82新クエスト決定
ちょっと短いです
――――正也視点――――――――
「さーて、どれにしようかねー」
優人と俺の二人は改めて冒険者ギルドに来ていた。あのモブ二人に邪魔されて出来なかったクエストを決めに来たのだ。システム自体は簡単で広間の掲示板に依頼の書かれた羊皮紙が貼ってあり、それを受付のブースに持っていって依頼を受ける。
掲示板には庭掃除や荷物運びや汲み取りトイレの清掃といった雑事から商人の護衛、盗賊団の討伐、薬草の採取といったものも。更には魔物の討伐、戦争の参加など難度の高い仕事まで様々存在していた。まぁ、俺は読めないんだけどね!優人からの受け売りである。その数は一メートル四方の掲示板からはみ出さんばかりであり、ギルドの隆盛が窺える。中でも数が多いのがギルド長が言っていた様に盗賊団の討伐であり、文面にも至急、だとか書かれていて必死さが感じられる。
しかし、俺達はその依頼を受けることは出来ない。何故なら冒険者はランクによって受けられる依頼が異なるからだ。例えばG級なら街の中の雑用のみ、F級なら戦闘の発生する依頼以外。といった形だ。俺達はG級を飛ばしてF級になったが、これは別に勇者だからという訳ではなく登録時にある程度の力を見せれば割りと簡単に免除されるらしい。俺達の場合は優人とイテナさんがモブ共を昏倒させたからな。俺は多分スロースターターのせいでG級は免れなかっただろうが優人が同じ勇者でとことんツイてたぜ。え?寄生プレイ?プライド?何それ美味しいの?
「どれにするー?」
俺が優人に聞くと優人は「これかな」と言って一つの羊皮紙を指差した。
それについて優人に聞くと薬草の採取の依頼、その詳しい内容はノルドス林近辺に自生する薬草シラユウ草を採取すること。
ノルドス林ってアレか。この街に来る間目の端にずっと映ってた。確か説明された感じだと魔王国との国境に敷かれた様な森林で、かなりの面積を持ち、ギルド本部が近くにあるせいである程度間引きされてるって話だったな。間引きされてるとは言っても外部だけで内部に深く入るとかなり強い魔物が出るらしくて魔王軍も軍を連れてそこは通れないって話だったか?
「おっ、そこなら危険も少なそう」
「じゃあ決まりかな」
そう言うと優人はその羊皮紙を剥がしてギルドの受付の所へ持っていく。それはどうやらローレンさんの所であり、それが偶々であるかは図りかねる。依頼を受ける受ける旨とシラユウ草の説明を求める優人を尻目に俺は気付いた。気付いてしまった。
俺の周りにろくな女が居なくない?
イヤイヤイヤイヤイヤ。良く考えよう。そんな筈はない。良し、先ずは一人目、咲良。超絶不幸で会うたびに何らかの面倒ごとを持ってきやがる俺の幼馴染み。……ダメだフォロー出来ない。ごめん、咲良。
んで二人目、ギルドの受付嬢ローレンさん。うん、見た目が可愛いからって話し掛けてみたら職権濫用してギュンター教を布教するゴリゴリの地雷だった。三人目は可愛い顔して不和を撒き散らす爆弾魔フミカちゃん。四人目は一見普通に見えて裏で破壊神呼ばわりされてるリタさん。
うん、ろくな女が居ないね。俺の心のオアシスは出来る女感漂う副ギルド長しか居ねぇわ。これは新しくオアシスを作る必要性があるな。
などとアホなことを考えていた次の瞬間微かな不快感を感じ後ろを振り返る……。
「わぁ〜、勇者様って初めて見たぁ!感激ですぅ!」
のとこの声が聞こえたのとは同時だった。言われた言葉から考えるにどうやら先程の不快感はステータスを覗かれたことに類する物の様だ。
声を上げたのはシスター服を着た20になるかならないかの女性だ。少し幼さの残る白い顔に溌剌とした笑顔を浮かべ、神に祈るでもないだろうに胸の前で手を組む。そのせいで胸が元からかなり大きい部類だっただろうに更に強調され、だぼついたシスター服の上からでも分かる程にその存在を主張していた。何と言うか活発、という言葉が全身から溢れ出ている様な気さえする。
「申し遅れました!私はスーザンと申します!以後宜しくお願いします!」
ずいっ、という擬音がピッタリな程スーザンは俺に顔を近付けてそう言った。近い……。少し間違えばキスしてしまいそうな距離だ。パーソナルスペースが存在しないのだろうか。
「お、おう……。宜しくな」
俺が答えるとスーザンはまるで花が咲いた様に笑った。俺の名前は多分ステータスを見て知っているだろうから自己紹介は必要ないだろう。
「はい!この様な所で勇者様とお会い出来るとはまさに神のお導きです!マサヤ様は何をしてらっしゃったのでしょうかっ」
私、嬉しいです!と言わんばかりの最大限の笑顔を見せるスーザン。一応勇者としてこの世界に呼ばれた俺達ではあったが、ここまでの熱狂ぶりは初めてである。ギルド長の話から類推するに俺達は死んだ2代目勇者の代わりであり、それ以上の価値は無かったのだろう。それなりの歓待は受けたが、あくまでそれなりであり、今思えばあまり期待はされていなかったのだろう。どこか冷めた対応をされた。
