第101話 馬鹿みたい……。
おはようございます^ ^
続き、書いてきました……。
『マオ』『真央』に注目して読んでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願い致します♪
アズマはため息をつき、諦めたように力なく笑う。
「真央さんにもイオリにもここまで来てしまったら、もう隠し通してはおけませんね。僕が本当のことを言わなかった理由は他にもうひとつあるんです」
「理由……?」
マオが先を促すと、アズマはイオリの方へ視線を向けた。
「あの日……喜美所長は全てを目の前で見ていました。イオリのいた場所から僕たちがよく見えなかったことも、真央さんが飛び降りたことも全部分かっていたんだ。分かっていて僕が突き飛ばしたと言ったんです」
過去の出来事を思い出してか、アズマの顔が辛そうに歪む。悲痛な表情を浮かべるアズマから初めて真実を聞かされ、イオリは大きく目が泳いだ。
「真央が飛び降りた……!? そんなっ……ならあれは嘘だったの? あの時、私にはあなたと真央が重なって見えていた。だけど突然、あなたの背中しか見えなくなって……喜美所長の声を聞いたわ。あなたが突き飛ばしたのだと。私もずっとそう思ってた。だって……後であなたに訳を聞いても何も答えなかったじゃない!」
イオリが声を荒げる。
まるで今まで押し殺していた感情を吐き出すように。
「喜美所長は僕に『これは事故だった』と言った。ナバタメに真央さんの遺体を処理させるから、あの日の真実は誰にも……イオリにも話さないようにと。きっと話していたらその時点でイオリもナバタメに消されていた……。だから話さなかったんです」
目を閉じて眉間に皺を寄せるアズマ。
アズマ見てイオリは明らかに動揺していた。
「なによそれ。それじゃあ私たちは……脅されて、良いように利用されて……。逃げ出すわけでもなく、ただお互いを救うためだけに喜美所長に協力していたってこと? そんなの馬鹿みたいじゃない!!」
「復讐という目的を聞いてしまった僕たちは喜美所長にとって扱いづらい存在だったんでしょう。そして彼は僕たちを殺すのではなく、利用することを選んだ」
「……喜美所長は上手く私たちを仲違いさせたのね。アズマくんが真央を突き飛ばしたことにして、私があなたたちを裏切って喜美所長に協力していると見せかけた。そうすれば私たちを分断して、簡単に操ることができると考えたのよ」
イオリの言葉にアズマはゆっくり頷いた。
「僕はその後、何故か幹部という役職を与えられました。本当に名ばかりの、短い期間の役職でしたけどね。今思えばイオリを不安にさせるのにはそれで充分だった」
「そうね、あれには驚いたわ。結局あなたがいなくなった後、幹部の席に収まってしまったのは私の方だったけれど。だからアズマくんにも何かやむを得ない事情がある、そう思って信じることにした。でも……やっぱり怖かった」
「怖い……? 僕が?」
「そうよ。だってそうでしょう? 真央が突き飛ばされたのが無かったことになってるのよ。あなたはそれをもみ消してから突然、幹部にまでなってユーゼンにいる。私の知らないところであなたが変わってしまったんじゃないかと思った」
イオリはこのせいでアズマに不信感を抱いてしまったのだろう。ふたりのやり取りを聞き、マオの中には静かに怒りと憎しみの感情が湧き上がる。
「ひどい……。喜美所長がふたりを利用するためにしたことは……許されることじゃない」
それは普段、『マオ』として感じたことのない感情だった。自分はまだ『マオ』でいて良いのだろうか。それともこれからは『真央』として振る舞うべきなのだろうか。
分からない。
本来、体験するはずのなかった感情と記憶がマオを蝕んでゆく。
イオリはその『マオ』の感情には気づいておらず、アズマに向けポツリと呟いた。
「本当は心のどこかで思ってた。アズマくんはもう、私を信頼してないんじゃないかって。喜美所長に命じられるまま真央の代わりを作り、挙句の果てトレースバースの解析と再現まで手伝ってしまった。彼女が守ろうとしていたものを、この私が全て壊してしまったんだから……」
