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プロローグ 異世界ブーム

2024年、地球では空前の異世界ブームが起きていた。


 そのブームの発端は2018年まで遡る。


 日本国東北地方にて実施された素粒子加速衝突実験にまで。


 これは当時発見されていた17の素粒子(素粒子とは簡単に言えば物質を構成する最小単位のことであり、分子や原子よりもさらに小さい単位である。代表的な素粒子としてヒッグス粒子という素粒子に質量を与えるものがよく知られている。)の影または対となる暗黒物質を発見することや、宇宙誕生または誕生直後を知る為の知的実験を目標の1つとしたものであった。


 この素粒子加速衝突実験について語ると、スイスに存在する欧州原子核研究機構(通称CERN(セルン))における世界最大規模の素粒子物理学と同所に存在する大型ハドロン衝突型加速器(通称LHC)を使った実験等への理解が必須となる。


 しかし、ここで重要なことは素粒子物理学や実験そのものではなく、実験によって何がもたらされたかである。


 2018年11月20日に行われた第1回稼働試験において予想外の事態が生じたのである。もっとも、その事態を実験主体である国際素粒子学研究機構が把握、否、発見したのは月が替わった12月も半ばを過ぎた頃であったが。




 一本の剣。


 これが発見されたモノである。


 これの何が問題なのか。


 確かに銃砲刀剣類所持等取締法という法律が日本にはあるため、行政による許可や適切な保管がなされていない剣が発見されることはよろしくない。だが、それだけであれば世の中が騒ぐほどではない。なぜなら、治安が良いと言われる日本国内であっても銃刀法違反で検挙される者は大勢いるのだから。


 問題の1つは国際素粒子学研究機構の敷地内、それも、世界の注目を浴びる素粒子加速衝突実験施設の中心部に無造作に置かれていたためである。


 この素粒子加速実験には危険も伴うために周囲は厳重に警備されており不審者が近づけるはずがなかったということと、全長30キロを超え、都心を走る山手線に例えられることの多い円型をした素粒子加速衝突実験施設の丁度中心部に剣が存在していたことが問題であった。


 問題の2つ目はその剣の成分分析をしたところ、およそ18パーセントが未知の素材で構成されていたことであった。


 そして最終的に導き出された結論が『召喚』であったのだ。





 地球ではまず素粒子ブームが起きた。


 日本国東北地方で行われた素粒子加速衝突実験による予期せぬ成果に世界中の科学者が困惑を隠せない中、世界中が湧いたのだ。


 科学者たちが困惑する理由は至極単純で、なぜ剣が召喚されたのか全く理解出来ないからだ。


 一般市民が喝采を上げた理由も単純で、『異世界』が存在することがほぼ確実視されたからだ。


 そして素粒子加速衝突実験もとい、異世界物質召喚実験は世論の後押しを受けて大々的に行われることになった。


 もっとも、それを危惧する声もそれなりに上がった。未知の素材を使った剣が召喚されていることからもわかるように、地球上に存在しない物質を召喚した場合の危険性等である。


 人類が耐性を持たない病原菌を召喚してしまうことによるパンデミックを危惧するのは当然であるし、万が一人類のような知的生命体まで召喚出来てしまった場合、当人に対する人権侵害はもとより、最悪の場合は異世界との世界間戦争までもありうるのだから。


 だが、それら危惧の声は退けられた。


 理由は様々だ。


 もっとも大きな理由は異世界の存在に対する好奇心だろうか。だが、最も実験継続に影響を与えたのは各国の指導者たちであった。


 自国の利益。素粒子加速衝突実験に出資していた国々は当初の目的から逸れ、現実的利益を求めるようになった。


 地球の限界。人口爆発と称される近年の人類増加は近い将来のエネルギー不足、食糧不足といった危機的状況を示唆していた。人類はそれを技術革新や宇宙開発で避けようとしていたが、現在のペースでは間に合わない可能性が高いのだ。それに代わる手段として異世界を求めるようになっていた。


 そして素粒子加速衝突実験は予算規模を数倍にし、さらには最優先課題として『異世界』の存在立証が与えられた。








 そして事故が起こる。




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