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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
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幕間 メルト達の修業

――――バレイン 視点――――――――



前方にある何もない空間と対峙する。



想定するのは依頼を終えて王都に来る途中何でもないはずのその道中を地獄に変えやがったあの盗賊。



一歩下がりつつ袈裟斬り。



王宮の精鋭訓練所(恐らく支援タイプの魔術師が足止め系の練習をしたのだろう草だらけだ。後かたずけしておけ、草取りに駆り出される騎士見習いの身にもなれ)で素振りの稽古をさせてもらう。いつか御返しせねば。



その回転を利用して相手の胴に。



……自惚れていた。負けはしないと……。

油断はなかった。全力で最高の連続技。イグマの性格は気にくわんが能力は信頼してる。……本人には絶対言わないが。

だがそれでも届かなかった。



頭を越えた大上段の一撃。



俺が負けるのはまだわかる。だが……メルトが負けた?

……あり得ない。

俺はいつもあいつの背中を見てきた。相手がどんなに強かろうが、どんなに打ちのめされようが、どんなに倒れようが最後に負けたことはない。



バチバチバチ

青い魔剣が帯電し、連続する白い線のような雷が回りを覆う。



何なのだあのくそ盗賊は、アレほどの力があれば悪名だろうがなんだろうが俺が名を知らぬはずはない。 これでもガキの頃は片っ端から強いやつに喧嘩売って来たのだ。情報を集めていた時に聞くはずだ。

それが無いとなると……。



「《雷突》!」

前方方向に魔力で制御した雷を纏いつつ全力で疾走する。

雷の付加効果で敏捷が少し上がっているため敵が今までの速度に慣れると確実に避け損ねる。



もしかして魔人か?

いや、違うな。現在メルトに勝てるような真性の魔人は魔王の元に集っている。現れるとしたら発現性の魔人だ。だとしたら力に溺れてるはず、俺が剣技でまける訳がない。

これでも刀技大会で準優勝してるし、剣術レベルも60を越えてる。

悲しいが才能というものが明確に存在するこの世界では才能のない凡人では剣術一筋に生きて一生涯で到達できるレベルだ。

その俺でも一撃と持たなかった。何なんだアイツは。



今度は二刀目の魔剣に白い霧がたちのぼる程の冷気が宿る。



……誰だろうが関係ないか……。俺たちの前に立ちふさがるならブッ潰すだけだ。



「《氷棺》!」

ガキキィィン!!

広範囲の氷結で前方に巨大な樹状の氷の塊が出現する。



そのためにはさっさと力付けねぇと。

見てやがれ、この借りは必ず返す。



――――ガルシア 視点――――――――



魔導修練場とは名ばかりの四方十メートル程の広場に的の麦わらが数本立っているだけという淋しい場所。


「《ホーリーブロウ》!《ファイヤーボール》!《クリエイトナイフ》!《ブリザードプリズン》!《ウッドストライク》!《ロックプレス》!《サンダーブラスト》!《ブラックアウト》!」


白いレーザーが、火の玉が、魔法で作られたナイフが、動くのが困難になる程の冷気が、何本もの杭が地中から成長しながら、空中から人ほどの大きさの岩が、一直線に連なる雷が、盲目の魔法が、ただの杭に麦わらをくくりつけただけの物に殺到する。


正直オーバーキル過ぎて効果時間が過ぎた後には抉れた地面しか残らないだろうが、別に目的は杭を破壊するというわけではないので、そこは後で土魔法でならしておけば問題ない。



魔力が体内から大量に消失したことによる貧血のような脱力感にさいなまれる。


現状は休む位しかすることがないので、少しでも魔力回復が速くなるために瞑想をする。


ほんの気休め程度だが何もしないよかマシだ。


魔法とは才能にもよるが使えば使う程レベルが上がっていく。現在の俺のレベルは64、凡人では到達出来ないとされる場所だ。


学会ではなぜ使えば使う程レベルが上がっていく中で才能というものがあるのか、という問題がたびたび提起されてきた。

暫定的な結論では神という存在が人間という器に魔法という技能を詰め込む時、その入る限界ということなのではないか、と。


……馬鹿馬鹿しい。お偉いさんのが集まって会議をするのに神だなんて逃げ口上でしかない。


魔法という存在がなんだろうが、メルトを助けられるならなんだっていい。


そのためには今のままじゃ足りない。神だろうがなんだろうが、使えるんならなんだって使ってやる!


さてもう一発行くか。


まだ全然回復していないがいまじっとしてる方が毒だ。


もう一度さっきとは別の麦わらと対峙する。



――――イグマ 視点――――――――



最初に目に入ったのは見覚えのない天井。


何があったんだっけ?

とりあえず現状把握だ。えっと拘束はなし、魔法は使用可能。


部屋内に敵影なし、部屋外にもなし。


安全を確認。


宿屋……ではないな。マットレスが柔らかすぎる。 ああぁ、至福だ……。

一生こうしてたい……。


えぇっと……確か……面倒なオーク狩りが終わってメルトが依頼で王宮行くとか言い出して、宴会ほっポリだして、宴会ほっポリだしやがって、その日の内に王都に向かって出発して、リタとハッシュは観光行きやがって、盗賊に……。


盗賊?


