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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
63/107

63死人

――――リタ 視点――――――――


私がその時抱いていたのは醜い嫉妬だった。

私がそのリボンを探し続けた原動力は嫉妬。

ずっと身に付けているリボンが邪魔に見えて仕方がなかった。

だから私はリボンを探し続けた。

そのリボンの隣に私のリボンを持っていて欲しくて。

醜い自分が嫌になる。

そのリボンがそういうのじゃないっていうのは分かりきっていた筈なのに。

それでも視線を一人占めするリボンが妬ましかった。

そのリボンの印象を薄める為に同じリボンを探し続けた。

そして遂に見付けた。

A〜Zの文字の刺繍がされているリボンを。

メルトくんに渡したのはI(愛)の文字。

ハッシュくんに手伝って貰って漸く隣町で見付けた。

そして次に私が抱いたのは疑問だった。

リボンにこれだけ執着し続けた私だからこそ抱いた疑問。

何故隣町なんだろう。

街と街を往き来するには当然城壁内に入るにも出るにも足税が掛かる。

お金のないスラム街の子供達にとってそれは大金だろう。

リボンをくれるような知り合いも居ない様子だったし、彼女達が町と町を移動したことは間違いない。

ならばなぜわざわざ危険を冒して子供二人で魔物の出没する街道を移動し、お金を惜しまず他の街へ移住したのか。

何故そんな必要があったのか。

そんなことを考えながら私はメルトくんにリボンを渡していた。


しかしそんな些細な疑問はメルトくんと帰るために街道を見渡した瞬間、街道に在った恐ろしい程の違和感に頭の片隅に追いやられ、二度と表出することは無かった。


何で皆あの路地を無視して歩くんだろう……。


そのことに気付いた瞬間、背筋に氷を押し付けられたかのような衝撃が走った。

どうやら良く見れば自分がそれに気付けたのはデバフを警戒して常に結界魔法を自分とパーティに掛けているからだということが分かった。

普通の人は一切気にしている様子はなく、それどころか一瞥すらせず、遠回りさえしている人もいた。

更に良く見れば人だけではなく動物もそうだ。

それがまるで自然の摂理であるかのようにその場所を避けて通る。

空を飛ぶ鳥でさえその路地を直角に避けて飛んでいた。

今まで見てきた現実を全て否定する事実に、今立っている地面が崩れていくような気がした。

現実というものを一枚剥げば、そこには得体の知れない何かが潜んでいるのではないか。

そこにある筈の物が存在しない、いや、在ってはならない物が存在する恐怖にリタは恐れおののいた。


「………………ごめん。用事が出来たから先に行ってて貰っていいかな」


そして最後にリタが抱いたのは使命感。

この不自然が人の手で行われたことであることを確かめなければならない。


メルトくんは異変にも私の強張った表情にも気付かなかったようで先に行ってしまう。

弱い心が引き止めようとするが、意思の力で何とか堪えた。

メルトくんが見えない位まで遠ざかると私は酷く深い溜め息を吐いた。


「ふぅー、やらなきゃ……」


隙あれば取り憑く恐怖を振り払い問題の路地へと向かう。

そしてその路地に手を翳すとその路地へと結界を広げた。

結界は自分の世界だ。

お祖母ちゃんはそう教えてくれた。

結界は自らにとって都合の良い世界を広げるための魔法なのだと言う。

そしてその路地を私は自分の世界に取り込んだ。

そのまま私はその路地を自分が“見える”ように都合良く改変した。


「うそ……」


思わず声が漏れた。

スーッと現れたのはどす黒い卵型の魔力で作られた路地いっぱいの結界。

そしてその中に漂う首の骨が折れた一人の男だった……。


リタは助けようと手を伸ばすがドロリと手が黒い魔力に捕まり、不快感から思いっきり手を引く。

そしてリタはその感触にこの不可解な物体がリタの知っている魔法とは根本が異なる物だと気付いた。

この魔法の本質はリタが使うような結界魔法というよりキースの使う始源魔法の方が近い。

魔法の内容自体はリタの自分の都合の良い世界を創るというのに似ているがそれを創り上げる手段が異なる。

そんな感じだ。


そして多分コレは私が使う魔法よりもずっと高度……。


リタは自分も結界魔法を創る者として痛い程分かった。

自分が創る世界より緻密で、完璧で、下地に使っている魔法も自分とは比べ物にならない程の難しい物、更にその上あそこまで高度な隠蔽をさらりとしてのけた。

リタはその力に恐怖した。


私がギリギリ見付けられるレベルってことは後見付けられるのはお祖母ちゃん位しか居ないってことになるよね……。

コレが何にせよ私が今見付けておいて良かった。

永遠にこのままこの人が見付けられずに居るのは可哀想だし……。


リタが偶々結界魔法の使い手で偶々違和感に気付いたからこそ発見されたものの、もし今コレが見付けられなかった永遠に発見されなかっただろう。

こんな往来のド真ん中にありながら、さらりと存在を消せる力量は敬服に値する。

そして調査を進めたリタは更に驚くべき事実を発見する。


「うそ……。この中もしかして時間が止まってる?」


