宇宙に大仏
その時だ。
ドガッ、グワングワン、グシャ、グワシャ、グワシャ、ガガガガガガガガガガガガーーーーーー!
思わず耳をふさぐほどの物凄い音がして床が傾いた。人工重力が切れたのか、一郎の体が浮き上がる。
「うわあああああああーーーーたたたたた! 終わた、終わた、終わったあああーーー!」
北斗神拳の継承者風に叫ぶ一郎の脇では、大福をくわえたタカヒロが胡坐をかいたまま斜めになって浮いている。その姿はさながら誰も見てない時にこっそりお供え物を食っている大仏様みたいで神々しい。と一瞬思った一郎だったがすぐに我に返った。おい、いまお茶出したばっかだろ、もう次食ってんのか!。
大きく傾いた床がゆっくりと元に戻ると、突然重力が戻った。一郎は腰から床にたたきつけられたが、タカヒロはさっきの恰好のまま着地して大福を食っている。尻のクション力がすごい。
部屋で待機しろと言われた一郎たちだったが、事ここに至ると部屋の外が気になる。廊下で足音がしたので、一郎がたまらずドアを開けると、走っていた田中山と目が合った、田中山は言った。
「ステーションのどっかが吹っ飛んだらしい! 連絡がないから、ちょっと行って確認してくる」
なんて頼もしいんだタマ、お前をクラス委員に選んでよかったよ、他の奴が。田中山は地域一番の進学校に入れる頭がありながら、校門の前に住んでいるというだけの理由でアダニョンに入った変態野郎である。おまけに顔も良いからよくモテる。一郎にとっては”精神的な天敵”のような男だ。
「ひって、らっひゃ~い」
妙な間を置いて後ろからタカヒロが言う。だからお前は食ってからしゃべれ!。