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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
92/107

92闇夜に蝕む悪

今週忙しかったので短いです

時はほんの少し遡る。

幾体かの分身を放ったイテナの本体はヴァインズ王の“魔王を一月以内に暗殺する”という依頼を果たそうとしていた……。


――――イテナ視点――――――――


目の前の立派な城を俺は見上げて居た。

通称魔王城。初代魔王がそう呼んだとされるその城は、そんなおどろおどろしい名前とは裏腹にその城は酷く実用的で装飾の殆んどない機能美すら感じられる武骨な物だった。

その巨大な城は夜に紛れることで更に巨大化し、イテナに圧迫感さえ感じさせた。

さて、此処まで来るには大分苦労した物だ。距離さえなければもっと早く来れたのだがな。


魔人国は大陸西側3分の1という巨大な版図を持ち、大陸1の勢力を保っていた。ヴァインズ王国やクライシュテス王国、獣人国等の国は大陸の中部に集中し、西は魔人国との国境である大陸を縦断するノルドス林、東はこれまた東3分の1を切り取る巨大な山脈バルカノ山脈に挟まれる様に存在していた。この大陸の残る3分の1を奪い合う様にして数多の人間や亜人の国が乱立しているという状況に業を煮やして行われたのが先の大同盟による2度の魔人国侵攻であり、1度目の侵攻ではオウルフが見事魔王を討ち取ったものの、その主目的である領土奪取は成功していない。魔人国はこの1度目の侵攻以降、首都を西端にあるミスティーリへと遷都し、第一次侵攻により退廃した元首都は廃墟として捨て去った。まるで自らの殻に籠る様にして。結果、国境であるノルドス林とは物理的な距離が開き、それが障壁となり人間達の侵攻をより困難な物とした。歴史を紐解けば明白である様に2次元戦争に於いてその距離は脅威であり、焦土作戦ですら展開可能である。逆に、空間魔法を使える

レウリ、新たに開発された新兵器であるPSを持つ魔王軍にはその距離の多寡は関係ない。かなり有効な戦術であると言えよう。その事が第2次侵攻戦にて判明した以上。此れより先に大規模な魔王討伐戦が行われることは無かったことだろう。仮に有ったとしてもオウルフや『ドラゴンスレイヤーズ』等らによる少数精鋭による討伐であったに違いない。故に今回のイテナの暗殺はその先駆けとも言え、全ての侵攻戦に勇者の居たことも鑑みれば第3次侵攻戦であるとも言えなくもない。


「流石に走って3日も掛かるとは思わなかったな。この大陸は元居た世界の大陸よりも3倍程大きいらしい。地図の縮尺を誤ったな」


当然、ノルドス林から魔王城までの道のりは気が遠くなる程であり、決して3日で走破できるような類いの物ではない。イテナがこの時言ったことはもし誰かが聞き咎めたのだとすれば冗談にしか聞こえなかっただろう。それこそ化け物という言葉が余程似つかわしい。


「さて、どうやって破るか」


今夜暗殺を決行する事だけは決めているが、下見などは一切行っていない。それは俺の侵入の技術が卓越していることを自負しての物であるし、破れない警備など無いと断言すらしてやろう。

これは自己主観的な自惚れではなく客観的な事実だ。事実、元居た世界に於いて侵入出来ない場所など無かった。それが、異世界の、更に一番警備の固いだろうと思われる場所に来たのだ。

そんな極上のビックリ箱。味わう前に中を知ってしまうなど品がない。己を試すのもまた一興だろう。


「済まんな。どうせならどちらの世界がより優れているのか試すのも良かったのだが……。まぁ、これも俺の能力だと拡大解釈しておいてくれ」


やれやれ、1度楽をするとそれが染み付いて敵わないな、などと思いつつある1つのスキルを発動させる。


≪隠身を発動しました≫


俺の気配が唐突に途絶える。その精度は自分でさえ見失い掛ける程だ。ウム、やはり何度やっても素晴らしい。此れ程の感覚は余程調子の良い日でなければ得られない。

過去最高の『ステルス』だと言える。此れを何の代償もなく、更に煩わしい視線計算などをせずとも済むとは……。スキル様々だな。


「卑怯などとは言ってくれるなよ?これを開発した時はかなりの面倒さだったんだ、たった今その恩恵を享受して何が悪い」


まだ見ぬ魔王に対して弁解すると改めて何処から侵入するか決める為に城全体を見渡した。


「良くもまぁ、此処まで……。と言わずには居られんな。この城の警備担当者は相当な変態に違いない。余程の偏執狂だ」


城に辿り着くまでには様々な障壁がある。

先ず物理的な物から行くと城を2重にも3重にも囲んだ水堀に塀、泳いで渡れない様にしっかりと向こう端には反しと尖った丸太が刺さり、その返しの上に塀が立っている。それも城下町からだ。城下町に付くまでに一体幾つ塀を登ったか数えるのも億劫だ。

勿論見張りの数も吐き気がする程詰められており、これから戦争でもするのかという限界態勢っぷりだ。それを越えてもまだ城壁がある。更にその城壁の前は空堀が掘ってあり、此方側に尖った丸太。城側にはアレは……何だ?良く分からんが大小様々な石が積み上げられて壁の様に成っているな。それすらも磨かれているのか取っ掛かりが少ない。登るのに骨が折れそうだ。そしてその石の壁と城壁を連続踏破した先の見張り台には四方四人が目を光らせている。いやはや、恐れ入る。

