71これがげーむ脳って奴か3
よし、間に合った。
――――正也視点――――――――
目の前には二つの遺体……。
いや、死んではいないか。
気絶したモブさん達。
主人公に巻き込まれるって嫌なもんだな。
主人公親友ポジでよかったと心底思うよ……。
二人の強さを示すために散っていってくれた彼らに敬礼。
二階級特進を約束したい。
こんな現実逃避をしてる場合じゃないか……。
場は完全に渾然してる、それに呆然となるのは脇役として当然だがぼーっ、としてて全然話が前に進まないのも当然。
モノローグでラップしてみたYO!
えっ、また現実逃避してる?
んなこた分かってるYO!
今度こそ現実逃避しないでちゃんと考えよう。
これ以上現実逃避すると頭の中で現実逃避って言葉がゲシュタルト崩壊してくるからな。
目の前には気絶したモブ二人。
この創作物に於いては割りと有りがちだが、現実的には先ず有り得ない現象を引き起こしけつかりやがったのは優人とイテナさんだ。
まぁ取り敢えずイテナさんは置いとくとしよう。
多分途中で判明する実は魔王だったのだパティーンの奴だから指一本動かさずにモブを気絶させるのは簡単だろう。
いや、隠す気あるのかとか、本部に余計な軋轢加えんなやとか、これ倒せんの?とか、ツッコミ所は多々あるが、100歩譲って良しとしよう。
一旦ね?
問題は優人。
テメェだバーカ。
親友に対してナチュラルに罵声が出るくらい意味が分からん。
は?
えっ、は?
いや、冒険者登録ちゃ物語の上で序盤的な役割の筈だろ?
それをイベント無しで冒険者の先輩ぶっぱとか舐めてんの?
ダークゲーム的な路線からの急なシフトとは言え主人公としてどうなの?
ジャンプしてみ?あぁ〜?
実力的に不可能でしょうが!
俺なんかなぁ〜!
最初の時より弱くなってんだぞッ!(切実)
あれ、何だろう、涙が止まらないな。
血の涙かな?
魔物2体ばか倒した位でチョーシ乗んなよお前?
先輩さんだってなぁ、生きてんだよ!よく知らないけど。
別にゲームの村人みたいに無限ループが得意な忍耐力マックスの人って訳じゃ無いだろう。
それをさぁ、無慈悲に昇天させるのは人としてどうかと思うよ俺。
あ、御免なさい。
イテナさんのことじゃないですハイ。
怒らないで下さいね?恐いから。
イテナさんのこともあるし此処は万歩譲って良しとしよう。
非常に納得行かんがね?イテナさんの力に免じてね?
最大の問題は次だ次。
優人がこの気絶体を錬成したのは次の様な過程を通った訳だ。
モブ山モブ雄さん(仮名)が邪魔だったので、こめかみを拳銃で撃ち抜きました。
…………………。
………………。
……………。
…………。
………。
……。
…。
何だってぇ〜〜ッ!?
オイ、待てこらテメェ優人コラ。
何度聞いても信じられんぞオイ。
拳銃至近距離でぶっぱされて気絶で済んでるモブ山さんは一旦置いとこう。
多分レベルアップで肉体的に増強されてるからこめかみに鉛玉ぶち込まれても平気なんだろう。
多分イテナさんがモブ川さん(仮名)に力加減を間違えたのもこの為だと思われる。
よってより問題なのはやはり日本国憲法が施行されている日本に済む社会的地位のない高校生の身で有りながら拳銃隠し持ってた優人の方だ。
お前なぁ、リアリティーと拳銃を日本で両方持てるのは警察とヤクザだけって推理小説の大原則知ってる?
