれを気にしつつも、入り口に立っている守衛に声をかけた。
「搬入の下見と打ち合わせに来た。通してくれ」
ユキトの言葉を聞いた守衛ふたりは顔を見合わせる。
「搬入? ああ、もしかして例の件で……?」
「そうだ」
ひとりは何かピンと来たようで、ユキトに向かって大きく頷く。ユキトもそれに応えるように軽く頷いた。
「事前に渡していた簡易入館証はお持ちですか? 関係者全員に送ってあるはずですが」
「これのことか?」
携帯電話を取り出し、開いた画面をそのまま守衛に見せるユキト。
「入館証を確認しました。どうぞ」
もうひとりの守衛が、何台も並んでいる改札機のような機械の方へ動き出す。
守衛は一番端に置かれている機械のバーを上げ、ユキトに敬礼をした。
「助かった」
ユキトは軽く手を挙げると正面から堂々、しかもあっさりとユーゼンに入っていった。
入り口を抜けてから、再び通知を確認するユキト。
ユキトの携帯画面には、ユーゼンのEフロアまで詳細に描かれている図面が表示されていた。
その中で一箇所だけ、赤い丸印がずっと点滅を繰り返している場所があるのだ。
「ここにいるのか……? ヤヨイは」
無線通信機に向かってユキトは囁く。
しかし、誰からも答えが返ってくることは無かった。
「おい、お前は一体何を考えてる。これだけじゃ状況が何も分からん!」
ユキトは建物の中へと入ってゆく。
「クリオネ!!」
さらに問いかけを続けてみると、応答の代わりに返ってきたのはまたメール。
『3349』
至って簡素な四桁の数字のみ。
内容はたったこれだけであった。
遡ること2時間前――――。
「昔からお姫様を助けるのは王子様たちの役割だ。ね、そうでしょう?」
「それはどういう意味?」
クリオネの掴みどころのない言葉に、イオリは翻弄されていた。
うつ伏せで倒れたまま動かずにいるアズマの元へ、クリオネが近づいてゆく。
「おーい! そろそろ起き上がれそうかな」
彼はアズマの頭をツンツン指で押したり、髪を引っ張ったりし始めるのだ。
それを見ていたイオリの目には驚きの色が浮かぶ。
「うっ……、うぅ……」
クリオネがアズマの身体を軽く揺さぶると、とうとう情けないうめき声が発せられた。
「ほら、王子様。頑張って立って。お姫様を迎えに行かなくちゃ」
「アズマくん……、生きて……る!?」
呆然とするイオリに向かって、クリオネは冷静に言い放つ。
「当たり前でしょ。オレが撃ったのはただのゴム弾。さすがに殺さないよ、人なんて。とは言え、当たりどころが悪ければ死ぬことだってある。威力はプロボクサーのパンチ並みにはあるからね」
「あり得ない! よくこんな危険な真似をしてくれたわね。一歩間違えたら本当に死んでたかもしれないのよ!?」
「……全く…………、ですよ」
撃たれた腹を庇いながらアズマがゆっくりと起き上がった。
「おはよう。大丈夫さ。ちゃんと気絶だけで済むように狙う場所や角度、撃つ距離もみっちり教え込まれた。嘘だと思うならもう一発、受けてみる? 多分、次も気絶するだけで済むと思うけど」
ニヤニヤと笑いアズマに問いかけたクリオネ。
アズマはその言葉を聞くと引き攣った表情になり、クリオネから目を逸らした。
「いいえっ……、もう結構……です!」
肩で息をして痛みに耐えるアズマの様子を楽しそうに眺めていたクリオネだったが、不意に真顔になる。
「さて、ここからが真面目な話だ。オレにはまだ仕事が残ってる。所長サンが戻るまでにオレが作った死体の片付けをしないといけない。キミがうつ伏せで倒れてくれたのはファインプレーだったよ」
クリオネは今までアズマの下に隠れていたゴム弾を拾い上げた。
「所長サンはキミが死んだと思ってるんだ。だからここに居られちゃオレが困る。意味分かるよね?」
「状況はなんとなく、理解……しました。それで……僕は、何をすれば?」
「この下でユキトくんを待たせてる。彼と合流して処理場へ向かってほしい。助けたいんでしょ、マオちゃんを」
アズマは自嘲気味に笑った。
「なるほど……。カイ所長とヤヨイさんが調べていた計画のこと……。引き継いでいたのはマオさんだけじゃ……なかったのか。……やっぱり内通者なんて、僕には向いてませんね」
「キミは優しすぎるから」
クリオネもどこか、自嘲気味に笑い返した。
「ねぇ、それよりもどうするの。仲間がもうひとり居たところで、ユーゼンに入るのは無理よ。社員証か入館証が無ければ……そもそも、こんな時間から部外者が立ち入るなんて怪しまれるんじゃないかしら?」
イオリはクリオネの考えていることが少しずつ分かってきたようで、徐々に協力的な態度を示す。
「いいや、それは大した問題じゃない。オレに考えがあるんだ。でもユキトくんがユーゼンに入った後は……イオリサン、キミの持つ情報が必要になるかもねぇ?」
これはマオが処理場に運ばれ、喜美が屋上に戻ってくるまでの、ほんの僅かな間に起きた出来事だ。
いつも読んでいただきありがとうございますっ(*´꒳`*)
一度やってみたかった展開……っ!!
お付き合い頂き感謝です!!!!
クリオネを好きなように動かしてたら完全に自己満足の世界に入ってしまいました笑
ぜひ彼の考えに最後までお付き合い頂けたら嬉しいです……。
では、また続きを書いてきます!!