此でもまだ半分とは。

次は魔法的な防御だな。先ずは外からの攻撃魔法、物理攻撃を遮る結界は標準装備であるかの様にサラッと張ってあり(俺の知ってる城はこんな物玉座の間ですら張ってない。どんな魔力の無駄遣いだ)、内部には様々な検知魔法。見える限りで例を挙げると踏むとアラームが鳴る物、踏んだ途端爆発する物(こういう類いの物は塀の上などの見張りが物理的に踏むことが出来ない場所に設置してある)、情報は管制室に届けられるのだろう。熱源を常に探知し続ける様に魔法媒体がそこら中に張り巡らされ、登録者以外の魔力探知様の魔法まで多岐に渡るトラップが仕掛けられている。

良くもまぁ、此れ程の金を警備費に湯水の様に使えるものだ。熱源探知の魔力媒体1つ取っても決して安くはあるまいに。


「これは……。俺の元居た世界であれば諦めるレベルだな」


よもやこの罠のジャングルを『ステルス』による動きが制限された状態で突破出来るとは思えない。元居た世界であれば品とか趣や風情などをかなぐり捨てて罠ごと踏み潰して力業で突破したことだろう。幸い、速力と膂力は有る方だ。標的が逃げる前に仕留めることは出来る筈だ。物事を達成出来るかどうかが最重要項目であり、遣り方に風情を求めて失敗するのは本末転倒だろう。

しかし、今はステルスによる挙動制限はスキルのお陰で存在しない。これで見張りという最大の障壁は取っ払った。後はもうアスレチックの領域だ。


トーン、トーン。と心臓の鼓動と同じタイミングで軽くジャンプをしながら体の駆動を確かめる。踏んではいけない場所、障害物の場所などを頭に叩き込み、準備を整えた。


「行くか」


そんな言葉を置き去りにした様に全速力で駆け出すイテナ。その速力は正しく疾風のそれであり、それでいて足音など一切しなかった。

黒い一陣の風となったイテナの前に現れたのは水堀、そして塀である。塀の上にはびっちりとアラームなどが張り巡らされており、正しく足の踏み場もない。鍵縄などを掛けることさえ叶わない。更に水堀と塀の間は数センチあるか無いかであり、足を掛ける場所すらない。通常なら正規のルートを通らざる得ないことを分からせる様な造りになっている。

水堀を越え、数センチの足場に足を掛けること自体は出来るが、其処から塀を乗り越えることは難しいと判断した俺は、咄嗟に水面に付けていた面頬を叩き付け、と同時にその面頬を足場にして高く飛び上がった。ポチャリと面頬が水底に沈んだのと反対に、イテナの体は軽々と塀を飛び越えた。

飛び越えた後、落下するまでの短い間に向かいの塀へとざっと目を走らせる。何せまだ2回も同じことをしなければならない。後二つも私物を水堀にくれてやるのは癪だからな。

イテナはその夜目の効く目でギロッと塀を睨み付け、取っ掛かりを探す。そして見付けた。一部漆喰が剥げ、塀の一部に窪みのような物が出来ている。

俺はにやりと笑うと着地した後方向を変え、その窪みの正面になるよう方向を転換して、向こう端の数センチの足場に届くように跳んだ。

壁に張り付く様にして足場に到達するとその窪みに両手の親指を掛け、反転。頭を逆さにしたヤモリの様な格好で塀に張り付いた。そして更に親指に力を掛けると親指の力だけで跳ね上がり、塀の上に登ることなく逆立ち腕立ての要領で飛び越える。

3度目の塀も同様にして漸く塀は全て越えた。そうして今度現れるのは空堀に城壁で跳ね橋以外は人を寄せ付けない造りと来た。

はぁ、此処は仕方ない。くれてやるとするか。

それ以外の侵入法を導き出せなかった俺はこの見事な城壁に敬意を表し、私物をくれてやることにした。俺は懐から棒手裏剣を3つ指に挟んで取り出すと、抜き様に城に向かって撃った。

どうやら物理防御結界は塀より外に展開している様で、その棒手裏剣は何の抵抗もなく城壁に突き刺さった。

タンタンタン!

跳び上がって空堀を飛び越えた俺はその3つの棒手裏剣を足場にして城壁の上に到達する。アラーム等の罠のない所を選んだので、見張りから見えないことも合わせ、ここに留まって居れば安全である筈だ。


ビュオオオ……。


冷たさを孕んだ夜風が、イテナに向かって吹き付ける。

俺は振り返って通った道順を暫く見詰めると、ボソリと呟いた。


「85点」


不思議と誰にも聞こえない声音であり、もやもやとした声の様な何かは吹き荒ぶ冷風によって浚われて行った……。


「やはり長く前線を離れていたツケか。デスクの椅子を温めることが多かったからな。これは戒めとしよう」


元居た世界では前線の仕事はなくなり、裏での権力闘争がメインの仕事になっていた。それに破れた所で此方の世界に来たのだが、それはともかく暗殺者上がりである筈の俺が侵入に手間取るとは……。更に今振り返ってみただけで幾つか改善点も思い浮かぶ。

年は17から取ってないので単純に鍛練不足だろう。情けない。

此れからは鍛練時間を増やさねばならない。そう心に固く誓った。


「ただの遊びかと思っていたが案外有意義だったな。後は魔王の首を狩れば依頼は修了か……」


城壁に立った一人の青年の顔がにやりと崩れた。


「容易い」


バタバタバタ!

そんな言葉を置き去りにして青年の体は城壁の暗がりの中へと落ちていった……。


良く計算してないけどまだ一ヶ月立ってないよね!?

大丈夫だよね!?


盗賊団を追っかけてたら黒幕が居てそいつも倒しちゃうなんてスッゴく主人公だね!


司祭が結婚しても良いの?

スーザン「本当は教義で禁止されてますけどそんなの誰も守って無いですし、いざとなったら周りの結婚している司祭同士で結託して教皇引き摺り下ろすので全く問題有りません☆」

(ゝω・´★)

正也「その態度には問題大アリだからな?」


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