いきなり一般ピーポーが銃持ち出してもは?ってなるだけだから。
本床に叩き付けられるだけだから。
まぁ、特殊例で自衛隊とか技術者(密造銃)とか色々有るけどな。
幾ら主人公だからってそこら辺を曖昧にするのは良くないと思うぞ俺は。
お前そういうとこ有るぞ。
えーと、銃を持った犯人にはどうするんだっけか……。
確かテレビドラマとかだと良くやるのは犯人を刺激しないように優しく話し掛けるんだったか。
「OK、大丈夫だ落ち着いて、今此処に君に危害を加える人は誰も居ない。大丈夫大丈夫」
暴れ馬を落ち着かせる様にどうどうと優人を宥める。一歩間違えれば体に風穴が空くので一瞬たりとも気を抜けない。
「何やってんの?」
だがその必要は無かった様で、優人は珍しくキョトンとした顔で摺り足でゆっくり迫っていた俺を見返す。
「いや、冗談だ。何でもない」
まぁ、それもそうか。優人が拳銃持っただけで優人が優人じゃなくなる訳じゃないんだから。
いや、待てそうじゃない。一般人が銃を持ってるだけで異常だ。危ない、優人の奸計に乗せられるな俺。気合いを入れ直した俺は優人に質問、というか詰問をする。
「つうかそれ何よ?」
俺の端的な質問に優人は不思議そうな顔をする。
より詳しく言うなら太陽って何?とでも当たり前のことを聞かれた時の軽く引くついた顔だ。
「えっとコレはリボルバーって言って6発入りの……」
「んなこた分かっとるわアホ!何で優人が持ってんだって聞いてんだよ!」
優人のズレた回答に思わず怒鳴り返す俺。
イカンイカン、銃を持った犯人を刺激しちまった。次から気を付けよう。
「ああ、げーむ中の選択肢を広げようかと思ってGALに用意して貰ったんだよ。高かったんだけどね?全く、銃身に6ptってぼったくりにも程が有る。弾も一つ1ptだなんて……。合わせて100pt近い出費になった」
ボヤく優人に俺は顔の引きつりが止まらない。何か損な買い物をしたみたいな普通の言い方されてらっしゃいますけど拳銃ですよね?それ犯罪ですよね?
ツッコミ所が多すぎて納得は出来ないまでも取り敢えず議論が進まないから100万歩譲って良しとして先に進む。
「それ使えば銃乱射された時に対抗出来たんじゃないの?」
そう、優人が拳銃を持っていたことを話の前提とするとしても問題がある。
思い出すことこの世界に召喚される直前。
銃持った男の凶弾に倒れた優人を救う為に此方の世界に来たのだ。優人の話によると自作自演だった様だが優人が死んだのは多分本当だろう。服とか持ち物はその時のまま召喚された訳だし今優人がその拳銃を持っているということはその当時も持っていたはずだ。だったらその時使えば良かった。使わない意味が分からない。
「ん?何言ってるんだ?出したら銃刀法違反だろ?ルール無視のペナルティーは−3ptなんだぞ?」
……。
ご免、何言ってるか全然分かんない……。
クッ、コレがげーむ脳って奴か……。
え?銃は持ってるだけでも違法じゃなかったっけ?俺の勘違い?
「えっ、持ってるだけでも罪じゃないの?」
何時からそんな新しい、てかイカれた法律が出来たんですか?
俺初耳なんだけど。
しかも恐いのが優人の顔だ。
さっきと変わらず当たり前のことを聞かれたかのような引きつり顔。つまり少なくとも優人の中ではそのことは当たり前な訳だ。ぞっとしない。
「ん?ルール無視はバレなきゃルール遵守だろ」
何そのバレなきゃ何しても良いんだぜ理論!
絶対ダメだかんね!
法治国家には※ただしイケメンに限るとか通用しないから!イケメンだろうがブサイクだろうがモブだろうが関係無しに等しくブタ箱行きだからな!
親友の奇行、というか予想の斜め上を行く行動にド肝抜かれながらもガツンと一言言ってやろうと思い口を開くが、俺の口から言葉が出ることは無かった。
「貴殿方ですね?ギルド長がお呼びです。此方へどうぞ」
代わりに受付のブースの後ろから聞こえてきた女性の声に気勢を削がれた俺はどんな奴かと黙ってブースの方を見る。
そこに居たのは受付のお姉さんと同じ制服を着た女性。例えるなら社長秘書だろうか。赤い眼鏡掛けさせればそのままキャリアウーマンで通りそうだ。デキる女臭が凄いする。切れ長の目をした端整な顔立ちにエロチックな体型に長い足。その筋の人には泣いて喜ばれそうだ。俺はそこまでじゃないがチラッとその御足に踏まれたいとは思いました。制服を着崩して露出が多いのもなおグッド。いやぁ〜、目の保養になるわぁ。ローレンさんって言うらしい受付のお姉さんみたいな清楚系も良いけどこういうエロチックな感じも良いよね。
イタッ!
突然足に激痛が走り足が千切れたのかと思って慌てて左足を見ると靴の踵の固い樹脂部分がグリグリと俺の靴にめり込んでた。
「イタイイタイイタイイタイ……」
慌てて足を抜こうとするがとんでもない力で上から押さえ付けられているかのように全然抜けない。
いや、確かに踏まれたいとは思ったけども!
けども!
