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魔王を倒した後の勇者は大罪人
「パリン、パリン」
ああ、壺の割れる音か。
「キュイーン、バタン」
クローゼットを開けたのか。
ある者は黙って人の家に押し入り無言で家にある壺や水瓶、クローゼットなど隅々まで
漁って出て行った。
私たちは、王国のお触れに従って何も言わなかった。
「世界のすべての人々は、勇者に全てを差し出し助けたまえ。何があってもにこやかに
勇者の役に立て」
この魔物達に侵攻されている世界を王国軍だけでは対処できず王は
予言に従って勇者と呼ばれる者を見つけわずかばかりの金と王国全土の宝箱や国民の家の物を
自由に奪っていい権利を与える代わりに魔王の討伐を命じた。
この王国の運命を託された『勇者アステラ』は勇者というだけあって
みんなに優しく平等で気のいいやつだった。
王国から使者がきて予言の勇者だと言われ世界のために
魔王を倒してくれと言われた時も一つ返事で了解していた。
「じゃあちょっと行ってくるよ」
そう私にいうと軍の馬車に乗り王国に向かった。
手を振る私たちをよそにその瞳は前だけを見つめていた。
「アステラ。きっとお前ならこの世界を救ってくれる。」
そう呟き私は家へと戻った。