85一難去ってまた一難、つってもこれはあんまりじゃありませんかね……
先に謝っておきますご免なさいm(__)m
文章中不快な表現があったとしてもキャラクター個人の考えであり作者の思考ではありません。
――――正也視点――――――――
3時間程歩いて漸く俺達はノルドス林に着いた。山歩きかよっ!と途中で思ったが、山歩きより景色が変わらない分辛い物がある。大体帰宅部ニートに3時間とか歩かせんじゃねぇよ。足パンパンだわっ!これが帰りも有るのか……。明日絶対筋肉痛だ〜。はぁ〜憂鬱……。
「さぁ、神の御導きの下薬草採取に励みましょう!何をグズグズしてるんですか?マサヤさんは」
のでこのテンションがクソ程ウザい……。
スーザンはこの間の通り人のことなんか気にしないゴーイングマイウェイっぷりを発揮し、パーソナルスペースが無いんじゃ無いかって位俺に顔を近付けガッツポーズを取る。
門を出たばかりの頃はそこまで気にならなかったが、疲れた体にはムカッとしか来ない。ただただウザいだけだ。俺はダルい体を無理に動かして今度は俺の方からずいっとスーザンへと顔を近付ける。この方が脅しの効果も出るだろう。
「気分にテンション、東京湾、沈むんだったらどれが良い?」
意訳:黙れ。
「て、テンションでしょうか……」
クソが。普通に答えやがって。もし東京湾と答えたら本気で実行してやろうと思ったのに。空気で察して真面目に答えやがった。空気読めねぇんじゃ無かったのかよ。肝心な時だけ空気読みやがって……。人の成長ってのは喜べねぇモンだな。まぁ、意図だけは伝わった様だがな。
「チッ」
思い通りに行かない返答に思わず舌打ちすると、それがどうやら聞こえた様でスーザンは心底驚いた顔をする。
「舌打ち!?私また何かやらかしましたか!?て言うかマサヤさん性格変わってませんか!?」
うっせぇ。人間疲れると本性出んだよ。ヤな性格だろうがテメェのウザい性格よりゃマシだろ。
「そんなんじゃ主神に対して失礼ですよ!?常に謙虚謙譲を美徳とし冷静に物事を判断せねば!」
「信仰、宗教の類いなら御断りしております。他を当たって下さい」
冷静に物事を判断って……。全力でブーメランやないかい。お前程人の話聞かねぇ奴見たことねぇ。あ、いや、割りと居たか。優人とか。スマン。間違って罵った。
「ムキーッ!勇者だなんて主神様に気に入られておきながらその態度〜。絶対に改心させて見せます!見ていて下さい司祭様!どんな手を使ってでもやり遂げます!」
冷静な判断!神官がどんな手を使ってでもとか言っちゃダメだろ。
だがまぁ優人の話とスーザンの娯楽神がなんちゃらという話を総合すると俺達を呼んだのってその主神?くせぇんだよなぁ。優人が言うには俺と咲良が目を付けられてそのバーターっていうか口実として優人を使ったって話だ。優人が言うんだから正しいんだろうが俺的にはあんま納得行かねぇなぁ。勇者にするなら優人の方が良くね?俺が神様だったらそうするね。
俺1度も優人に勝ったことないし。勇者にするならソッチのが効率良いだろ。まぁ、頭脳バトル系の主人公からの路線変更臭が凄いが難点だがな。
話が逸れた。んで、スーザンの話的には俺の運命に苦境を足すのが娯楽神と、考えるだけでイラッと来るが置いておく。俺が言いたいのは俺が勇者になるのが運命に含まれてるってことだ。
……何だコレ、口に出すと凄い恥ずかしい……。勇者になるのが俺の運命(´・ω・`)キリッとか……何処の中二病だよ。うわー、自分でも無いわー。
深く考えると発狂しそうだからサラッと流そう。運命神とかが居ない限りは多分主神の領域じゃね?さっきのスーザンの『勇者だから主神の御気に入り』発言的にそうだと思う。つまり俺を人生ドブに捨てさせて勇者にしたのはその主神の可能性が高い。