「確かに僕は……ずっとあなたのことを卑怯だと思っていました。エヴァンディール計画に加担するあなたが、何を考えているのか正直分からなかった……。もしかすると本当は喜美所長と同じく真央さんの死やトレースバースを、都合良く利用したいだけなんじゃないかと」
アズマは首を横に振る。
「でも違った。あなたは僕を守るためにずっと罪悪感と闘っていたんだ。そして今も……自分の部下やウシオを守るために闘っている。そうなんでしょう?」
アズマからの問いかけにイオリは寂しそうに笑う。
「それが彼女との約束だものね」
それを聞いたマオははっとした。
『もしもこれから先、トレースバースや私の研究で不幸な目に遭う人がいたら……助けてあげてください』
研究室で『真央』がイオリに向けて放った言葉。
イオリはその約束をずっと守ろうとしているのだ。
だがその言葉は枷となり、イオリを苦しめていたのかもしれない。
マオは立ち上がり、イオリの肩を静かに抱きしめる。
「イオリさん、ごめんなさい。今までずっとひとりで闘わせてしまいましたよね。私はずっと、こんなにもイオリさんの近くにいたはずなのに」
「真央……」
驚いて目を丸くするイオリ。
『マオ』はこの時、『真央』として振る舞うことを選んだ。
ふたりの苦しみを少しでも理解したい、取り除いてあげたい。でもそれは、『マオ』には出来ないことだったからだ。
イオリはマオの身体にそっと手を回す。
「あなただって、辛かったでしょうに」
その言葉はどちらへ向けられたものかは分からない。
それでも『マオ』の方であってほしいと、そう思わずにはいられない自分もいて……。
「真央、さん……」
マオの行動にアズマが驚きつつも、どこか懐かしさを感じているように思える。
それではっきりと確信した。そうか、やっぱりふたりは『マオ』ではなくその中に映る『真央』を求めているのだと。
イオリの肩から手を離したマオはアズマへと向き直る。
「アズマくん。私やイオリさんをずっと守ってくれてありがとう。私が死んでからのこと、もっと詳しく聞かせて。ふたりがどんな風に過ごしてきたのか知りたいの」
アズマとイオリは遠慮がちに顔を見合わせた。
無理もない。
喜美はお互いの身の安全を人質に取り、アズマとイオリを思うように動かしていた。そのせいでふたりはずっとお互いを誤解したまま過ごしてきたのだから。
気まずい雰囲気がその場に漂う中、先に口を開いのはアズマであった。
「真央さんの死後、遺体は事故としてナバタメに処理され、その脳の一部がイオリの手に渡りました」
名前を出されたイオリもその話を渋々と繋いでゆく。
「半分は喜美所長がEフロアで保管し、もう半分はマオの頭の中にある。でも……どちらにもプロテクトは掛かったままだった。喜美所長はこのプロテクトを解除したがってる。オリジナルのトレースバースや、真央の知識をエヴァンディール計画に使おうとしているから」
「オリジナルのトレースバース?」
マオが尋ねるとイオリは言いにくそうに答えた。
「今ユーゼンで使っているトレースバースは……あなたが作ったものじゃない。保管されてるあなたの脳や思考パターンを調べ尽くし、喜美所長が独自に研究を重ねて出来上がったものなのよ。私はそれに協力してしまった。本当に馬鹿みたいなことをしたわ……」
つくづく喜美の執念には驚かされてばかりだ。
エヴァンディール計画を、喜美の復讐を絶対に止めなければならない。例え自分が望まれていない存在だったとしても、それが自分の作られた意味だと思うしかない。
『真央』の願いを記憶と共に引き継いだ『マオ』はこの先、自分を押し殺し喜美と立ち向かうことを覚悟した。
いつも読んでいただきありがとうございます( ;∀;)
最近、マオ寄りの視点で地の文が続いている気がする……。マオが『マオ』と『真央』で分けて考えてほしいと訴えてるのかもしれませんね笑
私もかなりの変態気質で、文字で表現できることはなんでもしてしまえーの癖が……っ!! w w w
『マオ』はキーラボのマオ、『真央』はユーゼンの時の真央、真央は両方でどっちかはマオもわかっていないみたいに考えていただけたら救われます……。読みづらく申し訳ありません!!
また続きを書いてきます。ウフフ:;(∩´﹏`∩);:→変態のかお笑