違う、この感じじゃない。こんな何時足が千切れるかも分からんアバンギャルドな踏み方は望んでない!もっとこう……グニュみたいな。ああ!また強まったイタイイタイイタイイタイ!
何だよコイツ、頭読んでる訳!?エスパーなの!?
大体誰だこの足!
絶対秘書さんみたいな人のむっちりした足じゃないよね!
全力で痛いだけなんだけど!
涙目になりながら俺の左足に狼藉を働く輩を見ようとその足を辿るとそこには絶対零度すら生温く感じる温度の目をした咲良が居た。
その目は女子高生がしていい目じゃないと思うんだ俺……。秘書さんみたいな人から受ければご褒美かも知れないが、同級生から受けるその目は単なる地獄である。
「さいってー……」
おおふっ、足と精神の多段構えの攻撃で来たか……。
幼馴染みのその台詞は中々クる物があるな。いや、性癖の話じゃなく精神的なダメージの話で。
ふっ、だが未だ甘いな……。この俺を誰だと思ってる。俺は鏡の前で死地に赴く優人を勇気付ける練習をしていた所を母親に見られて「何やってんの?」と言われた男だぞ。その後中2病扱いされて一時精神病院に入れさせられ掛ける所まで行ったんだからな!
……あれ、何だろう。雨漏りかな?急に頬に水が……ぐすっ。
何はさておき俺はこれ位じゃへこたれん。
大体女の人がエロい格好していらっしゃたら見る。男の性っていうより本能だよ本能。義務でさえあるね。
むしろ咎められる方がどうかしてるな。
好きな物を摂生するって考え方は分かるけどそれを人に押し付けるのは良くないな。俺は好きな物が見たい!シンプルに行こうシンプルに。
うし、理論武装完了。
「で、貴方は?」
長らく放置してすみませんね秘書さん。話を聞きましょう。ついでにその格好もっと良く見せて下さ……嘘嘘嘘。足挙げるの止めよう?咲良さん?はしたないから、ね?
何で心読めるんですかね?エスパーですか?やらしい目が分かるだけですかそうですか。
女性だけそういうセンサー持ってるのズルいよね。男もバレないように女性を見れるような進化しねぇかな……。
男がそんな下らないことを考えていると秘書さん風の美女は頭を下げて答えた。
俺はそれを見てあ、うなじも綺麗だなぁと。咲良の視線はキツいがさっき地雷掘り当ててスルーしようとした筈がオートで爆発されたのだ。これ位の心の清涼剤は見逃して欲しいものだ。
「私は副ギルド長をしておりますルシエと申します。ギルド長がお呼びですので直ぐに執務室にお通しします」
あ、副ギルド長さんでしたか。てっきり秘書さんだと思ってたけど結構出世してるのね。伊達にデキる顔してないわ。
副ギルド長がどれ位偉いのか分からなかったので聞いてみると、全部で11人居るギルド支部長と同格なのだとか。副ギルド長と支部長合わせて12人の合議制で次のギルド長を決めるのだそう。
まぁ、今は6期連続満場一致でギュンターさんって人に決まってるのであまり活用されてるとは言い難い制度だが。
先を歩くルシエさんに付いて行く。中が広いせいか中々着かない。王都のギルド会館をドレストに来る途中チラッと見たのだが木造の良く言えばこじんまりした正直に言えばボロい建物で此処とは大違いだ。
やっぱりギルド長が居ると居ないのが大きいのかな。
そんなことを考えながら歩いていると漸く辿り着いたのかルシエさんが豪華な扉の前で立ち止まり、扉をコンコンとノックする。
「入ってくれ」
中から渋い入室を促す声が聞こえてくる。恐らくギルド長のギュンターとか言う人だろう。
ガチャリと扉を開けると最初にイグマさんとハッシュさんが見えた。
そしてその奥の書斎机には先程の渋い声の主と思われる男性が座っていた。その瞳は値踏みするように何度も俺達の間を行ったり来たりし、その顔は能面のように一切表情が変わらない。
「どうぞ、座ってくれ」
ギュンターさんは客用のソファーを指して言った。
俺達が全員そこに座るとギュンターさんは手を組むと聞いた。
「さて、話し合う事柄は多々有るが……。先ず先程は随分はしゃいでいた様だが、君達が何をしていたのか嘘偽りなく教えてくれるね?」
その一言にドキッ、と漫画のように心臓が跳ねた。
叶うなら神速で此処から逃げ出したい。
この暗い中工事でアスファルト新しくするのやめて欲しい……。
家に帰るまでに二回も滑ったわ。