長々と書いたがよって結論は『主神教には一生入らねぇから諦めな』という訳だ。結論みじけっ。
「ムリだ。諦めな」
スーザンに向かって無慈悲に宣言すると俺は依頼をこなさなければいけないことを思い出し、1つ溜め息を吐いた。
「はぁ、しゃあねぇ。皆で手分けしてさっさと終わらすか。で、どんな草を採りゃ良いんだ?」
俺が優人に聞くと優人は足下に有った草を一本摘み取ると言った。小さな白い竜胆に似た花が咲いた網状脈の双子葉類であるが、割りとシュッとした形をしており、大変可愛らしい。もし元の世界にあればガーデニングとかで人気になりそうな種である。
「おっ、有った有った。これかな。これがシラユウ草。依頼的には20株で達成だけどそれだと宿泊費とか考えて赤字だから黒字にするとなると一人20株採る必要が有るね。5人で100株。頑張って。あ、採る時は根は残しといてってさ。根も一応はポーションになる成分は含まれてるんだけど微量だし、採らないで居た方が根からまた生えて来るしね」
はぁーい。要はやり方間違えた草むしりみたいな感じだろ?任しとけ。草むしりなら学校行事で嫌になる程やったわ。業者雇えば良いのにと何度呪ったことか……。
「成る程、こういう感じか。よし、覚えた!」
俺がじろじろとシラユウ草を見て特徴を覚える。しかし既にイテナさんは一瞬見ただけで覚えたらしくどこぞへと消える。そのことに気付いた俺は肩を竦めると一方向を指差す。
「んじゃ俺は此方で」
俺が言ったのが皮切りとなって三々五々散って行く。ただ女子達3人(2人と1匹)は一塊で探す様だ。非効率的だと思うがなぁ……。奥は魔物が出るらしいので浅い所だけで採取に励むとする。ギルド本部が在るだけあってドレスト付近は本当に魔物が少ない。草原どころか林の浅い所さえあまり魔物が出てこないそうだ(Mrs.Bは本当に珍しい例だったらしい)。此処に来る途中も一切魔物には出会わなかった。
「あ、集合場所は此処で!此処を見失わないレベルの所で採取ということで!ノルマに達しなくても昼頃には一度集合!あまり遅くなると野宿になる!」
優人が伝え忘れたのか皆に伝わる様に大声で付け足す。了解だと返すと優人は少しノルドス林の奥側へと踏み入って行った。
魔物出るだろうに大丈夫か?まぁ、優人のことだろうから大丈夫だとは思うが……。俺は危険を避けて浅い所を平行移動する様にシラユウ草を探すことにする。魔物なんかに出会いたくないしな。未だにレベル1だ。これで死ぬとか嫌過ぎる。
「お、有った!」
早速1株発見。俺の目の前には小さな白い花が綺麗に咲いていた。良かった、案外早く終わりそうだ。
林、というだけあって背丈の高い植物が多いが、花という目印がある分見付けやすい。俺は摘み取ったシラユウ草を丁寧に持ってきた篭に入れる。
それから俺は夢中になってシラユウ草を探した。いや、まぁ、いつもの草むしりの時の様にサボろうかとも一瞬思ったんだが優人の20株無いと1日の作業的に赤字だと言われたことで将来の借金苦が容易に想像出来てしまったので心を入れ換え一生懸命探した。
結果としては2時間程経過して16株。昼までには太陽から推測するにまだ後1時間程あるので十分目標に到達出来そうである。場所を移すのに少し時間が掛かりそうだがな。あ、今更ながらコッチの世界にも太陽は有った。当たり前ではあるんだがな。前に暇潰しで腕時計で調べて見ると北半球でした。まぁ、どうでも良いけど。
そうして移動しようと篭を持ったその時……。それは起こった。始まりはガサゴソと揺れる茂みであった。
「お、優人か?」
そう聞いてみたものの返答は無く……いや、返答は有った。ソレがにゅうっと茂みから顔を出したのである。
さて、突然だが此処でクイズだ。
俺tsueee小説において頻出する中ボスポジションの魔物とは何でしょう?
