第103話 Quod Erat Demonstrandum
こんばんは^ ^
なんとかクリスマス前に投稿できました!
また暇な時に読んでいただけたら嬉しいです♪
よろしくお願いします!!
「やはり本当だったか。まさか失敗作をここに連れて来ていたとはな」
イオリ、アズマ、そしてマオを鋭い眼光が射抜く。
屋上へやって来たのは他でもない。
あの記憶の中で散々見てきた喜美本人だと、マオはすぐに理解した。
イオリとアズマの顔がさっと青ざめてゆく。
どうしてここに喜美所長が……?
3人は心の中で同じことを考えた。
白衣を風にはためかせながら、淡々とこちらへ歩いてくる喜美。
やがてその足はマオの目の前で止まった。彼はマオをじっと見つめるなりこう言ったのだ。
「初めまして、駒井さん。いや、久しぶりと言うべきか。未光さん……それとも今は『マオ』と呼ばれているのかな。全く、誰かに似ていると思えばそういうことだったとは……」
感じたのは威圧感。
喜美と初めて対面したマオはその雰囲気に圧倒される。
今のマオはコマイリサの姿ではない。
この場で喜美がなぜコマイリサの名前を出したのか、マオはパニックを起こしそうになった。
この人が……カイ所長や真央の力を求め、イオリとアズマを操ってまでエヴァンディール計画を進めてきた人物。
ユーゼンの所長。同じ所長でもカイ所長とは雰囲気が違う。
喜美はそんなマオの表情を見て、何を思ったのか途端に笑い出した。
「本当によく考えられたものだな。これではまるであの時の再現だ。ご丁寧に役者まで揃っている。わざわざあれと東くんを屋上へ呼んでそんなことがしたかったわけじゃない。そうだろう、水乃くん?」
「なぜ……それを……っ!」
イオリの身体が微かに震える。
「君たちは、エヴァンディール計画の邪魔をしようとしているのか? それとも協力する為にここへ集まったのか? 果たしてどちらなんだろうな……」
それまで怪しい笑みを浮かべていた喜美は、急に険しい顔でイオリを睨みつけた。
「水乃くん、私に黙ってプロテクトを解除しようとしただろう。失敗作をユーゼンに戻したのはやはり君か。何を考えている!」
イオリは喜美の刺すような視線から目を逸らし、ボソボソと呟く。
「違う、私は何も知らない。それにマオは……失敗作なんかじゃありません! 彼女とは同じじゃなかっただけで……」
「同じじゃない、か。ならそれは失敗作だ。私は君に言ったはず。天才を作れと。例え天才の脳を入れて作った人形だとしても、この人形に誰もが驚く独創的な発想なんてできやしなかった。君が作った作品はプロテクトのせいでなんの役にも立たなかった。違うか?」
「失敗作…………」
マオにとって受け入れがたい言葉であった。
「ダメよ、マオっ! 喜美所長の言うことを聞かないで……っ!」
イオリはマオに向かって絞り出すように声をあげる。
そういえば元々ユーゼンで作られた自分がなぜキーラボに来たのか、イオリからまだ聞いていない。
イオリはその部分だけを綺麗に隠して、『真央』のことを話してくれたのではないか。
自分が失敗作だったから……。
喜美はイオリを鼻で笑った。
「まさに作品にでも情が湧くタイプの人間、か。見ていて滑稽だよ。水乃くん、しっかりしなさい。私たちの目的はプロテクトの解除。新人類の脳を作るのに必要だと君も理解してるはずだ」
「ええ。勿論、理解……しています」
「ならあの天才と『マオ』、どちらを優先させるべきだろうか。私たちは解除を試すため『マオ』をユーゼンから手放し、人間ごっこをさせていただけだ。だが……未だ天才は眠ったまま。それどころかネズミとなって、ユーゼンをかじりにやって来た」
腕を組み目を閉じ、ため息混じりに喜美はそう吐き捨てる。
「……マオをどうするつもりですか?」
「そうだな。この際だ、別の方法を試してみよう。『マオ』を解体して脳を取り出す。やはり半分だけの脳では出来ることに限界があるだろう。トレースバースを解析するのに保管していたもう半分と繋げて、脳を身体に入れ直せば何か反応が起こるかもしれない。ちょうど良い機会だ」
それを聞いたアズマは血相を変えて喜美に詰め寄る。
「喜美所長……っ! 本気ですか!? 考え直してください、そんなことをすればマオさんは…………!!」
「あぁ、『マオ』として存在できるのはここまでということになる。こんなでも少しは利用できると思っていたんだが……手間をかけた割には非常に残念な結果だった」
アズマに動じることなく、反対にアズマを睨みつける喜美。
「君たち3人の関係はこれでもう終わりだ。仲間想いな君たちへの最期に相応しい役者を、私から用意させてもらったよ。さぁ、来なさい」
喜美の言葉の後、開け放たれた扉の向こうから足音が聞こえた。
「所長サン、人使い荒いねぇー。別にいいけどさ」
聞き覚えのある声にマオは愕然とする。
間違いない、この声は……。
軽い調子でそこに現れた人物はクリオネだったのだ。
「クリオネさん……!? どうして……」
「ごめんね。新しいクライアントができちゃってさ、ヤヨイサンよりもずっと報酬が良かったんだ。悪く思わないでね」
悪びれた様子もなく、彼は無慈悲にそう告げる。
「情報屋。依頼はもう済んだのか?」
喜美がクリオネに向かって問いかけた。
「もちろん。管理会社にあったデータは全て削除した。それにしてもここの元幹部さん、女性の部屋に不法侵入して私物を奪っていくなんて……随分と大胆だよねぇ?」
「無駄口は結構。まだ他にも依頼がある。報酬分、しっかりと働いて貰わなければな」
「えぇー、堅いなぁ。自分が命令してそこにいる彼を動かしてたくせに。まぁ、いいか。それがクライアントの要望なら」
少しだけ不服そうに頭を掻くクリオネ。
手首に刻まれた十字の刺青が袖から見え隠れしている。
「というわけだ、マオちゃん。このクライアントはエヴァンディール計画を邪魔する君たちの情報が欲しいってさ。オレは頂いた報酬分、こっち側でしっかりと仕事することにしたよ」
余裕たっぷりの笑みを浮かべたクリオネは、マオたちとここで対峙した。
いつも読んでいただきありがとうございます( ´ ▽ ` )
恐るべし、喜美!!
一足早いですがメリークリスマス!!
皆様、良いクリスマスをお過ごしください。
明日のためにシチューを作りながらの投稿、失礼しました笑(わが家のクリスマス定番メニュー)
ではまたまた続きを書いてきたいと思います♪




