チュートリアル・タイム~実践編~
さっそく3人のステータスを確認する。
迷宮の核に手をかざすと、情報が浮かび上がってきた。
名前:ラウド
年齢:15
種族:人間
性別:男
レベル:6
職業:冒険者
職種:騎士
称号:なし
スキル:なし
状態:なし
名前:ミラン
年齢:15
種族:人間
性別:女
レベル:5
職業:冒険者
職種:魔法使い
称号:なし
スキル:なし
状態:なし
名前:ケージ
年齢:16
種族:人間
性別:男
レベル:7
職業:冒険者
職種:盗賊
称号:なし
スキル:なし
状態:なし
うわ、弱っ!
バランスはとれているんだけど。
武器も防具も安っぽいし、やっぱり駆け出しの初心者か。
こいつらを殺さず、しかし精神はしっかりと抉って追い返すのか……
罠だけじゃ難しいから魔物をぶつけるんだけど、何にすればいいんだか。セレクトに迷う。
「クラーケン」
「水がないよ?」
「サキュバス」
「エロゲにする気?」
「じゃあドラゴン!」
「どう考えても戦力過剰」
むう………ことごとく却下された。
そうこうしているうちに、3人は通路を歩き始めた。
だいぶ道は複雑にしたつもりだが、あまり時間をかけすぎるとここまで来てしまうかもしれない。急がないと。
弱すぎると殺されるし、強すぎても殺しちゃう。
かといって私たちが出動するのもダメ。
どうすればいいのか……
しばらくリストをスクロールしていたのだが、ある魔物の欄で閃くものがあった。
「ねえ美央、これは?」
「弱くない?」
「そこは数を揃えてですね」
「ほうほう」
「罠はこれをここに置いて」
「うんうん」
「どうよ?」
「いいじゃん、面白そう!」
「決まりだね」
* * *
選んだのは「ビートバグ」という魔物だ。
全体が黒褐色で、大きな触角と平べったい体、油でテカテカ光る大きな羽。
雑食で、生命力・繁殖力が共に強く、カサカサ這って移動する。
嫌いな害虫ナンバーワンに君臨する魔獣種の魔物。
要するにゴキブリ。
3人はもう少しで曲がり角にたどり着くという位置だ。
さあビートバグ10匹、let's go!
カサカサカサカサ……グシャッ
「ちっ、ビートバグかよ。驚かしやがって」
「気持ち悪っ。こいつ嫌いなんだけど」
当然ながら一体一体は弱いので、あっという間に踏み潰された。
武器すら使われていない。
10匹は足止めの時間稼ぎ用だ。本命は第二波。
「こいつら小さすぎて魔石が採れないんだよねー」
「出てくるのがバグシリーズなら進んでも大丈夫か………おい。何か音がするぞ……?」
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ
「……まさかビートバグの大群とかないよね?」
「いやいや、いくら何でもそんなことは」
「冗談じゃない」
ええ正解ですとも。20万匹のゴキ…じゃなかった、ビートバグです。
ダースで使用魔力1という超お手頃魔物なんだよね。
コーナーを曲がり、天井まである黒褐色の波が3人に押し寄せる。
「「「うぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁ!!!」」」
凄まじい悲鳴をあげ、仲良く波に背を向けて走り出した。
魔法使いの女が火球を撃ち込んでいるが、効果は無いに等しい。
だって20万だよ?
盗賊の男も、逃げるのに必死すぎて役目を放棄してるね。
そんなんじゃ罠があっても気付かないだろうに。
じりじりと距離は縮まっているが、このままだと逃げられるな。
そこで、足元に楽しい罠を施してみた。
騎士の男が石畳の1つを踏む。
すると、
「「「ああっ!?」」」
突然、足元の石畳が10㎝跳ね上がり、3人の足を引っかけた。
たかが10㎝と侮るなかれ。躓いて転ぶには十分な高さだ。
「「「ぶふぉえっっ」」」
慣性に従い、顔面からスライディング。
ビートバグの波は3人を飲み込み、押し流し、あらかじめ開けておいた入り口の扉から、ダンジョンの外に出ていった。
この20万匹のビートバグが周囲の生態系を大きく狂わせたことを、私たちはまだ知らなかった。