答え、熊(俺調べ)。
初めての遭遇はゴブリンが大体だが(俺調べ)、中ボスで、となると途端に熊をベースとした魔物が出てくる。魔法を使うモノ、鎧の様な物を纏うモノと種類は豊富だが主人公が森に入れば熊が出てくるのはまず間違いない(偏見)。中には特殊個体というのもちらほらと見受けられる。
そして展開的には2パターン。物語の盛り上がり展開で主人公が苦戦(新技の披露や主人公の能力の試し)か、苦戦せず倒したことをモブが褒め称えるか。これはどのみち後のギルドで強さの指標的な物が示され世界設定を表す重要な駒ともなる。例を上げると「と、特殊個体!?こ、これは普通なら○○級の冒険者でも討伐が難しい筈!何て強いの!?好きです!」となる(偏見)。
して、そのことを踏まえ逃避してないで目の前(現実)を直視しよう。
「熊だよね!?思いっきり熊だよねぇ!?」
俺の目の前に居たのは大きさ目測4メートルを越える巨大な熊が姿を表していた。色は保護色を完全に手放した目も覚める様な赤色であり、この先捕食者として生きていけるのか不安を抱いてしまう。
浅い所はギルドで間引きしてあるから魔物は出ねぇんじゃねぇのかよっ!
そう心の中でツッコんでも目の前の熊が消える訳でもない。見るとその熊はグルルル……。と威嚇音を出しながら直ぐにでも躍り掛かれる様な戦闘体勢を維持している。さっき大声でツッコんだのが不味かったのかも知れない。
大体中ボスの熊と戦うのは(師匠からの修行やチート能力によって)ある程度成長した俺tsueee小説の主人公が戦うから面白いのであってレベル1のモブである俺が戦った所で何一つ面白くない。スプラッタシーン3秒前である。分かったか?運命を司る主神様とやらよ。大幅な待遇の改善を要求する。場合によっては主神教に入信してやらなくもない。
……祈ってみたものの現状が好転する兆しが一向に見えないので神頼みは諦める。最早神は死んだと唱えるニーチェ様に弟子入りしたい。きっとこの世界に来る時に会った神は実は悪魔が嘘を吐いていたに違いない。運が無いのは咲良の筈だったのになぁ。この世界に来てから移ったか?畜生が。
さて、どうしたものか……。いや、どうするべきかは知っている。伊達に小学校の遠足で山に登ったりしてない。熊と会った時の対処法は絶対に目を逸らさないこと。逃げる物を追う習性があるからだ。そしてゆっくりと下がる。或いはその場所から動かない。決して走って逃げたりしてはいけない。戦ったり、落とし物のイヤリングを拾って貰って一緒に歌ったりするのは論外である。
ゴクリ……。俺は一つ唾を飲み込むと覚悟を決めてゆっくりと後ろに後ずさる。俺は獲物じゃない。そんな気持ちを込めて熊を睨み付ける。
幸い熊は直ぐに飛び掛かる様なことはなく、こちらをじっと見ている。そのことに割合余裕が出てきた俺はついでとばかりに熊に対し≪審眼≫を発動する。
――――――――――――
種族 レッドグリズリー
レベル 17
HP 152/152
MP 68/68
スキル
???