自分で選んだ(優人から言わせれば選ばされた)とは言え、高校生活、更に言えば人生丸々放り投げさせられた此方としてはちょっと物足りなかったのは確かだが、流石にここまでは望んでない。というか近い……。ほのかに甘い体臭まで匂い始めたので早急に離れて欲しい。
「いや、まぁ。クエストをやろうかと思って」
1歩下がりながら俺が言えば……。
「へぇ!どんなクエストですか?」
1歩踏み込みながらスーザンが話し掛けて来る。コイツ空気を読むとかそういう能力が壊滅的に欠けている。早急に学び直すべきだ。後ついでにそのマイペースを直せ。
俺が薬草の採取依頼のことを話すと、スーザンは目をキラキラと輝かせ始めた。
「凄い偶然ですね!私は今司祭になる勉強中で社会経験が必要なんですけど、何処から始めようか迷ってたんです!これも神のお導き。是非一緒に行かせて下さい!」
更に顔を近付けて最早おでこが触れ合うのではないかと思える程の距離で興奮した様子で懇願するスーザン。その圧倒的可愛さと押しの強さに大抵の日本人ならば、その勢いにつられて頷いてしまうだろう。
「え?普通に嫌ですけど?」
が、俺はNOと言える日本人なので問題ない。俺が即断った途端、スーザンが驚きのあまり大きく仰け反る。これが漫画なら後ろに大きな雷が落ちていただろう。
「ど、どうしてですかっ!?」
逆にどうして断られないと思った?図々しいにも程があるだろう。初対面の人間に頼む内容か。もっと自分の行動を省みて喋れ。
「も、もしかして迷惑でしたか!?」
うん。
「はぁ〜、またやっちゃった!私のばかっ!」
そう言うとスーザンは顔を手で隠して縮こまる様にしゃがんだ。
「すみません、私、司祭様から言われたんですけど人の気持ちというか場の雰囲気が読めないらしいんです。どうにも私の方ばかり盛り上がってしまって他人を疎かにしてしまう様で……」
自覚があるんなら直そうか……。
「人の気持ちが読めないって……。それ、司祭失格じゃないか?」
「はうっ!」
良く知らんが神の教えを広めるとか言ってるが大抵は人生相談みたいな物だろ?辛かったね、でも大丈夫、神様が助けて下さるよ、みたいな。だとしたら人の気持ちが分からないなんてのは致命的欠陥じゃないのか?
「うぅー。多分司祭様はそれも社会経験の中で学んで来いと言いたかったんだと思います……」
「ま、まぁ、気にするなよ。その内読める様になるさ」
流石に目の前で泣かれて放置出来る程鬼畜でもないので慰める。するとスーザンは涙ぐんだ目を此方に向けて感激した様な顔をした。
「うぅー、優しいんですねマサヤ様。今だけ貴方が神様に見えます。もし良ければ主神教に入信しませんか?貴方なら直ぐに司祭になれると思いますよ」
そりゃ断る。何せ神にはろくなことされてないからな。俺達を誘導して人生捨てさせて、スロースターターという呪いを付与し、敵は強敵を用意する。殺意しかない。
「ほら、元気出せよ。俺に出来る事が有ったら言ってくれよ」
「本当ですかっ!?わー、有り難う御座います!じゃあ採取の出発は何時ですか!?」
あっ、しまった。
と思った時には時既に遅くさっき何でもすると言った手前もあってズルズルと採取に一緒に行く約束をさせられてしまった。
良いことをした筈なのだが、この詐偽られた様な微妙な気持ちは何だろう……。凄腕の詐欺師に遭った様な気分であった。
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偉い目に遭ったとげんなりしながらギルドを出ると優人と一緒に宿に向かって歩く。
しかし、五人目は詐欺師スーザンか。マジでろくな奴が居ねぇな。などとアホなことを考えていた次の瞬間微かな不快感を感じ、振り返る……。
「お!勇者様とやらか。まさかこんな所で会えるとは思わなかったな!」
のと同時に後ろから弾んだ声が上がる。
ものっそいデジャヴを感じた俺はげんなりしながら顔を上に向ける気力も無く、石畳を見ながらその男性(口調、声の質、高さなどから男性だろう)に向かって謝る。
「あの、すみません、今日はもう疲れたんでまた今度にして貰えますか?」
「冷たいこと言うなよ正也君。少し話したいことがあるんだ」
それを聞いてん?と思った。俺の名前の発音が引っ掛かったからだ。間違っていたからではない。“合っていた”のだ。この世界は俺達の居た世界とは違う為日本名が少ない。故にどんな人でも発音が少々異なるのだが、先程聞いた発音はバッチリ合っていた。疑問に思った俺は顔を上げてあっ、と驚いた。
そして“黒髪黒目の青年は言った”。
「自己紹介がまだだったな。俺の名前はリュウジ。桐野龍司だ。どうだ?少しは俺と話す気になったか?」
そう言って桐野龍司はニヤリと笑った……。
リュウジ君
今回初登場ですが名前だけなら出てきてます




