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 期末テストが迫ってクラスの雰囲気が変わってくる。

 一学期の成績が中ほどだった私は、二学期の中間テストでは上位に食い込める科目が数教科あって、『目標がしっかりすると違うな』などと思っていた。宗方君は付き合い始めてから成績を少し落とした様で、今回のテストで挽回しないと『母さんに物申せない』なんて気合を入れていたのが少し心配。


 実は、彼のお母さんとは美空先輩の仲介でお会いしていて、すでに謝罪をしてもらえている。

 女性三人での話し合いは、和やかとはいかないまでも剣呑な雰囲気は無くて、けっこう突っ込んだ話におよんだ。その中心となったのはやはり遺伝の事だったのだけれど、娘も軽度の色覚障害を持っていた事から、病院とかに出向いていろいろと話を聞いてきた内容だったりした。


 結論から言えば、大なり小なり遺伝する病気は数多存在していて、完全に回避する事は無理だと言う事。そして色覚障害については、生活環境の方が歩み寄ってくれてきている事から、徐々に支障が少ない世界になってきている事の確認みたいになってしまう。

 だからと言うわけでは無いけれど、『交際について反対する理由も無いので、息子をよろしくお願いします』なんて言われてしまった。

 そんな事から、双方の家族に認められた以上は恋愛にうつつを抜かして成績を落とすなど許されるものでは無く、後の無い宗方君は必死にテスト勉強に取り組んでいるのだった。


 まだテスト期間にギリギリ入っていない土曜日。

 午前中から宗方君と待ち合わせをして、県立図書館にお出かけした。目的は勉強では無くて、写真部の地区展が行われていたからだった。

 初めて来たのだけれど、さすがに県内最大と言われるだけあって建物自体も大きく、催事スペースも大きく取られている。その一角にパーテーションが乱立している場所があって、そこが地区展の会場となっていた。


「思っていたより広いスペースで行われるんだね。もっと写真同士がぎっしり並んでいるのかと思ってた」


「参加校が九校しかないからね。出展作品もそんなに多くは無いんだよ」


「これって表彰とかされるの? 投票とかできるのかな?」


「初日にプロの写真家が来ていて、金賞なんかを決めていたよ。残念ながら、僕らの高校では副部長が銅賞をもらっただけだけどね」


 パンフレットを見ると作品テーマ毎に分けられているようだけど、せっかくなので端から見て回る事にする。

 入り口付近のテーマは【子供】で、幼稚園児くらいの子供が被写体になっている。どれも無邪気な笑顔が眩しい写真ばかり、「こんな瞬間が残せるのって素敵だなぁ」なんて呟いたら、「みしろさんだって……」なんて反応されて聞こえなかったふりをする。

 次は【行事】がテーマになっていて、お祭りなどのイベントや結婚式まであったけれど、神輿を担いでいる写真が躍動感の伝わってくる素敵な作品だった。そして、その作品は最優秀賞を受賞していた。

 宗方君の写真は出口付近の最も広い【ノンジャンル】に飾ってあって、文化祭の時より大きく引き伸ばされていた。


「こうして他の写真と比べると、テーマ性が無い?」


「痛いとこを突くね。おっしゃる通りなんですが、僕にとっては初めて好きになった人を初めて写した記念の一枚なものですから、どうしても出したかったんです」


「そっか。それじゃぁ私も、もっと素敵に撮ってもらえるように頑張らないといけないね。ところで、白黒写真ってたぶん少ないよね」


「そうだね。ほとんどはカラー写真だし、デジカメで撮った物だろうね。デジタル処理をしている作品もあるかもしれない」


 お昼はお気に入りのファーストフードで、定番のハンバーガーセットを頼む。ここのお店は注文を受けてから作るうえに、お野菜が他より多めなのでヘルシーだし美味しい。もっとも、ちょっと高めで少しばかり食べにくいけれど。

 宗方君はガッツリ系のハンバーガーを二個とナゲットまで頼んでいて、全然ヘルシーではないけれど、野菜ジュースを頼んだから良しとしよう。

 田辺さんと里香ちゃんは一緒に部活の買い物に行くと聞いていたので、せっかくだから写メを送ってあげた。すると「私たちはネギ味噌だよ」なんてラーメンの写真が送られてくる。運動部とは言えども女の子二人でラーメン屋さん、しかもこんもり系かぁ。


「里香ちゃん達は味噌ラーメンだって。日頃から運動しているから、カロリーとか気にしないで食べられるのかな」


「山盛りのネギだから、風邪予防で良いんじゃないかな。やっぱり女の子はカロリーって気になるもの?」


「私は気にするなぁ。運動をしている訳ではないし、みっともない体型はさすがにねぇ」


「みしろさんは太っているようには見えないけど、日夜努力しているんだね」


 そこは女の子なのだから気にもするし、努力も惜しみはしません。それでも二の腕なんかは気になっているくらいだから、努力が足らないとも言えてしまう。

 もう少し食べる物に気を配らなくてはとは思うのだけれど、お昼のコロッケパンは外したくはないし、それを食べてしまえば効果のほどはたかが知れている。


 食後に向かったのは、この近辺では一軒しかないパソコン専門の店舗。

 宗方君はパソコンにも強いとの事で、いろいろと案内してもらおうと考えていたのだった。


「美空先輩って、自分のパソコンを持っているの?」


「本体は親父のお古だけど、周辺機器は自分で揃えたみたいだよ。ディスプレーと液タブにキーボードとマウス、そして絵を描くためのソフトが必要になる。姉貴は二画面使っているけどね」


「とりあえず金額が知りたいから相談に乗ってね。私、こういった機械物はからっきしで」


 まずは一番肝心な液晶タブレットの所に向かう。

 残念な事にデモ機は無くって、実際に使い比べることは出来なかったけれど、学校で少し触った事があるし、そうそう大きな違いは無いだろう。品揃えはけっこう豊富でそれ故に値段の幅が結構あるけど、美空先輩のお奨めメーカーは高い製品が多い。

 本格的な人は道具に妥協してはいけないのだろうけど、私の場合は先立つ物が無いので妥協せざるを得ない。


「あまり安いのを買うと、『後で買い直す羽目になって高く付く』って姉貴からの伝言だよ」


 お奨めメーカーの中間グレードから徐々に、金額を基準に安い物へと手が伸びていくのを、彼が呆れ顔で注意してくれる。それでも念のため、目に付いた製品の型番や金額をメモして行く。


「だいたい控えたから、次は本体かな。ソフトは先輩と同じのにするから金額は分っているし、他に必要なものは有る?」


 彼の忠告を誤魔化すように質問をすると、しばらく上を向いて考えて別の質問をしてきた。


「今後はイラストを主体に活動していくの?」


「う~ん、どうだろう。まだハッキリとは決めていないんだけど、当面はイラスト中心かな。もしかすると鉛筆での風景画が主になるかもしれないけど」


 そう、学校では人物イラストを中心に描いているけれど、休日なんかは風景画を描いている。もっとも頻度としては多いわけでは無くて、宗方君が撮影している間にスケッチしている感じなのだった。

 里香ちゃんには『お散歩デート』と言われているけど、それぞれに目的があって出かけるのであって、どうせだから同じ場所に連れだって行っているだけなのだけれどねぇ。


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