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 夏休みももうすぐ終わるというタイミングで、幼馴染の清水里香ちゃんから連絡が来た。


「いくらクラスが違っちゃったからって、ずいぶんじゃない?」


「えっと、私なんかしちゃった?」


「夏海ちゃんから聞いたよ。かわいくイメチェンしたそうじゃない」


「あぁ、その事か。髪は切ったけど、報告するような事じゃないと思って」


「いいや! 遂にみしろチャンにも春が来たって噂になってるぞ。だから明日、服を買いに行こう」


 どこまでの範囲で噂になっているのかは解らないけど、中学で仲良しだった仲間内なのだろうと見当は付く。遠藤さんは、私が母以外で服を買いに行く相手が里香ちゃんくらいだったのを知っていて、気を使ってくれたのだろうか。


「服を買いに行くのはかまわないけど、彼氏ができたとかじゃ無いからね」


「ふ〜ん。とびっきりの笑顔を撮ってもらったって?」


「だ! だれから聞いたの!? まさか、む……」


 冷静に考えれば母経由であろうことは判るはずなのに、写真の事を言われて動転してしまった。あろうことか、自分から名前をバラしそうになってしまうなんて。


 里香ちゃんの「あ・し・た、詳しく教えてね」って言うニタニタ声が、翌日まで耳から離れないままでいて、母に用意してもらったお金を財布にしまって買い物に行く準備をする。

 呼びに来た里香ちゃんの第一声が「思い切ったね」だったのは、私が髪を伸ばしていた理由を知っているからだし、ここまで短いのは幼稚園以来なのだからだろう。だからこそ、好きな人が出来たと思い込んでいて、それを否定しきれるほどに自分の気持ちが解っていない。

 上がり込んでタンスやクローゼットを物色した里香ちゃんは、コーディネートするために服の写真を撮ってニッコリ振り返る。


「さて、宗方君とはどこまで進んだのかな?」


「本当に、どこからその噂が流れてるの? 彼にも迷惑になるから教えてよ」


 親同士も仲が良いから、そのルートで探られた様だけど、母には彼の名前を教えていない。それなのに名前が出て来るなんて、どう考えてもおかしいと思ってしまった。

 ましてや彼に告白したわけでも、告白されたわけでも無いのに、噂が立ってしまったら宗方君に迷惑をかけてしまうので止めてほしかった。


「ん? 夏海ちゃんから『髪切ってたぞ』って連絡が来たから、おばさんに探りを入れてね。そこの白黒写真を見て、写真部でもオタク呼ばわりされている宗方君だと思ったんだ。で、カマかけたら引っかかって白状してくれたって感じ? 確か、真面目そうな感じの子だったよね」


 どうやら確信に導いてしまったのは、不用意に写真を貼っていて、それを警戒心も無く見せてしまった私のようだった。ここまでバレたのならば、全て話してしまった方が良いのかもしれない。


「私の見ている世界と宗方君の切り取る世界が、同じものかもしれないと思ったんだって」


 そう話し始めて、公園で声をかけられた時の話や、翌日の出来事を全て聞かせる。好きかもしれないと思っている事も含めて。


「ずいぶんキザな台詞を吐かれたね。それでイチコロのみしろチャンも如何かと思うけど。でも、脈有りなんじゃないかな?」


 私の抱えている気持は恋で間違いないだろういし、彼の気持ちも察するものなのだろう。

 告白とかは考えるだけで恥ずかしいので、付き合う所までいくかどうか判らないけれど、『脈があるのなら嬉しいな』と思ってしまうほどに、乙女な自分が恥ずかしい。


 途中で遠藤さんとも落ち合って、久し振りに『友達との服選び』を楽しんだ。

 デート服だとか勝負下着だと一人騒ぐ里香ちゃんを恥ずかしいと思いつつも、それを着た自分を想像するより、着た自分を見た宗方君の反応を想像しているのだから、私も人の事を言える立場ではないだろう。

 遠藤さんにも宗方君との事は話されてしまったので、画材屋さんで会った後の会話にも変に納得している様子だった。彼女は同じ文化部だからか宗方君の事を知っていて、彼と話をした事も有るそうだ。


「宗方君って話をしない方ではないけど、自分から声をかける方でもないと思うんだよね。だから、水無月さんに気があるんじゃないかと思うんだけど」


 そんな事を言ったものだから、里香ちゃんの暴走が止まらないでいるのだ。

 セールになっていた夏物や秋物を選んでもらって、ファミレスで遅いお昼を食べたけれど、その間の話題も私の事に集中してしまった。


「でも、大胆だよね。付き合ってもいない男の子をデートに誘うなんて」


「デートじゃないから! ただ話をしてみたくなったから、口実で写真を撮ってほしいと頼んだだけだよ?」


「だって手作りのお弁当でしょ。普通しないよ、そんな事。付き合ってたって無理かもしれない」


「そりゃぁ、里香ちゃんの壊滅的な料理は出せないよね。でも、水無月さんは料理上手だしね」


「うっさい! で、いつ告るの?」


「そうそう、好きなんでしょ?」


 たぶん? いや、絶対に好きになっている。それでも、付き合いたいかと聞かれると考えてしまう。彼の事をよく知っているわけでは無いし、私の目の事も有るのだし……。


「好きなんだと思うけど、目の事も有るからねぇ。彼が興味本位だったとは思わないけど、話題を共有できる人くらいにしか思ってないかもしれないじゃない」


「じゃぁ、呼び出してみなよ」


 宗方君の都合もあるのだからと断ってみたけれど、里香ちゃん達の勢いに負けてメッセージを入れてみると、直ぐに既読が付いて返信まで来る。


『今、何してる?』


『靴を買いに双葉駅に来ていて、お昼をどうするか考え中』


 都合が付かなければいいのになんて思いながら打ったのに、なぜだか直ぐ近くにいるらしい。


『駅前のトトスに居るんだけど、会える?』


『良いの? 直ぐ行くよ』


 来てくれるそうなので、店員さんに断って背中合わせの席に一人移動して、彼が来るのを待つことにした。里香ちゃん達は、見つからない位置に座り直して静かにしているから、彼には気付かれることは無いだろう。


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