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異能の始まりと正義の男


「クソっ!マジで何処だ!」


美紗希の行きそうな所。美紗希よく行くスーパー、コンビニ、友達の家、その他と色々とあたったが全てが外れ。時刻はもうすぐ、12時になろうとしていた。父さんにも聞いてみるが知らないようだ。何かあったのかと聞いてきた父さんに、仕事中で今日は帰れないという事を聞いたら何も言えずに電話を切っるしかなかった。第一、ここから片道2時間も離れた所で働いている為に呼び辛い。


「………やっぱり警察だよな…電話するか」


少し心配しすぎかもしれない。家族が帰らないにしてもまる1日帰ってこないわけじゃない。多忙な都内の警察がはたしてどこまで真剣に対応してくれるのか…。


「…!?」


カタッっと。聞き覚えのある骨どうしがぶつかる音を耳が拾った。


「気の…せい…だよな」


ここは深夜の学校では無い。暗い夜道…出てもおかしくないが…それでも深夜を徘徊する癖を持つ史人は何度もこういう時間を歩いていた。


「…あれだけ歩き回って…出会わなかったのに、次の日に遭遇するとか…ありえな!?」


少し恐怖で身体が強ばっているが、油断なく周りを見渡す。今度確かにカタッという音を拾って、鳴ったところを見る。


「…ははっ…嘘だろ…おい」


ぞろぞろとおでましたのは10体を越える骸骨達。1体でも、手も足も出なかったのだ、勝てるわけが無い。恐怖を煽るように、ゆっくりと近づいてくる骸骨達に少しづつ後ずさる。


「ふざけんな!あれだけ探して出てこなかったのに!なんで今!」


あれだけ焦がれた幻想の存在。もう二度と見ることは無いと思っていたソレはどこまでもしつこく史人を狙ってくる。走って逃げ出した史人を骸骨達も加速して追いすがってくる。


「クソ!誰か!警察…?無理に決まってるだろ!電話で…誰か……鮎川は…嫌だ!後は…最悪だ!相馬の野郎に………出ねぇ!」


走りながらスマホで助けを求めようとするがどれも外れ。鮎川にも電話したがこちらも出ない。


「あとは…!」


電話の少ない登録者を見てみる。あと、一人昔馴染みがいるがこの危機に役に立つとは思えない。


「………ここ…昔よく来たな!」


ここら辺の住宅街はよく知っている。誰の家がどこにあるかも。


「相馬家!そういやこの近くだ!家にはいてくれよ…相馬!」


もし家にいなかったら嫌味を言いまくってやると、体力を全部使う気で相馬の家へ向う。


「ここぉ!」


家の前でインターホンを連打と同時にドアを開けようとするが、当然鍵はしまっている。骸骨達が近づくなかドアが開かれるのを待つ。隠れている為に少しだけ見つかるまで時間が稼げるがそれも長く持たない。早く鍵を開けてほしいが…。


「……もしかして、家に誰もいねぇのか?」


あいつは一人っ子。しかも親は海外だとか言うどこのラノベ主人公だと言いたい奴だ。出てくるのは相馬本人だが、それがいない。


「…あぁ、最悪だ…」


賭けに負けて天を仰いだら、塀からこちらを見下ろす骸骨達の顔が並んでいた。今度こそ、完全に死んだなと諦め顔をガックリと下に向ける。


「「「カタカタカタカタッ!」」」


骨を鳴らしに諦めた史人を見る。疲れて動けない哀れな敗者を笑う、その髑髏がポトリと史人の足元に落ちる。


「……斬新な笑い方だな、おい」


首を目の前において笑うとか、前衛的すぎて普通に引くわ。と、関係ない事を考えていると同じようにボトリ、ボトリと髑髏が落ちていく。目の紫色の光は失われて、黒い霧となって消えていった。


「……んなわけねぇよな…」


再度上を仰ぎ見てみると、その塀の上に見知った男が白く光る剣を握って、そこにいた。


「遅くなってすまない。僕がいれば安心だよ…それともまだ傷が痛むかい?」


「あぁ…俺が悪かった…許してくれや」


ニコリと微笑む相馬優人の意趣返しに、大きく安堵の息を吐いて両手をあげて降参の意を告げる史人。いまばかりは心の底から相馬に感謝するのであった。







「なるほどね…美紗希ちゃんが…」


何故こんな遅い時間にここら辺を彷徨いているのかと言われて事情をひと通り説明した史人。


「……心配なのは分かるけど…史人は家に帰った方がいい。美紗希ちゃんは僕が責任をもって探すから」


骸骨達はまださまよっているかもしれない。今度は助けに行けないかもしれない事を考えると、確かに深夜の暗い町中を歩き回るのは危険である。あの骸骨達に対する対抗手段を持つ者、つまり優人が探した方が効率的で安全。勿論、理解しているが。


「それは無理だ」


今この瞬間、危険な目にあっているかもしれないのに家で帰りを待つなんて、こと妹に関しては不可能だ。


「しかし…あの骸骨達は、まだ近くにいる可能性が高い。野良魔術師が相手だとすると…僕達、国家魔術師でないと対処できない」


野良?国家?魔道師?全てが初めて聞く単語だ。なにか不穏なものを感じるが、だからといって捜索を諦めるということにはならない。


「関係無いな。助けてくれたのは感謝するが、それとはまた違った話だ」


美紗希が失踪した事と、相馬が追っている骸骨を操る野良魔術師とかいう奴。関係があるのだろうか?どちらにしても、あんな骸骨が彷徨いているのであれば家に帰って大人しく待っているわけにはいかない。


