表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/42

29 魔王リベルの内政事情

「ジン。とりあえず煉獄中央区の状況から見てほしい」


 俺たちは「ヘヴンズタワー」というらしいガラス張りの超高層塔の最上階にいた。リベルが魔力で空間に色々と投影している。どれもが国の状況を示す数値らしい。


 窓から見える夜景は幻想的で、どこか儚い。何故だか、そんな気がした。


「主様」


 ムラクモが俺に小さく耳打ちした。 


「どうした?」


「魔王が見ているものは、私にはさっぱりです。主様の中で休ませて頂いてもよろしいですか?」


 彼女の希望を承諾すると、ムラクモは霧となって俺の中へ入ってくる。デュランダルの時は、多少、熱さみたいなものを感じた。今回は霧ということもあるのか、特段、妙な感じはしなかった。


「あれ。彼女は戻ったのかい?」


「ああ。一時的にな。退屈だとさ」


「それはそれは、失礼したね」


 リベルが軽く笑う。ここにはリベルの他に、国を運営しているらしい議員が数名いた。その全員が俺を品定めでもするように見ている。


「ところでリベル。あのグラフはなんだ?」


 俺は展開されている映像の一つを指差した。リベルがそちらを向く。


「あれは魔力の生産グラフさ。その隣は転換効率を示した物だよ」


 ふうむ。俺は空中を漂う数値やグラフを眺めて唸る。煉獄中央区の財政状況から国民の健康状況までもが羅列されていた。中々に見応えのある資料群だ。SSS竜化の影響なのか、どの資料も瞬時に理解できた。


「リベル。去年から魔力生産量が半分以下になっているのは何故だ?」


「流石はジンだね。よくこれらの情報を読み解いている。どうしてだと思う?」


 質問を質問で返すなよな。うーん。とりあえず他の情報と組み合わせて思考を重ねる。すると後方から笑い声が聞こてきた。


「くくく。地上の下等な人間ごときにはわかりませんよ。リベル様」


 議員の一人が俺を見下しながら、そこそこでかい声で言っていた。とりあえず無視して答えを出そう。ただ、よくよく情報を眺めていると案外、答はシンプルだった。


「グラフを見る限りは、他国からの魔力輸入が大きくなったことと、海洋資源からの転換効率が飛躍的に上がっている。さらに魔道具の進化により、消費魔力が小さくなっているな。この辺りが要因かと思うが、どうだ?」


「その通りだよジン。やはり君は頼りになるね」


「そうか? この程度、誰でもわかるような気がするけどな」


「あはは。そう思えるのが、ジンのいいところだよ」


 俺がリベルと話していると、後ろから舌打ちが聞こえた。どうやら俺はここでも歓迎されていないようだ。しかし毎度、毎度、どうして俺はこんなにも嫌われてしまうのだ。やれやれ。


「ジン。煉獄は内政がかなり歪な状態なんだ。他の魔王との戦いにも備えなければならない。ぜひ、君の叡智とSSS級の力を貸してくれないかい?」


「何をいまさら。もちろんだ。どこまで役に立てるか、保証はできないがな」


 そう答え、俺とリベルは同時に笑う。


「お、お待ち下さい! リベル様!」


 後方からの声に、俺たちは二人同時に振り返る。白髪に覆われた頭と長い顎ヒゲを伸ばした老紳士が、杖を付きながら俺の傍らに立った。


「リベル様。このような下賤の者に頼る必要などございません。煉獄中央区の運営は我々だけで問題ありません。即刻、この者を他の魔王への供物として処理いたしましょう」


 おいおい。またかよ。また嫌われてるよ。まだ出会ったばっかりなのに……。はあ。俺もムラクモみたいに休みたいなぁ。

数ある作品の中から本作を選んで頂き、本当に、本当にありがとうございます!


もしよろしかったら、ブックマークでジンとデュランダルを応援してもらえたら、とてもうれしいです!

下にある☆☆☆☆☆評価からも応援頂けたら、さらに幸せです!


ここまでお読み頂き、本当に、本当にありがとうございます!!!

これからも何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