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なんと……

「鶴崎ぃ、それじゃあ水戸黄門みたいじゃない。それに私は”暫定”よ。ざ・ん・て・い!」


 淡島は大男の背中に強烈なスパイクを食らわせながらそう言った。


「実はね……」


 淡島の話はこうだ。


 地球に破片が降り注いだ後、地上は一時大混乱に陥った。連邦政府や加盟各国のリーダーがすべて地下深くのシェルターに逃げ込んでいて、地上には地位が低い二級市民しか残っていなかったからだ。


 二級市民で役所に残った人たちも救助や避難所の開設やらに手一杯で、この緊急事態を統括できる者は誰もいない。そんな中、連邦機関の職員で宇宙での事情を直接知っている淡島に、各国各方面からの問い合わせが殺到した。


 大気圏に舞い上がった塵は地上を日陰にし、当面の間、農業は難しくなるかもしれない。長引けば食料難が予想される……そう考えていた時、淡島は思いついた。


 上級市民が非難しているシェルターには短い所でも二年、政治家など特級市民用なら五年ほどは暮らせる備蓄がある。ならば彼らには当面そこにとどまってもらって、地上の資源は地上の人たちだけで使えばよいのではないか。


 思いついたらすぐ実行してしまうタイプの淡島は、ネットワークを使って各シェルターに「外は放射線に汚染されているかもしれないから、まだ出ないように」と伝えた。その上で各国には「シェルターが略奪にあうおそれがある」と嘘とも本当とも分からない理由をつけて、すべてのシェルターの出入口を厳重に封鎖させた。


「それからはもう簡単だったわ、あの人たちは全部置いて行ってくれたから」


 そう、社会に必要なものは地上にすべて揃っている。エネルギー源も、牛や豚も、農地も、そして……武器だって。


「今まで現場でそれを動かしていたのは私たち二級市民なんだから、上級市民の上司がいなくなっても何も困らないって事に気が付いたの。私たちが許可しなければ上級市民は地上に出られない。それをみんなに知らせたら、誰も彼らの指示には従わなかったわ。そこで彼らが穴倉に籠っている間に、私たちは地上に私たちの新しい世界を作る事にしたの」


「あの淡島さん、それってもしかして……クーデターってやつじゃ?」


 一郎が訊いた、淡島は精悍な表情で答えた。


「そう言う人もいるかもね、でも大事な事は一番必要な時に指導者たちが逃げたって事。自分で逃げたんだから、しばらくは大人しくしていてもらうわよ。地上は地上に残った私たちが立て直すの、私たち二級市民も暮らしやすい世界になってから、あの人たちには出て来てもらう。あの人たちだって刑務所よりはシェルターのほうが、きっと居心地がいいと思うわ」

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