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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
75/107

75誠に遺憾ながら定義に照らせば女子会であることは間違いない

よし、間に合った。

王都に程近いドレストという街。そこは王の直轄地でありながら王の支配を受けない不思議な街。交易で儲けている為王都程では無いが物が集まる。活気があり、そして闇がある。

ある統一の主がいることで全体がほの明るい王都とは違い領主の権限が弱く住民が自治を行うような体裁を取って来たことでより強い光とそれに伴い深い闇が同居している。

というのもこの地はある主人を戴いて来た。表の主は2年前からギュンターが、そしてもう一人裏の主を持つ。いや、もう1つか。それは人ではなく組織だから。街という街を裏から支配する単一マフィア。

その組織のことを人はこう呼ぶ。

――――『暗殺ギルド』と。


――――虚無視点――――――――


私はドレストの中心近くにある高級店が建ち並ぶ通りを悠々と歩く。きらびやかな雰囲気が漂う路地に黒のトレンチコートは似合わないが、基準を決めるべき上役は私の方。態々自分の方から合わせに行く必要はない。

まるで夜を纏ったかのようなコートで闊歩して見る街は景気が良い。今年の上納金もある程度期待できるだろう。

私はその中の一つ高級品を扱う料理店に躊躇いもなく入る。

その店はちょっとした事情通であれば、(例えばハッシュなどであれば)泣いて羨ましがるような有名な店だ。

押戸を開くと幾つか奥から歓迎の意を持つ返答が帰ってきた。


「奥の個室に行きたいのだけれど。それとも幾人か先に到着しちゃったかしら?」


その内一人の店員にそう話し掛けるとその店員はニコリとして返した。


「奥の個室ですね。畏まりました。ご用意したお席分は埋まりましたが?」


この店にはれっきとしたルールこそ無いものの慣習的にドレスコード無しには入れない。しかし、ドレスコードどころか男のような格好をした女性に対して恭しく接する。それは当たり前だろう。彼女は自らの主人なのだから。幾ら不適切な格好をしていようとも何か言える筈もない。彼女が黒と言えば白は黒くなければならない。

まぁ、先日新参の店のアホがこれを“知らなかった”為に起きた悲劇を知ればその行為に拍車が掛かろうという物だが。人間誰しも寿命まで生きていきたいと思うものだ。それが悪魔すら裸足で逃げ出すような苦痛を伴うドロップアウトを強いることがちらつかされれば特に。


「そう、それは困ったわね。遅れちゃったわ」


故に、彼女が待たせて“困る”者などそうそう存在しない。地獄の鬼すら彼女から呼びつけられれば朝から日没まで待たされようと行儀良く待ち続けるだろう。

だから店員はぶるりと体を震わせる。今奥に居る者たちの“力”を察して。そしてその者たちに何か粗相をしなかったかと自らを省みて。


「ご案内致します」


しかし、店員が口調を震わせることはない。それはプロの職業精神から、ではなくどもればそれだけ自分の生存率を下げると知っているから。自分の生殺与奪は目の前の人物が握っているのだ。耳障りだな、殺すか、が最期に聞いた音になれば悔やむに悔やみきれない。まだやりたいことは沢山あるのだ。

店員は細心の注意を払いながら彼女を案内する。内心自分が当たった不運を嘆きながら……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


私がその部屋に入ると既に用意された6つの席は既に埋まっていた。

どうやら私が一番最後の様だ。


「おせぇぞ。サッサと始めろ」


虚無の真向かいからテーブルに足を掛けた態度の悪い女がそう言った。体は良く焼けた小麦色で農民と言っても通るだろう。だが、赤毛に隠れたその獣のような眼がその印象を覆す。一目見れば分かる。人殺しの眼だ。体育会系の見た目は大変サバサバとしており、化粧すらしていない。だがそれでも分かる程に美人であり、相当数の男が虜になるだろう。ただその眼に睨まれれば大の男でもチビって逃げ出しかねない。眼力の強さだけではない。それ程の凄み、重みがある。しかしその眼力にも虚無は一切の痛痒を感じない。何せ殺した数が違う。文字通り桁が1つか2つ違うだろう。


