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花火  作者: 夏目洋介
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第一話 くすぶる

◇花火◇


「あっ、サチ?花火しない?」


 夜、唐突にタツヤに誘われた。


「いいけど・・・まだ6月だよ?早くない?」


「いいから、いいから。じゃあ、近くの桟橋でな。」


 私の返事も聞かずに携帯を切った。


〜〜


 付き合い始めて5年。


 周りの友達からはまだ結婚しないの?とか言われている。私自身、意識をしていないわけではないが、今年でもう27歳。身を固めたいというのも事実だ。それに至らないのも肝心のタツヤからまったくそういう話が出ないということがある。彼自身その気がないわけではないと思うが、私が結婚に関する話をしだすと話をかわしたがる傾向が見えるのは確かにある。

 最近のデートもなあなあになりがちで、互いの家で映画を見て、ファミレスで夕食をとり、簡単なセックスをして別れるのが定番のコースになっている。


 タツヤは別れたがっている?


 嫌でもそんな憶測がでてしまう。そんな時のこの花火の誘いだ。正直、とても嬉しかった。定番のデートじゃないのもそうだが、何よりタツヤから誘ってくれたのが嬉しかった。もしかしたら結婚の話なんか出たりして・・・そんな思いが頭をうずまく。



 化粧にもいつもより力が入る。タツヤがかわいいってほめてくれた紫のアイシャドウを入れよう。服は何にしよう。もういい大人なんだから落ち着かないとと思いつつも、ピンクのキャミに白のレースのカーディガン。下はタツヤの好きなデニムのミニスカートにしよう。


 準備も済み、いそいそと桟橋に急ぐ。家から歩いて5分のこの桟橋はタツヤに最初に告白された思い出の場所だ。付き合い始めの頃は毎年ここで花火したっけっか。そんな思いが駆け巡る。


 歩きなれた道なのに何度も転びそうになった。落ち着け私。ミュールで足の裏がすれて痛かったが、桟橋に着き、タツヤを見つけた時にはそんなことも簡単に忘れた。


「ごめん、待った?」


 急いで駆け寄って声をかける。久しぶりに走り、胸がバクバク鳴った。思わずひざに手をついてかがみこむ。ハーハーと息を切らす私にタツヤは、


「俺も今来たところだよ。それよりサチ、大丈夫?」


 下から私の顔を覗き込む。私は驚いて顔を上げた。


「大丈夫、大丈夫。それより花火しよ?」


「そうだな。」


タツヤはそう言って花火を出した。打ち上げ花火、ねずみはなび、線香花火・・・そこにはたくさんの種類があった。


「よし、花火大会開始だ。」




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