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地球へ

 タカヒロの犠牲により、小惑星はぎりぎりのところで地球から逸れて行った。地上には破片が降り注ぎ多くの被害が出たが、シェルターに隠れた上級市民に被害はなく、地上の二級市民も八割は生き残れたと見込まれているらしい。


<佐藤さん、お待たせしました。迎えのシャトルがもうすぐそちらに到着しますので、皆さんにお伝えください>


 地上からの迎えが来たのは爆発から一週間近くも経ってからだった。爆発直後に号泣していた淡島はそれきり無線に出る事はなく、今は別の誰かが担当になっている。


 一郎たちはイブーシギンを後にした。振り返ったりはしない。見るのは爆発の時、あの小惑星があった辺りだけだ。いまは真っ暗で、何もない。


 大勢の高校生が乗っているのにシャトルの中は静かだった。重い空気に耐えられなくなった者が、たまに奇声を発しても、誰も咎めたりしない。みんな知っている、今自分が生きていられるのは、デブだ、もてないだとみんなでさんざん馬鹿にしていた、タカヒロのおかげだと言う事を。


 宇宙港に着いた。ほぼ半月ぶりに立った地上は暗い曇り空だった、地上に落ちた破片が巻き上げた塵のせいだという。


 何組かは家族が迎えに来ていた。だいたいの生徒はその場に立ちすくんで、周りをきょろきょろと見まわしている。地上はまだ混乱していて安否情報もはっきりはしていないらしい。今日着く事は直前に決まったから、連絡がついた家族は多くないのかもしれない。一郎の家族も見当たらなかった。


 前から大勢が歩いてきた、黒いサングラスをかけて黒いスーツを着た大柄な男たちの集団だ。集団はまっすぐ進んで一郎の前で止まった。


「君が、佐藤一郎君だね?」


 男の一人が言った。背が190cmはありそうだ。


「はい、そうですけど」


「いました!」


 男が集団に声をかけると、集団が左右に綺麗に割れて、真ん中に紫色のスーツを着た女が現れた。女は小走りで一郎に近づいた、案外若い、眼鏡をかけていて二十代の半ばぐらいに見える。かなりの美人だ。


「あなたが一郎君? お疲れ様、淡島です」


「え?」


 いや……その。無線の声で若いとは思ったけどこれほどとは……。


「淡島准尉です」


 彼女はもう一度言って一郎の手をとった。


「あの下っ端の?」


 一郎が思わずそうつぶやくと、淡島の後ろにいたさっきの大男が慌てたように言った。


「こら、この方をどなたと心得る。恐れ多くも地球連邦大統領、淡島すみれ閣下だぞ!」


「は?」

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