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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
70/107

70これがげーむ脳って奴か2

少し編集にてこずって遅れました!

すみません!m(__)m

――――イテナ視点――――――――


ギルドで俺は少々退屈していた。

特に目新しい物もない単なる物見に一体何の価値を見出だせるというのだろうか。

俺はどちらかというと仕事とプライベートを分けるタイプだ。

更に今は本体から貰った魔力が尽きるまで動くだけの人形。

興味を持てばとことん追求するが、興味を持てなければどうなろうと構わない。

そんな心境で今まで大して興味を持てなかった。

ただの人の集まりで有りがちなことであり、殊更それをどうこうしようという気が起きなかったのだ。

優人という男については弟子にしてやっても良いとは思ったが、放置する方が面白そうだということで、のびしろを考慮してギリギリ合格、将来に期待という見方だ。

そんな俺が今、僅かではあるが本体から生まれて初めて興味を抱いた。

冒険者ギルドに登録する段になり、木の台に座る女が下から持ち出した水晶だ。

女が話している説明になど微塵の興味も無かったが、持ち出した水晶には素直に興味を引いた。

それは“見覚えがあった”からだ。

興味を引くというよりは郷愁と言う方が近いだろう。

いかに異世界で別な進化を遂げているとはいえ本質的に同じ物だ。

それに一々驚いていても疲れてしまう。

そんな中で見付けたのが元の世界と全く同じ水晶玉。

しかも水晶は何度か使ったことがある。

騎士団に潜入した時にも判定を騙したし、俺の生まれが判明したのもこの水晶だ。

他の勇者は水晶に手を伸ばすのを躊躇っている。

俺は先に水晶に手を伸ばす。

この水晶を騙すのは簡単だ。

こういう水晶は体から漏れ出ている魔力を測定し体内魔力の量と質、魔力構成を推定する。

つまり体外に出る魔力を調節すれば良いのだ。

城などの重要拠点には魔力探知が必ずといっても良いほど取り付けられている。

それを避ける為に体外に出す魔力をゼロに出来る俺からすればそんなもの朝飯前だ。


因みに魔力を体外に出さないようにするのは通常不可能であり、言うなれば表面体温を外界気温と完全に一致させ、サーモグラフィに映らないようにするのと同じ難度を誇る。

恒温動物の常識に喧嘩売ってるとしか思えない。

変態の極みである。


俺は体外に出る魔力を調節して丁度他の勇者と同程度の魔力に合わせる。

これで出るのは当然勇者達と同じ筈だ。

俺が水晶に触れる瞬間……。


パァン!


水晶が跡形もなく吹き飛んだのだった……。


!!!!!!!!!!

!?

!!!?


バカな!?制御は完璧だった筈ッ!

いや、もしかしてこの水晶、魔力格を測る物か!


魔力を測定する水晶には二種類ある。

一つが体外魔力を測る物、そしてもう一つが魔力格を測る物だ。

その二つの違いは幾つかある。

一つはその測定方法。

体外魔力測定は体の表面を測定するのに対して魔力格測定は内側、というよりその魔力の構成とそこに含まれる魔力の生成能力を測定する。

先程の体温の例で言えば魔力測定水晶は体温計のように純粋に表面体温を測る物。

魔力格測定水晶は体が作り出せる熱の理論値、そして深部体温を測る物だ。

違いを分かりやすくするとステータスに出るMP2/4という表示がある場合、2だけを測るのが魔力測定水晶、2と4を同時に測るのが魔力格測定水晶だ。

見た目には然したる違いはない。

この魔力格測定水晶は確かにイテナの2という数字は検出したが同時に膨大な母数の数字も検出してしまったため(なにせ分体は魔力のみで出来ているので)、水晶が処理能力の限界をあっさり突破し爆発四散してしまったのだ。


油断した!まさかこんな所に魔力格測定水晶があるとは……いや、そうか。

此処が異世界だということを失念していたッ!

物の価値が全く同一という訳ではない!