――――――――――――
はい、毎度毎度詰んでおります。いや、まぁ、薄々分かってたよ。強いんじゃないかなって。
コレ一撃でも食らえば終わりだね。直感で分かるわ。モブ2人に比べれば遥かに弱いだろうけど今回はハンデ無いしな。
掛かって来たら体力なんて紙だからアレを使った方が得かな?不安になり、有るかどうか確かめようと懐を探る。
それが不味かったらしい。急に動いたことで熊を刺激したのだろう。
熊は「ブオオオオ!!」と一声叫ぶと此方に向かって突進してくる。
「危なッ!!」
ドドドッと熊が接近し、急速に巨大化する様な感覚に背筋が凍った俺は慌てて真横に回避する。飛び込みをする様な形で闘牛士の様に避けると前転をして素早く周りを見て熊の位置と自分の状態を確認する。随分ギリギリだった様で熊の爪にでも引っ掛かったのかズボンの裾が少し破れていた。
少し罷り間違っていたら死んでいたことに自然と震えが来て心臓が早鐘を打ち、息が荒くなった。
「どうせ一撃で死ぬ……。なら!」
俺は熊に動きが無いか見据えると懐に有った一本のナイフを取り出す。
「ふぐっ!」
そして俺はそのナイフを迷うことなく一気に自分の胸へと突き刺した……。
「父さんは今居るか?」
ガルシアは外用コートを侍女に脱がされながらそんなことを聞くと侍女は首を振った。
「旦那様は今は会合中で御座います。現在いらっしゃいません。もう間も無く帰って来られるかと」
ガルシアも直ぐに会えるとは思って居なかったので何とも思わずに了承する。
「そうか。ならば母さんと会おう」
何でもない様な口調でガルシアが言うのに対し、侍女は驚いた様に言葉を無くす。
「……ッ!!それは……。会わない方が宜しいかと」
珍しく自分の意見を言う侍女をガルシアは睨み付ける。
「何時僕が君の許可を必要とした?帰省した息子が母と会うのがそんなに不思議か?」
その闇の様に深い蒼の瞳に気圧された侍女は1歩後ずさると慌てて頭を下げた。
「いえっ!!申し訳ありません!!出過ぎた真似を!!」
「分かれば良い。それと、僕に2度と同情するな。虫酸が走る」
先程の反応から侍女の同情心を素早く嗅ぎ取り、怒りをぶつけた。ガルシアに取って見れば羨望されこそすれ同情されるなど冗談ではない。ガルシアは自分で自分を有能だと確信している。彼としてはそう理解しない周囲こそが理解不能であり、怒りすら覚える。
「かっ、畏まりました」
狂った様に頭を下げる侍女に満足すると本来の目的を思い出し、彼女に告げた。
「では行ってくる」
「では“気を付けて”行ってらっしゃいませ。坊っちゃま」
気を付けて、の部分に力を入れた侍女の見送りにガルシアはフンッ、と鼻を鳴らして答える。彼に取ってみれば同情も、心配も無用なことである。全ての物がガルシアより劣り、同情される側であることを自覚すべきだとさえ思っていた。ただその心配が強ち間違いでないことが彼を余計に苛立たせた。
その苛立ちを強く踏み締めることで紛らわしながら母の部屋へと向かう。南向きの一番陽当たりの良い部屋。そこは本来子供部屋となるべき場所の筈だったが、母の“療養”の為にその部屋があてられることになった。ガルシアは長い廊下を歩きその部屋の前で立ち止まると軽く一息吐くとノックした。
「はぁーい。貴方。早かったのね」
返答は直ぐに有った。だが、どうやら部屋の主はガルシアを父親であると勘違いをしているようである。そのことに対してガルシアは気付いて居たのだが、どうドアを開けさせるかを考えていた彼としては好都合な勘違いであった為、態とその間違いを指摘せず、ただドアが開かれるのを待っていた。暫くしてドアが開かれる。蝶番がキィ……と微かな金属音を響かせ、そして親子は対面する。
「ヒィヤヤヤヤアアアア!!」
そして反応は劇的であった。ガルシアの母であるナディーン・フォン・メイスフィールド=パーラはドレスのまま見苦しく尻餅をつくと、そのままの姿勢で壁に背中が当たるまで後退する。
「た、助けてっ!!誰かーーー!!」
壁に突き当たったというのに未だに下がろうと意味もなく手を動かしながら人を呼ぶナディーン。その無様な姿にガルシアはその年相応の可愛らしい顔を苦々しく歪め、1つ溜め息を吐いた。
「はぁ、見苦しい。親子の会話だ。人払いはしておいたよ。母さん」
