新たな魔王によき道行きを
切るところを見失った結果、長くなってしまいました。
「それで、魔王になってもらうというのは、どういうことでしょうか?」
邪神たちの自己紹介の後、私たちは魔王になることを半強制的に承諾させられていた。
断られたら負のエネルギーの大損なんだとか。
凄まじい威圧感をかけられながら
『やってくれるよね?ね?』
と言われて断れるほど私たちの心臓は強くなかった。
まあ、そんなことをされなくても面白そうだから引き受けるつもりだったけど。
『君らにはこれから異世界に飛んでもらう』
『いわゆるファンタジー世界。ドワーフ、エルフなどの多種族がいて魔法が使える世界ね』
おお!ゲームっぽい!楽しそうなところじゃないか。
『そこで負のエネルギー………つまり生物が発生させる悪感情を集めてほしいんだ』
『世界はプラスとマイナスで成り立っているのです。私たち邪神は神界を追放された後、マイナスの面から世界のバランスを保ち、管理していたのです』
『陽と陰、光と闇、聖と魔とかねぇ』
『………なのに考え無しの馬鹿神ども、勇者大量召喚したりしてバランスを壊そうとしている』
『『『まったく嘆かわしい』』』
邪神たちは重苦しいため息をついたり、やれやれとばかりに首を振ったりした。
………それにしても、どうして神界を追放されたんだろう?
「どうして神界を追い出されちゃったんですか?」
美央も同じことを思ったらしい。
『いや、ちょこっとオイタをしちゃっただけだぞ?』
『………職務放棄したり』
『うっかりミスして巨大地震起こしたり』
『ウザくて邪魔だった上司殺したり』
『その神の魂を喰っ「「すみませんよくわかりました」」
そりゃ追放されるわけだ。
ひょっとしなくても神界も人間界も大混乱したのではなかろうか。
『さて、どんな風に負のエネルギーを集めるのぉ?』
『今なら古代遺跡の天空城とか、倒された大魔王ディルバートの魔の森とかいい物件が空いてるよ!』
『………魔物を率いて人間の領域を荒らす魔王は結構多いよ』
戦略系ゲームかー。
楽しそうだけど、いざとなったら前線に出て戦わなきゃいけなそう。
もうちょっと楽にできて、安全な場所で相手が悪戦苦闘しているのを嘲笑できる仕事はないのかな?
直接手を下せて、なおかつ高みの見物ができるの。
ダンジョンとか……ん?ダンジョン?
「ダンジョンってありますか?」
奥に引きこもって嫌がらせできるし、トラップとか大量の魔物を壁にできるし。
やっぱりダンジョン物のRPGが私たちは好きっていうのもあるしね。
スライムクエストは私たちがゲーム好きになったきっかけの思い出深いゲームだ。
『…………ダンジョン?あるよ……』
『知性のある魔物や魔族が経営してることもあるわねぇ』
『意外!もうちょい派手なやつ選ぶと思ったのに』
あるんかい!
あるんだったらやりたい。絶対やりたい。
「美央、それでいい?」
「うん、いいよ!」
にっこり笑顔で親指をたて、返事をしてくれた。
「私たちはダンジョンを使って負のエネルギーを集めます」
『りょーかい。じゃあ「ダンジョンマスター」のスキル、あと「邪神の恩寵」を付けておくね』
ぱちんっとウインクする色欲。
「あ、待つのです。これを持っていくです」
悪食が何かを二つ私たちに投げた。
取り落としそうになるも、なんとかキャッチする。
それは、黒曜石によく似たガラス玉だった。
明かりに透かすとほんのり赤い。
美央の方は毒々しいほど鮮やかに真っ赤な林檎。
ガッツリ原色だ。
外国の着色料たっぷりのお菓子でさえここまで赤くはないだろう。
『黒い方は迷宮の核――ダンジョン・コアのアップデート装置よ!』
『軽く押し当てれば大丈夫だよ。一番最初にやりなさい』
『……赤い方は齧ると魔力・体力・反射神経もろもろを一時的に引き上げるスーパーアイテム』
『一気に使うとくるくるぱーになるから注意なのです』
なんと便利な。さしずめ餞別のチートアイテムってところだろうか。
『それじゃ、大変かもしれないけどがんばってね?』
『ふん、あっさり死ぬんじゃないぞ』
『ダンジョンに転移させるよ』
強欲の持っている分厚い本の表紙に嵌め込まれた宝石が輝きだし、ページが勝手に物凄い勢いでめくれ始めた。
極彩色の謎の文字――多分、魔法言語とかいうそれらしい名前がついているのだろう――が具現化して宙に浮く。
空中に渦を巻いたそれはやがて私たちを中心とした大量の魔方陣に変化した。
『『『『『『『憎き聖に混乱と天誅を!
美しき魔に祝福と加護を!
新たな魔王によき道行きを!』』』』』』』
邪神たちの大合唱に送り出されて。
魔方陣はそれぞれが好き勝手な色を放ち。
視界も意識も光に塗りつぶされた。




