第1話 誕生!? 便利屋ロボット
こんにちは( ´ ▽ ` )
初めての投稿で至らない点も多いかと思いますが、一生懸命頑張りますのでぜひ読んで頂けたら嬉しいです!
「さて、次のニュースです。
世界的パンデミックの終息後から不況の煽りを受け続けてきた各国では今、新たな事業が注目され始めています」
出来立ての熱いコーヒーをコポコポとカップに注いで、ソファに腰掛ける。マオはコーヒーを一口飲み、テレビの四角い画面の中で起こっている出来事を鼻で笑った。
「いやぁ、これは斬新ですねぇ。
今まで人の脳が出す電気信号で動く義手や義足なんてのはありましたが……。まさか脳の電気信号で動くロボットそのものが作られるようになるとは、科学の発展とも言えるでしょう」
頭に電極がついた輪をはめた若い男性リポーターが、屋内で自分のスマホ画面を真剣にカメラに向けて見せながらコメントをしている。
スマホ画面にはこことは違う、外の街の景色が映し出されていた。
屋内で撮影している場所がはっきりとはわからないが、おそらく隣街の建物だろう。
「えー、このように数十キロ以上離れた場所でも、頭でイメージするだけでロボットは完璧に動きを再現してくれます。そしてこのスマホをご覧下さい。ロボットの目はカメラのレンズを搭載しています。まるで自分で陸地を這う大きなドローンを操作して動画撮影しているといった感覚です。ボクは今、スマホのアプリをこのロボットと連動させロボットの目に映る景色をスマホでリアルタイムで確認しています! そしてロボットの口にはなんと、特殊なスピーカーがついています! こちらもスマホのアプリと連動させ、マイク機能を使うことで、自分の声をロボットの口から出すことができるんですね。まるで自分の体がもう一つ、そこにあるかのように自在に動かすことができるのです。その例がこちら! では、今度はこちらの映像をご覧ください」
リポーターの声に合わせてテレビの画面が切り替わった。
画面には人通りの多い商店街が映し出される。
撮影の為か両脇に避けていた通行人の好奇な視線に晒されながら、道の真ん中を歩くロボットがいた。
美容師がカットの練習台に使うマネキンのような頭。ご丁寧にリポーターと同じ紺のスーツを着せられ、肌色に塗装された金属の塊がまるで人間のような仕草で歩いているのだ。
このご時世、多少なりとも高度なロボットやAIの理解を得られる世の中になった。
ただ、世間ではまだそれが携帯電話のように当たり前に身近にある環境ではない。
群衆の好奇な視線も無理はないだろう。
「こんにちは!」
その中に、元気な声でにこにこと挨拶をしてロボットに手を振る女の子がいた。
「こら。テレビの撮影の邪魔しちゃダメでしょう?」
母親に嗜められるも女の子は手を振るのをやめない。
リポーターの操作するロボットは女の子のそばまで来ると、歩みを止めた。そして女の子の方を向き、スムーズに手を振り返す。
「コンニチハ!」
ロボットの口部分に付いているスピーカーから聞こえたリポーターの声に女の子は大はしゃぎだ。
「すごーい!! ロボットが喋った!!」
この仕組みを知ってか、知らずか……。
子供は単純だなぁと、マオはつくづく思う。
気がつけば画面は先程の屋内の男性リポーターへと切り替わっていた。
今度はしっかりカメラ目線で、整った黒髪をかき分けながらコメントをするつもりなのだ。
「はい!! 今、ボクが操作したロボットが地域の方と触れ合っている映像を見てもらいました。これは脳が正常に動いているのに身体が思うように動かない方、ご高齢で足が悪い方などにとっては本当にいい相棒となってくれることでしょう! 例えば自分が買い物に行けない時、外に出たくても出られない時なんてのは特にね、いいと思いますよ! ロボットを通して自分の目で見て、人と対話し大きな刺激を得ること。それは今までの不可能を可能にしてくれる夢のような事業です。既にヨーロッパ諸国では少しずつ導入され始めている今日この頃!! この国でもまもなく商品化される予定です。テレビの前の皆さんもぜひ、不可能にチャレンジしてみませんか!? 以上、リポーターのウシオがお伝え致しました!」
テレビ画面のテロップに番組内で使ったロボットやアプリの名前が映し出される。
最後にロボット開発メーカーの社名が出てきた時、マオの顔は僅かに曇った。
U-zen株式会社か――――――
「ほんっとくだらない……」
吐き捨てるようにマオは呟く。
「あら、素敵なことじゃない? 寒空の中、わざわざお買い物なんて行きたくないもの。行きたくても行けない人だっているだろうし……。そういう人の為に一役買ってくれるありがたいロボットを作ったわけでしょう。ワタシはそういうの好きよ」
「俺は反対だ。お前みたいなズボラーがこれ以上増えてたまるか! ましてや、そんな奴らのロボットがうじゃうじゃと商店街を歩くのを想像してみろ。ぶん殴りたくなる!!」
ロボットを肯定した女性が今日も大人の色気たっぷりとヒールの音を立てて休憩室へと入ってくる。
その後ろを早口で否定しながら、追いかけるボサボサ髪の男性もズカズカと後へ続いて入ってきた。
「ヤヨイさんと、ユキトさん。
また何かあったんですか?」
いつものことなのだが明らかに不機嫌なユキトを見て、一応マオは尋ねてみる。
「こいつが! またゴミクズ拾ってきやがるから研究室がゴミだらけだ!! とうとう俺のデスクにまで侵食してきやがった。もう俺には手がつけられん。おい、そうだ。おまえ! 早くなんとかしろ!!」
「え、私ですか? そんな、なんとかと言われても……。あ!だからここ、禁煙ですってば!!」
場所、お構いなしと言わんばかりにタバコに火をつけようとするユキトをマオは全力で制止してテーブルにあった灰皿を取り上げる。
ユキトは舌打ちするも、素直にタバコをしまった。
灰皿があるのに。
とぼやいていた事は聞かなかったことにしよう。
「まぁ、落ち着きなさいユキト。マオちゃん、タバコ臭いの嫌がってるんだから。ここは実質禁煙みたいなものよ。それにしてもゴミクズだなんて随分な言いようじゃない。どれも大切な研究材料なのにねぇ。ちょっと置かせてもらってるだけだから! 後ですぐに片付けるわ」
「いったいお前の『すぐ』は『何年後』だ! 俺が言わないと片付けられないくせに。いいか、今日中には片付けろよ。絶対だぞ!!」
ユキトはそう言い残してタバコを咥えながら立ち去った。
読んでくださりありがとうございました。
また次回の更新もよろしくお願いします♪
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