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 今年も三が日は、祖父母の所へ新年の挨拶に行ったり家族で買い物に出かけたりと、ゆったり過ごす事ができた。もっとも、母が『みしろに彼氏ができた』なんてふれ回ったものだから、親類などから質問攻めにあったりもしたし、栗きんとんの件も知れ渡ってしまった。

 歳の近い従姉妹とは『どんな付き合い方をしているの』みたいな話はしたものの、彼女たちは早い内からそれなりに経験があるものだから、参考になる話を聞く事ができなかった。

 こればっかりは正解なんてないのだから、自分たちのペースでその時々に取れる最善を選び取って行くしかないのだろう。宗方君といろいろ相談しながら、ゆっくりと関係を深めて行こうと思った。


 その宗方君とは四日の午前中に待ち合わせをしていた。

 目的はカメラの購入なのだけれど、その後に撮影したいと言い出すことは目に見えているので、荷物は少なめを心掛ける。ここだけの話、外出するときはバッグいっぱいに物を詰め込みたくなるので、小さめのバッグから詰め初めて三回目の詰め替えでなんとか収まってくれた。

 約束の時間前には待ち合わせのホームに着いたのだけれど、やっぱり宗方君は先に来て待っている。


「たった今ホームを出て行った電車で来たんだよ」


「ほんとうに? その前から居たんじゃないの?」


「本当だって、そんな嘘を吐く理由が無いでしょ」


「じゃぁ、手を出して。手を繋げば解るはずよね」


「はい、降参です。その前の電車で来ました」


 そこまで早く来なくてもと思うけど、やっぱり私を待たすのは嫌だと言って聞かないわけで、ナンパされやしないか心配らしい。

 やっぱり独占欲が強いのかもしれない。


 買うカメラは決まっていた様で、売り場に着くと直ぐに店員に声をかけ、品物を奥から出してもらっていた。もっともそれだけでは足らない様で、カメラアクセサリー売り場に移動すると、フィルターやストラップ等もカタログの数値を見ながら選んでいく。


「えっと、バッグも買い換えるの?」


「え? うん。そもそも本体やレンズのサイズが違うし、持って行かなきゃいけない物が段違いだからね」


 今まで使っていた物の半分くらいのサイズをいくつか選び、店員に断ってから展示品を収めたりして選んでいく。

 今までのカメラが『本格的な』と表現するなら、今回の物は二回り小さいサイズだったけれど、シックな装いだからかおもちゃ感は無い。そもそもの値段が素人の私には理解しがたいものだったので、これでも本格的なのだろうと感じる。

 だって、ちゃんとしたパソコンが買える金額を上回っているのだもの。何事も凝りだしたらキリは無いし、趣味の道具は傍から見れば余計に高く感じるものなのだろうか。


 支払いを済ませた宗方君は、直ぐにでも撮影したそうな表情だったのだけれど、どうやら説明書を読まないといけないらしい。


「それじゃ、どこかお店に入りましょう。私もタブレット持って来ているし、今日一日は付き合うつもりで来ているから時間はいっぱい有るからね」


 そうは言ったものの、どこのお店も男性の一人客が多くて席が取れない。四人掛けのテーブルを独りで使われたら、お店も迷惑だろうなと考えてしまう。


「たぶん荷物持ちで連れてこられて、こうして時間を潰しているんだよ」


「宗方君も経験があるの?」


「父さんがね。去年は母さんと姉貴の荷物持ちで連れ出されて、『暇の潰しようが無い』なんてぼやいていた」


 去年だと、受験生だったから免除されたのかもしれない。今年は私がいるから免除されたのかな?

 やっと座る事ができて、宗方君は早々にテーブルの上に買った品物を並べて行く。

 それが終わると端から封を開けて行き、フィルターなどを付けてはバッグへ収めて行くと、説明書と空箱を残してすべて収まってまだ余裕がある。どうやらレンズがもう少し欲しいので、その分を見越しているのだそうだ。


 彼は斜め読みが出来るのか、黙々と十数分で説明書を最後まで読んでしまう。

改めてカメラを取り出し、読みながら付けていった付箋の頁を見ながら設定を変更していくと、『最初の一枚』なんて言ってこちらにレンズを向けてくる。


「ちょっと待っててね」


 飲み物に口を付けてしまっているのでリップを塗り直しに席を立ち、髪も軽く整えて直ぐに戻る。向けられたレンズにニッコリと笑みを向けると、軽いシャッター音がするけれど、そのあまりの軽さに撮れたのか不安になる。


「ちゃんと撮れた、かな?」


 そう質問をすると、ニヤッと笑ってバッグからタブレットを取り出してこちらに向けてくる。そこには私が写っていて、間違いなく今撮った写真だ。


「そっか、デジカメだから直ぐ見れるんだ。しかも、大きく見られるのは良いね。あ、メールで今の写真を送って」


「いいよ。フィルムだとこうはいかないよね。でも、容量が多いからって無暗に連射とかしちゃいそうで怖いな。やっぱり、一枚一枚を丁寧に切り取って行きたいよ」


 軽食くらいしか扱っていないお店だったので、お昼をそこでとはさすがに行かなくって、地元までもどって来てしまう。


「お昼時間も過ぎているのに、こっちでもお店は何処もいっぱいだね」


「まだ、仕事始めでない会社も多いだろうしね。困ったなぁ、腹は減っては戦も出来ないのに」


「それって、私を組伏すって話し?」


「あのね。女の子が、そんな下品なおやじギャグなんて言っちゃだめだよ」


 まぁ、そこまでの関係にはならないと思っていたけれど、本当に乙女なのか草食系なのか判らない。だからと言ってからかい過ぎるのも可哀想なので、健全な提案でもさせてもらおう。


「ひとつは私の家に来て食べる。ふたつ目は駅向こうのカラオケに行く。どちらにしてもコンビニでお昼を調達する必要があるけどね。そこのカラオケは飲食類の持ち込みがOKなんだよ」


「どちらもチョット……。右に行った先のコンビニって、イートインスペースがあったよね。嫌でなければそこはどうかな」


「私は気にしないよ。中学の時はちょくちょく利用していたしね。じゃぁ、そっちのコンビニを覗いてみよう」


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