そう、イテナがその存在を知りつつも可能性として見逃したのが次の違いである。

それは値段。

或いは希少価値と言い換えても良い。

この二つの道具、全く同じ見た目でありながら値段が数十倍違うのだ。

相場が大体魔力測定水晶が金貨1枚に届かない位なのに対して魔力格測定水晶は金貨80枚は下らないだろう。

それでいて性能としては通常業務程度には魔力測定水晶でも全く変わらず代用出来るので市場に出回る習慣が殆んどないのだ。

常識的に考えたら魔力格測定水晶を買う者など一切居ない。

それがイテナが判断を誤った理由である。

ゼロに限り無く近い可能性まで考慮していたら日が沈んでもまだ時間が足りない。

だが、此処は異世界だ。

元の世界の常識がこの異世界にまで適応されるとは限らない。


クッ!こんな物弁償させられたら大損だ!


「『時の流れに身を任す』」


魔法が発動すると、まるで逆再生でもするかのように水晶玉が形を整え始める。

飛び散った瞬間のようにまた一瞬だ。

水晶が跡形もなく吹き飛んでから水晶が元通りになるまで一瞬であり、然したる時間は立たなかった。


く、これ位か……?


イテナが改めてその水晶に触れると今度はボゥ、と薄く光る。

魔力格測定水晶だと分かってしまえばイテナは対処出来る。

採取地点をそうなるように変えてしまえば良いだけなのだから。

勿論、そんなことが出来るのはイテナ位のものであるが。


「えっ、あれ?今水晶が弾け飛んだよね?何で有るの?」

しかしその一瞬を見られて居たのか受付の女が辺りを見回す。


やはり誤魔化しきれなかったか……。

ならば多少強引にでも誤魔化すまでだ。


受付の女の端正な顔を掴み無理矢理此方を向かせる。


「俺の目を見ろ」


ズウゥゥゥン。


女と目があった瞬間、イテナは自分の魔力を心の防殻を上手くすり抜けて叩き込む。


「『保護』」


そして女の溜め込まれた記憶の内、水晶が割れてから直るまでの一瞬の間の記憶を封じる。

記憶を消すことは出来るのだが、脳というのは操作が難しい。

少しでもトチれば数十年間の記憶も一緒に消えて廃人の出来上がりである。

更に得て間もない記憶であるため海馬に定着している訳でもなく非常に不安定。

消そうとして半身不随にでもなったら弁償どころの話ではない。

故に記憶にプロテクトを掛けるのだ。

記憶のアクセス失敗の状況を魔法で再現する。

これで記憶自体は脳にあるのだが思い出すことはない。

魔力探知の精度が高い重要拠点では使えないがイテナが割りと良く使う魔法である。


「あれ、私は今何をして……?確か登録が済んで……あれ?」


成功したようで女は少し混乱した様子で必死に何をしようとしていたのか思い出そうとしている。

だが、それを遮るように男達の声が高々と上がった。


「オイ、そこのお前ら。俺達のローレンさんに何してやがる」


そして魔法を使うことによるデメリットがもう一つ。

ある程度魔法に対して習熟した者に魔法の発動を嗅ぎ付けられることだ。

不自然な魔力の流れを気付かれるのだ。

勿論その流れを目視できる範囲に限られるし、そういう知覚感覚が優れて居る者でなければならない。

そして今立った二人の男達は受付の女に何かしらの魔法が使われたということがバレたのである。


……ふむ、二人か。

思ったより少ないな、屋内でこのザマか。

弛んでいる。

俺の部下を追った近衛は屋外の森の中で見分けて居たぞ。


しかしそこまではイテナの想定通り。

いや、むしろ想定を大きく下回った。

この冒険者ギルドとは、それほどの脅威の存在でもないのだろう。

イテナは密かに冒険者ギルドについて心の評価と警戒度を2段階下げる。


「何だ貴様らは?」


俺は振り返りつつそう聞いた。

その言葉が不遜に聞こえたのか男二人は明らかにカチンと来た表情になる。


「ローレンさんは止めとけ。貴様らみたいな入りたての鼻ッ垂れじゃ高嶺の花だ」


一人の男が先程の意趣返しなのか貴様ら、の部分に強く力の入れた台詞を吐けば。


「お前らみたいにオイタをする新入りはしっかり“指導”しなくちゃなぁ、え?」


もう一人の男がボキボキと指を鳴らしながら嫌らしく笑う。

まるで挑戦者を待ち受ける王者のように余裕たっぷりだ。

事実普通ならそうなっただろう。

そう、普通なら。


イテナはブースの台の下に収納してある背もたれのない――依頼などの話が長引いた時に使われると思われる――椅子を引っ張り出し、そこに腰を下ろし、ドスンドスンと台に足を行儀悪く乗せてそのまま足を組む。


