俺の家族2
屋敷の近くには母さんが育てている花々が咲き誇り、美しくも色とりどりの花が並んでいる。
一応は地面に下ろしてもらってから周囲にある花を邪魔しないように進んでいくと、広い訓練場の広場に到着する。
そこには俺が狩ったモンスターの屍が纏め上げて、近くには庭師の爺ちゃんが繁々と状態を確認している素振りで観察しているようだった。
うん...やはり僅かばかり、爺ちゃんの周囲がピリピリしているのがわかるぞ。
ゴクリと唾を飲み込みつつ、アーシャ兄様と並んで爺ちゃんの場所へ進みながら俺は気持ちを落ち着かせていた。
出ないと...これからくるであろう爺ちゃんの説教が俺を待っているからだ。
ビクビクして一緒に近づくなり軽い口調で爺ちゃんに話しかけてるではないか、勇気あるなあーーアーシャ兄様は。
ぼんやりと思考回路の中にいたらアーシャ兄様と爺ちゃんの会話を聞きそこなってしまう。
「...まあ、そう言う理由だから...大目に見てくれ。」
「はあ〜別にいいんです。コロク坊ちゃんが毎日の訓練の末に...ついでにこのようなモンスターを倒したんでしょうから、努力の成果...ですしね。」
「そう...だな。」
およ、アーシャ兄様のフォローで話しの流れ的に許されてる流れになってる? ラッキー。
「これ...許されてる流れ...かな?」
ついボソッと口から漏れ、げ! やば!! と口を塞ぐも後の祭りって言葉が相応しいほどにアーシャ兄様と爺ちゃんがじと目と呆れた眼差しで見てくるじゃんか。
......これ、流れ的にお説教パート2?
うわーそれはそれで嫌だなあ〜。
「...許す、許さないの判断ではなくてのう。モンスターを観察して見とったらコロク坊ちゃんの剣技が鋭くなってきちょる気がするんじゃ。」
「ああー俺もそれは思ったな。普通なら素材になり得る場所を傷つけずに血抜きも完璧で、ここまでの見事な切り口だしな。」
「えっと、そう! 冒険者初心の心得の本に素材が大事と書かれてさ。領地も素材不足って言ってたじゃん...だから。
苦し紛れかと思うけれど。誤魔化しておかないと俺のこと大事にしている兄貴に心配させたくないしね。
まあ実際は遊んでる最中に冒険者と出会って、素材が綺麗だと冒険者ギルドでの買取りも良いし、それを元手に運営の資金にもなるってオジサンに教えて貰ったんだよな。
なら良いやと軽い気持ちでモンスターに挑んだら、俺が背が低いしちっこいからって、モンスターからは弱いと思われたのか襲ってきたんだよなー。
あれは思い出しても酷かった。
ちょっと遠い目になってたら...俺の頭をぐりぐりと撫でくりまわされる。
何すんだよ! とアーシャ兄様に抗議して見ると微笑ましげな表情を向けてくる。
...何故に?
「ハハハ、やっぱり弟は良い子だと思わないか...ルアフ。」
「....そうですな。自分の事を優先しそうなモノじゃのに、良いお子様を旦那様はお持ちになったものじゃて。」
いやいやーただの偶然だから。
領地に役立てば一石二鳥だと思っただけですぜ...。
2人してどっこいと上げてくる称賛にむず痒くなってきて、俺はそれから逃げる為に話題を逸らす。
モンスターを此処に置きっぱなしにしていたことへの謝罪と時間的に遅いこともあってモンスターをどうするかの対処方法を話していくと、イチイチ褒めてくるので、いい加減イラっとし。
褒めとる暇あるなら、さっさと動け! と叱っていた。
あれ? なんで俺が指揮ってんだ?
そう我に返った頃には...爺ちゃんがモンスターを移動用の荷台に運び終えて連れて行くようだった。
アーシャ兄様が爺ちゃんを手を振って見送るのを見て...ハッとなり、アーシャ兄様に自分の指示は正しかったのか確認すると頷いてくれた。
爺ちゃんからは俺の手柄にすると、何処で何をやってしたかなど詳しくギルマスに説明するのが大変なことや。
これまでの持っていったモンスターのこともあってギルマスは薄々は俺の存在は勘づいている可能性があるらしい。
だが爺ちゃん的にもアーシャ兄様的にも俺を自由に動ける今を大事にしてほしいと思いもあって、極秘でどうにかギルマスと話し合ってどうにかしてくれることを教えてもらった。
ふむ、なんだか気を遣わせた気分にもなったけれど、そのほうが今後も助かるので黙っておいた。
****
アーシャ兄様は少し仕事まで時間が空いてるようで、久しぶりに戦術書のことや街での様子。
今の領地に必要な事柄などを応接室で話してた。父さんの話しはまだ仕事が滞り待っておくことになったからだ。
アーシャ兄様より2つ下のロリウス兄様が穏やかな表情で話しの間に入ってきた。
「まーた2人して難しいこと話しるし、領地のこともいいけどさ。ここはせっかく兄弟みずいらずなんだし、楽しいこと話そうよ〜〜。」
「楽しいこと話しているつもりだぞ、な! コロク。」
「うんうん。戦術書は護身用だし、領地は今後...辺境であれでダンジョンとか資金不足に人々の人件費などもあるんだよ。それに領地は人あってこその貴族、のらりくらりとしていいのは堕落て同等。ロリウス兄様はそのことに対して反論があると?」
ズイズイとロリウス兄様にニッコリと笑顔で言ってやれば、右往左往とオロオロしグウの音もでないようだった。
「ははは、弟に負けてやんの!」
「うーー弟に言い負かされたー。ちょっと悔しいけど...その通りなんだよな〜。でもさあ〜せっかく母上が焼いたお菓子あるのに、冷める前に食いたくないか?」
後ろに隠してたようで、ほいっとテーブルに乗せてくれた。
母上のお手製のケーキとクッキーに俺とアーシャ兄様は生唾を飲む。
どおりで甘い匂いが花々をくすぐると思ってたんだ。
母上は貴族に嫁ぐ前は菓子職人が負けを認める程の料理人だったらしい。普段であれば貴族であれど料理人が作るのだが、母上は父が自由をさせているのもありイキイキと料理にせいをだしている。
だからなのか料理や菓子を伝授してほしいと時おり教えてたりすることもあった。
プロの料理人だぜ。
俺も5歳近かった頃、母上に何故とか、どうしてとか疑問が沸いてたのもあって、料理をしている姿が輝いて見えて。
俺も俺もーって手伝わせてもらったっけなあーー。
まあ、その頃のことは今は語るまい。
何故なら今は母上にケーキをどう分担して分けるか我々の勝負は始まっているのだから。
ホールにある360°の円柱を分ける必要がある。
どうせ父さんも匂いを嗅ぎつけて来るのも考えると四等分として、十字に切り分けるのが妥当と言える。
「...って! 人が切り分け考えてるのに...!! 勝手に切り分けるなよ!」
「言っただろ〜温かいうちにって! どうせ父上も犬の鼻を持ってるかのように来るんだした切り分けておかないと独占するぞーきっと。」
「ロリウスの言う通りだな、コロクもあまりものなど嫌だろ?」
「うん、父上の母上愛と料理への並ならぬ愛情は酷いもんな〜。」
父の黒歴史を思うと遠い目になるが、いまは早くケーキとクッキーは自分達の分は切り分けておいた。