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俺は君と仲良くできない  作者: 松谷十三郎
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謎の少女


俺は上園涼介。なんとも日本庭園って感じの名前だ。まぁ、気に入ってんだけど。

戸坂東高校に入学して一ヶ月が経ち、もう五月。

そして俺は一度も学校に行っていない。

なぜなら俺は、入院中だからだ。


親は8年前、つまり俺が8歳くらいの頃に死んでいる。


親戚曰く、俺は金持ちのボンボンで、会社の跡取りだったとか。


若干記憶が曖昧なのは8歳の頃のショックで脳に精神的ダメージを受けてしまったからだ。


ほとんどの事は覚えているが、友達関係は全く覚えていない。

覚えているのは、家族のこと、生活に必要なこと、機会の使い方程度。


あと覚えてることといえば…



─四月九日 戸坂東高校 入学式 当日─


いつもと同じ朝。とくに何も感じてはいない。強いて言うなら昨日、今日のことが楽しみで若干寝不足なことくらい。


朝食は朝起きてすぐに食べる。なんか、めずらしいらしい。


とくに変わったこともなく家をでる。


俺の通う戸坂東高校は自転車で10分程度の所にある。

だいぶ近い。

まぁ近いから選んだんだけど…。


俺は結構交通事故ルールは守るタイプ。ヘルメットとかはかぶってないけど。

それでも交通事故にはあわないように十分に注意をして運転する。

多分俺は車に乗るようになると、制限速度ピッタシに運転するだろう。


学校まであと数キロ。


そんな時…。


女性が車に轢かれそうになっている。

とかではなく、俺のだいぶ後ろにいたはずの車が90キロ以上のスピードで俺に突進。

6、7メートルくらい吹っ飛ばされた。


意識はまだある。車が逃げていく。

何とかしてナンバーを見ようとするが身体中痛い。頭にフロントガラスの破片で切ったのか血が出ている。


だんだんと世界が白くなっていく。


────。


「ねぇ。何やってんのさ」

細く可愛らしい女声。

「あのねぇ。僕の言ったことを理解してたのかな?」

まだ真っ暗な世界に僕と名乗る女声の人物。


ゆっくりと目を開ける。


見知らぬ天井。窓からは光が差し込んでいてちょっと眩しい。

左上の方を見ると点滴のようなもの。

事故をしたのは覚えている。


「痛…。」

頭にズキンと激痛がはしる。あたまをおさえるとそこには包帯。


そして起き上がる。


「誰もいねえ」

そういうと、

「まだ寝てなきゃダメだよ」


看護婦さんが濡れたタオルを持って俺の病室に入ってきた。


「若いっていいね。回復が早くて」

「そうすか…。あなたも十分に若いですけどね」

「ガキが生意気言うんじゃないよ」


この人さり気なくガキとか言ってるよ。


「まだ寝てなよ。じゃなきゃ無理やり寝かすよ?」


怖ぇよ!何?無理やり寝かすって!?怖いんだけどぉ!?


「はぁ。じゃあ大人しくしておきます」

「素直でいい子。お利口さんっ」


今年で16歳の俺にすげえ子供扱いしてくるなこの人。


「じゃあ私はもう行くから大人しくして回復してさっさと学校行きなよ?」

「はいはい。分かりましたよ」

俺 この人苦手だわ…。


俺は再び寝転び、目をつぶる。

怪我のせいなのか、すぐに落ちる。


──────。



「…る?ねぇてばっ!」


ガバッと起き上がる。

「あれ?ここは…外?」


病室で寝ていたはずの俺は、広い草原の真ん中に寝ていた。

空は快晴。


「どこだ?こ…」

「やっと起きた!」

ここ、と言おうとした時に女声に掻き消された。


「君さ。僕のこと嫌ってるの?」

声の方に目をやる。


そこには、童顔な少女が立っていた。身長140センチ程度の幼い少女。

髪は銀髪。長さは腰まで。制服のような格好をしている。


「嫌ってるも何も君誰?」

「えッ!?」

「お母さんとお父さんは?」

「はっ??」


え?は?しか言わない少女。


「僕のこと覚えてないの?」

「はぁ。どこかであったっけ?」

見覚えのない、いやあっていたら忘れるはずもない可愛さだ。だから会っているはずはない。


「8年前──」

「!?」

思わず少女の8年前というセリフに動揺してしまう。


「君と8年前にあっているんだ」

「は、はちねんまえ……。」

8年前は両親が亡くなった年だ。


「そう。君の両親が亡くなった8年前の僕たちは会っている。まあ、昔のことだから覚えてはいないだろうけど」


「……で…」

「何だって?」

「なんであんたが知ってんだよ…。」

「ほんとに君は何も覚えていないようだね。僕のした忠告も全て」

「ちゅう…こく?」

「そう忠告」


俺が聞くと即答で返す少女。


「君あの日からしなくなった、もしくは出来なくなったことはないかな?」

「!?」


俺には心当たりがあった。


冒頭に言った覚えていることの一つ。

それは…

「女の子と…仲良くしない…こと…」

「ピンポーン!だいせーかーい!

君は女の子もしくは女性と仲良くすることを禁じられた。だけど君はその契約を破ったんだよ」

「破った…?」

「君、3回も女の子とデートしたでしょ?」

「で、デートじゃねーし!ちょっと飯食いに行っただけだし!あいつはただの友達だし!」

「へぇー。仲良くしてたんだ」

「はっ!?」

「はぁぁ」

ため息をつく少女。

「せっかく僕が黙っててあげてたんだけど、言っとくね」

「な、なんだよ」


数秒の間。


「君の仲良くしてた子、事故で意識不明の重体だよ」


「……」

「まあ、君も中学生で思春期ってのもあったからね。僕もそのへんは分かってるつもりでいるけど」

「………」


何も言えない。

が、俺は語り出す。


「分かってたつもりだった。記憶が曖昧でも女子と仲良くしてはいけないってことはしっかりと覚えてた。ずっと俺は女子から避けてきた。嫌われようとしたんだ」

「……」


次は少女が黙り込む。


仲良くしまいとはしていた。心がけていた。

でも…

「君はモテるのだろう?顔がいいからね。」


「顔がどうとかは分からんが、みんなは俺に仲良くしようとする」

女子だけでなく、もちろん男もだ。


「もう時間が無いね。とにかく君は女の子と仲良くしてはいけないんだよ。いいかい?君は契約に従ってもらわなければまずいことになっちゃうんだよ」


「さっきも言ってたけど、契約ってなんだ?俺は何もした覚えはない」

「そうだね。実際君がした訳ではないからね。君の両親が君だけを助けるためにした契約だよ」


「そうか…」


「そろそろ時間だ。また会えることを願うよ」


「時間ってなんだよ。お前は誰なんだ」


少女はしばし黙り、


「そうだね、悪魔の子とでも呼んでおこうか」


そう言いながら少女は手を振る。


視界が暗くなっていく。


残酷な真実。何かを思い出しそうな気がした。




松谷十三郎です。

この度、新作を投稿しました。

今後も宜しくお願いします。

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