「そうね、ご免なさいミア。じゃあ始めましょうか」


この会の名は代表会。

不定期に開催されるこの会は大抵が恐怖の的である。其処らの亜神でさえ行きたくないとキャラ崩壊してまで泣き叫ぶだろう。

何せメンツがヤバ過ぎる。

例えば先程喋ったミアという女性。彼女の肩書きを端的に言うなら盗賊ギルドのギルド長。紛れもなく裏社会の大物だ。

他にも挙げていこう。

ミアの右隣に座る化け物。巨大な蜂や蟻のような口にある突起物をカチカチと鳴らす全身綺麗なスカイブルーに染まった虫の化け物。暗部が支配する国クライシュテス新副長アル。正確にはα型ー018。実質国のNo.2だ。そんな化け物がどうやってこんな街中に来れたかは不思議だが何等かの方法が有ったということだろう。

その右隣に座るのは露出度の高い服に高そうな毛皮を来たまるで高級娼婦のような女性。少し眠たげながら艶やかな顔が男の獣欲を誘う。奴隷商売を一手に引き受ける違法商人。カミラ。国に全力を出されても捕まらないように“多少の”力を持つ。それは金であったり、権力であったり、暴力であったりする。

その右隣は虚無(本名不詳)。暗殺ギルドNo.2であり、ボスは彼女を通してしか意向を示さないことからボスとは彼女が作り出した幻影ではないかという声が多い為、彼女を実質No.1とするのが主流である。個人戦闘能力文句なしにNo.1。不殺条件でキースが何とか辛勝をおさめたが、もし即死魔法が使用可能であれば今頃キースは土の下だったことだろう。

その右隣に座るのは浅黒い肌を持つ魔人。魔人であることが目立たないよう帽子や何やらでみっちり変装しているがその上から分かる程美人であり、だぼついた上着を押し上げる程の巨乳だ。彼女は魔人国強行偵察隊第02部隊隊長オリーブ。

オリーブの右隣に座るのは独り我関せずと紅茶を嗜む10にも満たぬ少女リア。少し血の気が悪いのかまるで死体のような青い顔色をしている。ゴスロリを着た普通の美少女にしか見えない彼女。しかし種を明かすなら彼女は吸血鬼だ。このような見た目だが、もう生まれてから300年は立っている。力の格は原始であり、真祖、始祖、元祖に次ぐ4位階だ。

ヴァンパイアとは人間の上位互換。全てに置いて人間の上を行く種族。400年前の動乱後、彼らは神と仰ぐ1体の真祖ヴァンパイアの下、大森林の南西部にある巨大なクレタン半島に引っ込み、魔人国に次ぐ版図を持つ国として君臨する。政策としては鎖国政策。一切他国と交流を持つことなくそのクレタン半島からは出ることはない。更にその半島に足を踏み入れた者は獣人だろうが人間だろうが一人たりとも帰っては来ない。人間種の血を吸い、劣化分裂ということで繁殖する彼らだが、勿論人間のような繁殖も出来る。そしてヴァンパイア同士で生殖した場合は血は濃くなり子の力は増大する。そして彼らは400年引き込もっていたのだ。どうなるかは想像に難くない。この400年で格が高い者では元祖が20人、始祖が8人、真祖が1人産まれたという。その力が外に向けられれば人間の社会は終わりを意味するだろう。リアはこのヴァンパイアの国の特命偵察任務を帯びている。

6人皆が皆裏社会での超が付く程の大物。並の大人ならおうちかえりゅー、と幼児退行しかねない“圧”がそこには有った。大物に女が多いのはそれだけ生き残るチャンスが多いということだろうか。女を使えば男よりのしあがるまでに殺されるまでの時間稼ぎが出来る。その1分1秒が命が助かるチャンスの時だ。


「で、今回私達を集めたのは誰かしら?」


私が今回のホストらしくこの席を設けた理由を問う。


「オレだよ」


先程喋ったミアがテーブルに足を掛けた態度の悪い体制のまま背もたれに頭を付けてそう言った。

この6人の大悪党が集まる条件は参加者の内2人が開催を希望すること。しかしながら魔人のオリーブに相談すれば情報収集を信条とする彼女は必ず同意してくれる為にこの条件はほとんど死んだような物だ。


「何かしら」


私が聞くとミアは鼻で笑った。


「ハッ、分かってんだろ?アンタんとこの可愛い可愛い情報屋ちゃんが死んだそうじゃねぇか。いやー、可哀想に。しっかしこんな調子でちゃんとやれんのかねぇ。それで、泣いて帰ってきて抜けたいとかほざく小娘を懇切丁寧に送り出してやったと。暗殺ギルドってなとんでもなくユルい組織だなぁ。前も『黒虎』、あー、確かキースつったか?ソイツが抜ける時もスルー。こないだもオウルフと小競り合いして双龍がやられたんだろォ?歯抜けも良いところだなぁ。え?」


