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女化町の現代異類婚姻譚  作者: 東雲佑
最終章 来つ寝
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4.たつのこ山

 龍ケ崎市には『たつのこ』と名のつく施設やスポットが数多く存在する。

『たつのこスタジアム』や『たつのこフィールド』などスポーツ関連施設を代表に(そもそも施設名に『たつのこ』を冠したのは市民総合体育館の愛称を『たつのこアリーナ』と改めたのがその(こう)()である)、『たつのこ図書館』、『たつのこ産直市場』、『たつのこまち龍ケ崎モール』など、いかにも枚挙まいきょいとまはない。


『たつのこ』は龍ケ崎市を象徴する愛称として公共と民間の別なく親しまれ用いられている。




 僕らが今日出かけてきた場所にもそんなたつのこスポットが存在する。

 市内中央部に位置する龍ヶ岡公園の、広大な敷地面積を誇る園内に人工的に造られた築山つくやま

 この公園のシンボルでもある、たつのこ山である。


 日曜日だった。僕は子供たちをつれてそのたつのこ山をのぼっている。


「あんちゃん、はやくー」「コジローくんもー」「いそぎすぎるほどいそいでー」


 一足先に山頂に辿り着いた子ダヌキたちが、はしゃいだ声でこちらを急かす。

 僕はといえば、完全に日頃の運動不足が祟っていた。スロープの階段を一段一段息切らせながらのぼる僕に、隣から小次郎君が励ましの言葉をかけてくれる。

 やれやれ、今日も今日とて僕は無様だ。


「よ、ようやく終わりだ……!」


 どうにかこうにか登り切った瞬間、四人の子供たちが拍手などしてくれた。

 僕はガクガクする膝に手をついて、なんとか息を整える。


 それから、ようやく顔をあげて周囲を見た。

 山頂からの眺望を、見晴らして見渡した。


 先述した通り、たつのこ山は人工的に造成された築山である。

 しかし山のない平らな土地に発展した龍ケ崎においては、地上二十三メートル標高四十一メートルのこのたつのこ山の山頂こそが市内の最高地点にあたる。


 よく晴れた六月最後の日曜日、市民が誇る人工山の山頂からは、市民の暮らす街並みを全方位に眺めることができた。

 市内だけじゃなく、霞んだ大気の遠景には筑波山や牛久大仏までもがうっすらと見て取れる。


「いい日だなぁ」

「はい。いい日です」


 何気なく発した僕のつぶやきに小次郎くんが同意した、そのとき。

 遅れていた女性陣が、ようやく追いついてきた。


「へぇ、久しぶりにのぼったけど、ここってこんなに眺めがよかったんだな」

「夕声ちゃんは小学校の遠足以来かしら? 大きくなってからだと、子供の時とは見え方が変わってるんじゃない?」


 大パノラマの龍ケ崎市を見渡しながら言った夕声に、水沼さんがいつものおだやかなくすくす笑いで言う。


 それから。


「ほら、あなたもこっちに来て、一緒に見てご覧なさい」


 遅れてきた最後の一人に向かって、水沼さんはそう優しく声をかけた。


「将来大人になったときに今日のことを思い出すために……ね?」

「う、うん……」


 距離を取ってこちらを伺っていた少女が、遠慮がちに近づいてきた。


 爆竹娘の、アライグマの桔梗ちゃんだった。


しばらく更新が停滞してしまって申し訳ありませんでした。

文章を区切るポイントのせいで今回の更新は文字数少なめですが、次は少し長めになりそうです。今度は止まらないように頑張るぞー!

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