目覚め
目覚めたそこは、やたらと湿っぽい、石造りの大部屋だった。
壁も床もカッチリと平べったい石を組み合わせて造られている。
湿度が異様に高く、結露した水滴が時々、ぽつぽつと落ちてくる。
床もじっとり濡れている。
そんなところに倒れていたせいで服はぐしょぐしょだ。
寝転がっていて気持ちいい環境ではない。
上半身を起こしておもいっきり伸びをする。
隣にはまだすやすやと眠っている美央の姿が。
油性ペンを持っていないことが悔やまれる。
もし持っていたら顔に落書きしてやったのに。
いつまでも呑気に起きるのを待っている訳にはいかないので、起こすことにしよう。
「おーい、起きろ美央ー」
「うぅ~、あと五分……」
よくこの環境で寝られるな、我が妹よ……
揺すって、叩いて、頬をつつき、耳元で怒鳴り続けること五分。
ようやく起こすことができた。
「うっわなにこれ!服濡れてる!」
ようやく状況把握したのか。
共に不快げに顔をしかめて、軽く服を絞った。
さて、と。
何をすればいいかよくわからないんだが。
部屋の中央にはこれみよがしにふわふわと水晶玉が浮いている。
占い師さんが使っているような一般的なサイズのものだ。
いかにも触れろと言わんばかりだ。
他に調べられそうな物も無いし、とりあえず触ってみるか。
「ちょいまち、真央」
「?」
指が水晶玉に触れるギリギリのところで、美央に右手首を掴まれた。
なんだろうか?
「邪神たちから貰った真央が持ってる黒いビー玉、確かダンジョン・コアのアップデート装置とか言ってなかったっけ」
あ。完全に忘れてた。
「『軽く押し当てれば大丈夫』、あと『一番最初に』って」
「じゃあやりますか」
「一緒にやろーよ」
「えー、なんだよ美央、普通の女子みたいで気持ち悪い」
「うっわ、ひどい!」
左手に持っていたガラス玉を水晶玉に押し当てる。
すると不思議なことに、抵抗なくガラス玉は水晶玉に沈みこんでいった。
中に飲み込まれきり、二人の指先が水晶玉に触れた瞬間。
《規定値以上の魔力確認。
スキル【ダンジョンマスター】確認。
ダンジョン所有者を魔王「白宮真央」「白宮美央」に再設定、開始します》
パソコンの自動音声に近い無機質な声と共に、水晶玉が光り輝いた。