ガルシアの母さん、という単語にナディーンはビクリと肩を震わせると、その震えを抑える様に自らの身体を抱き締める。
「何が母さんだ化け物めッ!!私の可愛い息子を返せッ!!お前みたいな化け物の何処が息子なものかッ!!」
まるで親の仇であるかの様にガルシアを睨み付けるナディーン。そしてこれが侍女が気を付けてとガルシアを見送った理由だ。柔らかく言えばガルシアはナディーンから嫌われていた。まぁ、分からない話ではない。みるからに子供が大人の言葉を話す姿はさぞ気味が悪かったことだろう。ガルシアは自分について他人がそう思うだろうということを知っては居たが、直す気は更々無かった。
「僕は間違いなく貴女の息子ですよ。ねぇ、母さん?」
「そんな風に呼ぶなぁー!!」
ガルシアが何かが違うと思ったのは3歳になった春。一生懸命描いた似顔絵を父母にプレゼントした時のことだ。当時からガルシアは自らの才能に対して強い自負を持っていた。だがそれは今ガルシアが持っている他人を見下す様な形の物でなく、若い頃に有りがちな根拠のない自信にも似た無垢な物であった。
その似顔絵は既に幼児の域に無く、油絵の重厚なタッチは名の有る画廊の作品と言われても信じられる様な素晴らしい物であった。当然両親は一瞬血が凍った様に驚いたものの、直ぐに息子を誉めそやした。曰く「やはり神に祝福されているだけのことはある!才能が桁違いだ!神に感謝せねばな!」曰く「本当よ!凄いわ!私達の息子は必ず歴史に名を残す素晴らしい人になれるわ!これが神の才能よ!」
賢い子供であったガルシアは気付いてしまった。彼らの誉め言葉は自分を通して神に捧げられた物であることに。彼らのどこにも自分というモノが映っていないことに。ガルシアの努力すら神の名の下に抹消されていることに。その時ガルシアは生まれて初めて自らに才を与える真っ白な髪が鬱陶しくて仕方がなかった。その時ガルシアは生まれて初めて激しい感情を持て余した。それは自らを見ない者に対する怒りであり、見る目のない奴らに対する軽蔑であり、自らの才能に対する嫉妬だった。
髪さえ無ければ今彼らに愛されて居たのは僕だったのに。そう思う様になってからガルシアは視界に映る全てが色褪せてしまった。両親が優れた才能だと褒めるのも、女の子が綺麗な顔だと褒めるのも、侍女が驚き心から褒めるのも、全てがどうでも良くなった。
人が思い描くおおよそ全てを手に入れた青年はたった1つだけ最も大切な物だけが手に入れられなかったのだ。それは自らの両親の無償の愛。ガルシアは常に両親の目に少々の利益を望む視線が含まれていることを察した。そしてそのことはガルシアを大きく狂わせた。いや、元からその性質は持ち合わせて居たのかもしれない。それは“悪”の性質。
全てを赤ん坊の様に快、不快のみで判断し他人の事情や気持ちなど歯牙にも掛けず他に非情を強いて自らの目的を達成する。非常に残念なことにガルシアをそれを達成させるための財力や権力、純粋な暴力に優秀な頭脳を全て持ち合わせて居た。悪のカリスマの誕生である。
「ヒィヤヤヤヤ!その目で私を見るな!恐いっ!お前のその目が恐ろしい!!化け物めッ!!」
ナディーンは何かのスイッチが入ったかの様に再び喚きだし、少しでもガルシアから距離を取ろうと壁に身体を押し付けていた。
「何と愚かで、無様で、醜く、はしたないのだろう……」
ガルシアは一言一言刻む様に一歩一歩ナディーンに近づく。それに恐怖したナディーンは咄嗟に近くに有った枕をガルシアに投げ付ける。
「来るな!来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るなぁっ!!化け物めッ!!」
来るなの一言毎にガルシアに向かって色んな物が飛ぶ。ハイヒール、毛布、シーツ、櫛、香水の瓶、口紅、くすんだ鏡、ドレスに付いていた宝石、引きちぎった首飾り。しかし、ガルシアはさしたる痛痒を感じない。元々が筋力の弱い女が投げた物であったし、ガルシアならば魔法で弾くことも容易い。
ガルシアは投げる物が無くなりただ後ずさろうと壁に身体を押し付けているナディーンに顔を近付けるとニッコリと笑った。ガルシアのその笑みはそれはそれは天使の様に美しい笑みだった……。
「これから毎日会えるね。母さん?」
「ヒィヤヤヤヤヤヤヤヤ!!」