最近稼業が隆盛しているせいか態度がでかいわね。幾年も前のアナタに見せてあげたいわ。キースも別に新しい道を見付けたんだもの。その道を態々封じるつもりは無いわ。どうせ戻って来るのに。手間の無駄よ。


どれだけこの店の周りに兵隊を配備してるか知らないけど、戦力で言えば“私の”半分以下なのは確かね


「あら、耳がお早いですこと。貴女方を情報屋として雇った方が手っ取り早そうね。仕事を鞍替えしたら?」

案外そちらの方が向いてるかも知れないわね。兵力もないし身の振り方を考え直すなら今ね。


「随分と勝手なこと抜かすじゃねェか。そういう態度が後でどう響くか死ぬ間際のアンタに教えてやろうか?あ?売女が」


私に向かって中指を立てるミア。たかが肝試しに全存在をベットするなんて脳が足りないのね。可哀想に。


「おやおや、五月蝿い狗が何やら吠えておるの、程度が低い。己を知らぬ者の言い様は聞くに耐えぬ。妾の折角の時間を浪費する。そうは思わぬか?」


リアはティーカップをテーブルに置き、自分の左隣のオリーブに尋ねる。


「私には分かりかねます」


オリーブが素っ気なく返すと向かいの方からカミラの声が上がった。


「まぁ、別にいいんじゃな〜いぃ。付き合ってあげれば。その内収まるでしょ」


眠たげでいてそれで甘ったるい声だった。カミラが少し動く度に高そうな香水の匂いが辺りに漂い、人間以上の嗅覚を持つリアに取って凄く臭い。


「虚無ヨ。戦争ヲ起コス気ナラ先ニ言ッテクレ。ボスニ世界ノ裏マデ逃ゲルコトヲ進言スル」


声が出しにくいのかアルはキーキーとした音と一緒に聞き取り辛い声で話す。まるで幾多の人が1音ずつ話しているかのように声質音程が滅茶苦茶だ。


「何故かアナタは私の手駒が壊れたことに怒ってるようだけど。ハラワタ煮え繰り返ってるのは私の方よ?殺したのはアナタ?」


「ハッ、それこそ情報屋に頼むんだな。頭でっかち」


ミアはまた鼻で笑うと話は終わったとばかりに手を振った。


「最有力はそうでしょ?動機だって無いこともない。何処かウチに喧嘩売りたい所はある?今言えば“喧嘩で済ませてあげる”けど?」


後で見付ければ喧嘩では済まさない。敵対勢力として排除する。利益上の競合関係があるとは言え信頼が無くてはそこで産まれた為替は紙屑も同じだ。


「冗談止めてよぉ〜。全く。ジョークにもならないわぁ」「同感ダ」「私が求めるのは情報です。喧嘩を売ることに利益は有りません」「妾もじゃ、態々下々の者を相手する気もないの」


口々に否定の言葉を言う会議の面々。これで平和的に解決するか血を見るかの2択と明確になった。シンプルなのは良い。ごちゃごちゃと考えなくて済む。


「そう、良かった。ならウチのリュート君を殺ったのは“敵”ってことね。分かったわ」


キースとも約束した訳だしね、と思いつつ今の仕事状況を考える。


「今回ハ誰ヲ動カスンダ?」


疑問に思ったアルが聞くと虚無は軽く笑った。男なら見惚れるような笑みだが、同時に背筋が凍るような酷薄な物でもある。


「決まってるじゃない。残存する兵力の全てよ。これは依頼じゃないわ。戦争。子供じゃないんだから出し惜しみすることに意味はないわ。私達の前に立ち塞がる敵は潰さなきゃいけないでしょ」


『双龍』、『死神』、『未来人』、『狂人』、『超人』、敵は持てる手札の全てを使って潰す。利益を得る為にある程度の面子は大切だ。ナメられて損害でも出たら目も当てられない。

私はパチッとアルにウィンクすると席を立つ。来る時は最後だったのに最後に出ていくのは皆に悪いとは思うのだがこの際は仕方がない。

後ろからは「戦争……カ。少ナクトモ半径3000キロメートル以内ニハ近寄リタク無イナ……」と心無しか引き吊った様なアルの声が聞こえる。

その声を背景に世界で一番会いたくない女と裏で呼ばれる虚無は静かに部屋を出ていくのだった……。

女子会です。

誰が何と言おうと女子会です。


後ドックエンドで出てきたレスリングのオリンピック3連覇で4回目のオリンピックで銀メダルを取って自殺して今殺し屋やってるシャーリィ・ホシダさん。

名前と素性が吉田さんに酷似してるw

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