そうだ!あのやろう!!


イタタタタ!


急に起き上がったのが祟ったのか全身が悲鳴をあげる。


こうしちゃいられねぇ。

さっさと強くなんねぇと。


ベッドから抜け出して、ドアの方に……。

いや、待てよ……。

居なくなったのがバレたら心配するよな……。


じっと無人のベッドを見ながら考える……。


いや、現在は無人では無くなりつつある。

じわぁーと、ベッドに人が入りつつある。


それは別にイグマがベッドの魔力に負けつつあるわけではない。


「よし、これで完璧」


やっぱり影分身は便利だな。


自らの無防備な寝姿を見ながら改めて思う。


ドアの方に行こうとして足を止める。


誰かがドアの前を通ろうとしているな。鉢合わせせると不味いか。


逃走経路をドアから窓に切り替える。

昔の仕事のお陰で王宮の地図は大体頭に入っている。

確かここは三階のはずだ。

この程度の高さならなんの強化をしなくても受け身を取れば問題ない。


窓から下を見ると窓の上の屋根などが所々飛び出している。


うん、これだけ屋根の足場があれば受け身を取る必要もないな。

さて……窓を開け放って……。


ガチャリ


ガチャリ?俺は何も触ってないはずだが……。


「あっ、てめぇイグマ!絶対安静だろうが!」


あっ、おうぅ。


「ハッシュじゃん。おはよう」


ちっ、


「何が、おはよう、だ!!さっさとベッドに戻れ!!」


なんだよぅ、そんなにいわなくてもいいじゃぁん。ぶー。


「はぁい、はぁい、戻りますよー」


ったく。嫌な時に会ったなぁ。

影分身を消してベッドに戻る。


「ったく。油断も隙もない。」


「あれからどうなった?」


「大丈夫だ。皆無事だよ」


「そっか。良かった」


「なぁ、その盗賊ってそんなに強かったのか?」


ハッシュは少し沈んだような顔で聞いて来た。恐らくその場にいなかった事を悔いているんだろう。

だが……。


「ああ、お前ら二人がいても戦闘時間が一秒か二秒延びるだけだろう。恐らくむしろあいつは援軍の不確定さで引いたんだ。お前ら二人が最初からいたら全滅もあり得ただろうな」


いたかいないかなんて関係ないむしろいなかった方が助かっただろう。


「そんなにか……」


「こんな暗い話よりもさ、観光の話をしてくれよ。どうだった?」


「あ、ああ。実はな、観光してる間に迷子に会ってさ……」

ハッシュはこの話をしている間にズリズリと影が窓の方に向かっているのに気づかなかった……。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ふぅ、一か八かだったが上手くいったな。

気付かれるじゃないかとヒヤヒヤしたぜ。


まぁ、バレたら怒られるだろうが気にしない。

気にしたら負けだ。


さぁてここの道を曲がると精鋭訓練所のはずだが……。

おお、見えて来た。さて見張りは……いないな。

よし、こっそりと……。あれ?先客かな?


「二刀ユニオンスキル《断裂弧月》!太刀風《鎌鼬》!」


……こっえぇぇえ。


観客席の結界にヒビ入ってんじゃねぇか。


ありゃ、野獣だ。巻き込まれて切り刻まれるのはごめんだな。仲間に切られて死ぬなんざ笑い話にもなんねぇよ。


退散だ退散。えぇっと後特訓できる場所つぅと魔導修練場か。


宮廷魔術師隊舎の近くだな。


見張りを避けて……。


あれ?こっちにも?


見るとガルシアがかかしの的に向かって……。


レーザーで灰にした後どでかい火の玉で燃やし尽くし、魔法でナイフを音速を越えるような速度でぶちこみ、ホワイトアウトする程のブリザードを起こし、何本もの木を削ったような杭が殺到し、巨大な岩で押し潰し、雷でそれを粉々にしていた。


オーバーキル過ぎるだろ!!

かかしに何の恨みがあるんだ。

しかも終わった後何かブツブツ呟いてる!?


あれは何か関わっちゃいけない気がする!



後どこがあったかな?

兵士隊舎の横に修練のスペースがあったな。そこ行くか……。



ここにも!?

何かリタが支援魔法の練習してる。あいつ関わるといろいろ面倒臭いんだよなぁ……。


あれ?俺、居場所無くなってない?


ふん、いいもんね、いいもんね。いつかスッゴい技開発して皆を驚かせてやるもんね。


はぁ、ギルドの修練場空いてるかな?


あそこ使用料あるんだよなぁ。S級特権効くかな?

とりあえず、影移動でギルドまで移動する事にした。


少し哀愁が漂っていた気がするが気にしない。

気にしたら負けだ。



スミマセン必殺仕事人が楽しみ過ぎて遅れました。

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