チュートリアルタイム~後始末編~
冒険者3人を追い返してから約5分。
迷宮の核にはいまだ滝のように邪神たちからの賞賛のメッセージが流れている。
悪食//ビートバグで押し流すなんてっ、面白すぎなのです!
色欲//マジで傑作だったよ!最後、全員白目剥いてたよな
嫉妬//よくあんなエグいの思いついたわねぇ?
怠惰//……出てくる度にトラウマになるだろうね
私も我ながら、よくあんなのを思いついたと思う。
邪神たちが気に入ってくれて良かった。
そして何より、私たちが楽しかった。けど……
「汚い」
「マジそれな」
焼け焦げたり、潰れて中身が丸見えのビートバグの残骸が、大量に転がっている。どーすんのよ、これ?
憤怒//それは心配しなくても大丈夫!一定時間たてば、ダンジョンが勝手に消してくれるわよ!
そりゃ良かった。清掃担当の魔物を召喚する必要は無さそうだ。
あ、そういえば。
さっきの魔法使いの女が「魔石」がどうとか言ってたな。
何となく想像はつくけど、「魔石」って何だろう?
ちょっと聞いてみるか。
「魔石ってどういう物ですか?」
強欲//魔物の体に魔力を供給する、人間でいう心臓に当たる器官だよ
傲慢//冒険者は、殺した魔物の死骸から、魔石と、殺した証になる証明部位を抉りとって売っている
嫉妬//武器、防具、街灯、魔道具、薬等々、魔石は色々使えるから、需要は結構あるわよぉ
なるほど、ほぼゲームと同じ感じなんだね。
薬にまで使えるのか。すり潰すのかな?
色欲//で、どこまで説明したっけ?
「負のエネルギーの納め方だったと思います」
怠惰//……ぶっちゃけ、迷宮の核が自動で集めてくれるから、あんまりすることないんだよね
悪食//オプションの所で、どのくらい溜まったか見られるのです
憤怒//満タンになったら【転送】のマークが出てくるわよ!
楽チンだね。どのくらいで満タンになるのかはわからないけど、好き勝手に冒険者で遊んでいれば大丈夫だろう。
傲慢//最後に僕らからの警告だ
憤怒//あなたたちは魔王になって、強くなっているわ。けど、神の加護を受けているのはあなたたちだけじゃないの!
怠惰//……今、この世界は勇者サイドが優勢。加護がインフレしてるんだ
嫉妬//腐っても同じ神の加護だから強いわよぉ。死ぬ危険がある程度にはねぇ
悪食//生きていれば次がある……けど死んでしまえば何もかも残らないのです
色欲//ま、引き込もってればしばらく安全だけどね?その仕事も性に合ってるみたいだしさ
強欲//くれぐれも気をつけて魔王生活を楽しんで欲しい
そのメッセージを最後に、迷宮の核に浮かんでいた文字が全て消え失せた。
辺りには沈黙が訪れる。
「ねぇ、美央」
「なに、真央?」
「これからもずっと一緒だよ?」
「当たり前じゃん」
「「二人揃えば無敵だもんね」」
どちらからともなく、声を上げて笑った。
まだ誰もいないダンジョンに、二人の声はよく響いた。