「……最近…若い女子が失踪するという事件が起きている。帰ってくる頃には、精神を病んで自殺する子もいた。何があったのか聞いても誰も何も答えはしないが…医師の診断だとかなり酷い強姦された形跡があったらしい」


唐突に相馬が自らが追っている事件の内容を説明し始める。その説明はまるで諭すかのような口調だ。


「……まさか…」


「その犯人だと思われているのが今僕が追っている野良魔術師。骸骨を操る事に長けた、ネクロマンサーだ」


「お前は……その話を聞いて俺が大人しく帰ると思ったのか?」


「違う。…言いづらいけど…最悪を覚悟して欲しいんだよ」


「………」


何も答えずに、相馬から背を向けて歩き出す。慌てて相馬が追ってくる。


「…何処に行くんだ!」


「骸骨を探して何処にいるか教えて貰うんだよ。操ってるんだったら俺の事も見えてんだろ?……俺のっ!妹に手を出したら!!ぶっ殺すぞ!ってなぁ!!」


頭に血が上っている事は自覚している。あれだけ死にかけてまだ学習してないのかと自分でも笑ってしまう。が、それでも美紗希を探す足を止めることは無い。


「このっ!馬鹿!頭を冷やせ!」


「離せ!この!ガッ!?」


後から押さえつけられてた為に暴れて離れようとするが、細身の相馬からでは信じられないような力で止められる。それにしても、怪我させなように配慮している事が伝わるくらいには手加減をしてだ。


「この程度の拘束をとけない君じゃ!無駄死にするだけだ!頼むよ!ここは…僕に任せてくれ…」


「……折れよ…俺の腕の骨を。それでも俺は行くぞ。もう、後悔はしたくないからな」


力不足は承知、無駄死にも承知。それでも行く。その覚悟を相馬に伝える。


「………分かった…。じゃあ…おやすみ」


最後に見たのは悲しそうな相馬の顔。己の身体に()()()が注ぎ込まれる感覚を感じて、意識が遠のいていく。


「……み………さ……」


ブツンと、意識は途絶える。身体を満たす()()()に耐えられくて強制シャットダウンしたかのように。





目覚めたのは自分の部屋の愛用のベットの中。慌てて起き上がり、時間を確認する。針は深夜の二時を指していた。


「クソッ!相馬の野郎!やりやがったな!」


そう叫び、そしてすぐに口を塞ぎ周りを見渡す。近くに相馬がいたらまた眠らされるかもしれないからだ。


「いねぇな。クソが!あの野郎2時間も寝させやがって!すぐ行かねぇと!」


ここにはいない相馬にいきりたち、ナイフを改めて懐に忍ばせて家から飛び出る。




相馬があれほどの覚悟を示した史人をたった2時間で起こすような事をするだろうか?本来はもっと長い時間寝かそうとしたはずだ。それなのに、史人は2時間で目が覚めた。



―――必死に走っている為か気が付かない。身体がいつもより数段軽くなっている事に。








「はぁはぁはぁ…見つけたぜぇ…コラァ…」


街中を走り回って30分、探していた骸骨を見つける。それは今までと違い集団ではなく、単独活動をしていた。もしかしたら、集団活動している骸骨達はもう、相馬達がほとんど消したのかもしれない。だとしたら、ここで会えたの幸運だ。


「おい、コラ。聞こえてんだろ?いるんだろ?テメェのとこに!美紗希に触ってみろ!テメェをぶち殺してやるからな!」


「カタ、カタカタ!カタカタカタカタァ!」


それは、突如現れた史人を見つめてひとしきり笑った後。史人に背を向けて歩き出す。後ろの史人を方を振り向き、カタカタと鳴らしながら手で来いというジェスチャーを行う。


「上等だ…行ってやるよ。覚悟しやがれ」


それは自分に言っているのか。僅かに身体が震える己がいることがわかる。どう考えても殺されるだろう。でも、ここに来た。勢いのせい…だけでない。確かな覚悟があってここにきたのだ。


「やってやるよ…」


怒りが混じった戦う覚悟が科学では説明出来ない稲妻を一瞬、史人の右手に走らせた。


その異能の芽は幸運か不幸か。どちらにしても、これから史人を襲う全てはこの小さな稲妻から始まる。






数が減ったとは言え骸骨がいるというのはまだ犯人は捕まっていない証拠であろう。これだけ大胆な犯行をよく行っているというのに捕まらない。自分が手を下さず、骸骨を操る為にその捜査は酷く難航している。


「……相馬くん。捜査はいったん中断です。野良魔術師の事件が他の所で起きました。そちらの方に向いましょう」


酷い隈が目立つ細身で壮年の男性。肩に届くほど長い髪もボサボサで白髪が目立つ。その男の言葉に相馬は焦る。


「ま、待ってください!女性がまた失踪したという報告が入っているんです!もう少し…」


「これ以上の捜査は無駄です。今の我々ではすぐに捕まえることができない。ならば、他で起きた事件の解決に向かった方が効率がよいでしょう?あちらは比較的に単純そうな能力、今日中に捕まえることができるはずです。結果的に被害人数はそちらの方が減りますよ。いいですか、相馬くん。正義を履き違えないでください。より多くの人を救う。感情ではなく、効率で考えてください。はい…青臭い説教は終わりです。…では、行きますよ」


「…………はい…義正さん」


悔しそうに唇を噛み締める相馬。感情の感じない瞳でそれを見つめて、歩き始める義正という男。


最近から野良魔術師による事件の増加をうけ、創設された課がある。非公式の国家魔術師という国の認定を受けた魔術師を集めた、魔術師課だ。そして、この地区の課長が、この義正正義(よしまさせいぎ)である。そんな男に率いられる、数少ない国家魔術師の一人に相馬はいたのであった。


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