「そうか、なら貴様らの思い上がりを一つ訂正してやろう」


一つを強調するかの様にピンと人指し指を立て、手を下ろすとそのまま腹の上で組む。


「“下”は貴様らだ。俺がボスだ、“跪け”」



「ぐっは!何だコレは!!」


突如一人の男が呻きだし、まるで重力にでも耐えかねたかのように床に膝をつく。


「オイお前!何をした!?」


もう一人の男がその様子に驚きイテナを指差し糾弾する。


「別に、何も?」


「嘘を吐け!!」


そう、男は否定するが、イテナの語ったことはある意味真実である。

イテナは何もしていない。

ただ男に魔力で圧を掛けただけだ。

そう、ただ殺気を送っただけ。

たったそれだけで男は世界が黒く染め上がり気温が数度下がったかと錯覚する程であった。

その様子に男は何か幻惑系の魔法を掛けられたと確信する。

何もしていないと言われたにも関わらず。

人間の耳は都合良く出来ている。

不都合な真実は全て闇に葬り去るのだ。

だから人は真実を手にする為にはまずもって目の前の出来事を全て受け入れなければならない。

それが例えどれだけ現実離れし、例えどれだけ受け入れ難くても……。


「ぐっ!ハァ、ハァ、ハァ……。お前が何したかったか知らねぇが、耐えてやったぜこのイカサマ野郎!」


膝をついた男は息も絶え絶えになりながら、それでも勝ち誇った顔でイテナを睨み付ける。

それについてイテナは少し驚いた顔をする。

まさか耐えられるとは思って居なかったからだ。


「失礼、力を過小評価していたことを詫びよう。だが貴様は分不相応な力を持っているな。貴様と貴様の力では全く釣り合いが取れていない。そのせいで見誤った」


「何だと!?」


男は釣り合いが取れていないと言われ反射的に言い返す。

だが当のイテナは全くそんな所に拘泥していなかった。


「今度はしっかりと見極めた。なに、寸分違わず手加減してやる。遠慮せず喰らうと良い」


ズズゥゥゥンとでも音がしただろうか。

それとも幻聴だったのだろうか。

先程と同じ様に……否、それに倍する殺気と呼ぶには大き過ぎる圧力が再び男を襲う。


「ぐっ、が……」


それで最後だった。

その言葉を最後に男は崩れ気絶した。


「このクソ!化け物が!」


もう一人の男が叫ぶ。

それでいて戦闘態勢を崩さないのは流石冒険者と言った所だろうか。

そして男は走り出す。


「何!?うわっ!コッチ来んな!」


正也達の方へと。

人質にしようとでも思ったのだろうか。

イテナに効果があったかどうかは分からないが打って当然の手ではある。

この場ではただの悪手であったが……。


ゴリッ。


「そこでストップだ。動くなよ?指一本でも動かしたら頭吹き飛ばすぞ」


この男にも殺気が突き付けられる。

ただし先程のイテナのそれと比べれば大人しいがナイフのように鋭く尖った殺気が。

そして優人が殺気と同時に男の額に押し付けるようにして突き付けたのはリボルバータイプの拳銃。

6発入りのオーソドックスなタイプである。


一瞬、殺気に男の動きが止まったものの得物に覚えが無かったのか、そのまま突っ切ろうとする。

そして次の瞬間、男は自らの無知の報いを受けることになる。


パァン!


優人は一ミリの躊躇もなく引き金を引く。

男は額から血を流し、そのまま崩れた。


「あーあ、動くなって言ったのに。全く、人の言うことを素直に聞いておけば良いのに……」


どうやら生きて居るようで心臓の鼓動と同じリズムで血が頭から流れ出る。

その光景を優人は何の感情も見せない能面のような表情で見下ろしていた。


「おい、大丈夫か!」


ただならぬ事態に他の冒険者もその二人の男に駆け寄る。

そんな凄惨な光景が広がる中、正也の口からボソリと言葉が飛び出した。


「お前ら自重しろよ!ここギルド本部だぞ本部!」


正也の受難は始まったばかりである。

後輩に絡む先輩冒険者、魔力判定で割れる玉……実にテンプレですね!

優人が何で銃持ってたかは次回で

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