それは正しく有り得ないことだった。

魔法が流布しているこの世界では大抵のことはなんとでもなる。

しかし、依然として動かし難い事象が存在する。

それが時。

空間魔法はアイテムボックスのような拡張系は広く流布し、移動系なども完全に扱う魔法習熟者も世界に二人居るが、時だけは絶対の摂理としてそこに存在する。

時は皆の中を流れ、去り行く物。

流れを塞き止めることは出来ないし、一度去った流れが再び流れることはない。

しかしそんな“常識”を目の前の魔法は完全に無視していた。

時を止めているのかどうかは初めて見る類いの魔法だけに定かではないが、時を操る類いの物だということだけは確かだ。

しかしそれはそれで好都合。

もし、それが本当なら多少はこの卵型の結界の中に漂う男性を救える可能性が出てきたということ。

リタは調査を終えると同時にこの結界を壊し始めた。


確かに凄い魔法だけど術者が離れる設置型なら……。

今此処にいる私の方に分がある!


確かにこの凄まじい魔法使いが此処に居るならリタとの優劣は明らかで、逆らおうとすることすら愚かな行いだろう。

だが幸いその化け物は居らず、幾ら解除に時間が掛かっても許される設置型の物。

出来ない道理がない。


「≪リムーブ≫!」


リタが結界の破壊に全集中力を傾けて1時間程。

漸く解除に成功した。

卵型の結界が消え去ると、首の骨が折れた男性がドサリと糸が切れたように倒れた。

リタは解除に全精力を傾けたせいでふらふらだったが、直ぐに男に駆け寄って治療を開始する。


「≪リムーブ≫!」


男の首はまるでさっき折られたかのように新鮮で、みるみる内に治って行った。

治療が済むと男に対して声を掛け、意識が戻るのを待つ。


「うぅ……あぁ……」


男が気が付いたので、リタは経緯を聞くことにした。


「大丈夫?体に不具合とかない?良かったら直ぐで悪いんだけどどうしてああなったのか話してくれる?」


「あぁ……。そうか終わったのか……。時間的には一晩か?長い長い一晩だったな……。それこそ奴の言う通り永遠に苦しむのかと思った……」


会話が噛み合わないながらもリタは会話をしようと何度も質問を重ねる。


「貴方は誰?どうしたの?誰にやられたの?」


そこで男は漸くリタの存在に気付いたのかすまなそうな顔をした。


「ああ……悪い。俺の名前はリュート。情報屋だ。さっきのは少し仕事でヘマしてな。二人組なんだがもう一人を知ら……いや、メッセージが読まれてるってことは生きてるか……。良かった……」


一人で納得したリュートと名乗る男は心底ホッとした表情で大きく頷いた。


「それで誰にやられたの?」


リタはその誰に、という部分を聞きたかった。

ソイツが味方になるにせよ敵になるにせよ要注意人物であることには変わらないからだ。

だがリュートからの返答はすげなかった。


「それは聞かない方が良い。ヤツに俺が生きていることがバレたら次に狙われるのはお前だ。知ってる情報は少ない方が良い」


リタはわざわざ助けたのに断られて一瞬ムッとしたが、そのもっともな言い分に納得する。

しかしリュートのその言葉で質問が半減してしまったリタは手持ちぶさたになり、何の気なしにこう尋ねた。


「これからどうするの?」


その言葉はリュートを深く傷付けたようでリュートは自嘲気味な笑みを浮かべた。


「そうだな……。情報屋は引退だな。ギルドでも死亡扱いになってるだろうしこのまま足抜けするか……」


「そのもう一人の人には伝えないの?」


リタは慌ててフォローしようとするが、逆効果だったようでリュートは更に自嘲気味な笑みを深めた。


「レミには、そうだな……。メッセージを見たみたいだしそれで良いだろ。元々こうなるのは最初から見えてた。明らかに俺がレミについていけてない。騙し騙しやっては来たがもうそれも限界だろう。このまま別れるさ」


静かにそう語るリュートの不思議な迫力にリタは圧倒されて何も言えなかった。


「そ、そう……」


「さて、もう行く。助かったよ。もし、今度君が危ない目に遭ってると知った時には助けに行くよ。夕碧のリタだろう?」


情報屋だけに知っていたのか名前を言い当てるリュートにリタは頷く。


「ええ……」


リュートは立ち上がると服をパンパンとリタに向かって払い綺麗なお辞儀をした。


「ではこれで、幸運を祈ってる」


リュートはそれだけ言うとリタに背を向け立ち去った。

その際、距離が出来たからだろうか。

リュートがボソボソと言った言葉はリタに届くことは無かった……。


「勇者イテナ。名前は覚えたぞ……。短い永遠の苦痛を感謝する。お礼にこれまでに俺が培った人脈、コネ、その他諸々使って地獄の底まで追い詰めてやるよ。俺にトドメを差し忘れたことを後悔させてやる」


説明しよう!

リュート君とはレミとコンビで暗殺ギルドの数少ない情報屋をやっていた少年だ。

情報屋でありながら唯一『夢魔』という名前つき(ネームド)というゲロヤベェ位有能だったのだ。

眠神から絶大な加護を授かったレミによる反則的な相討ち性能は敵側の一人を確実に無力化し、リュートの隠蔽能力でレミを隠すという完全な支援型だ。

因みにリュート君は素朴な物が好きだぞ!

ひょんなことから(普通に依頼)勇者の性格チェック的なサムシングをしたリュート君はゲロヤベェことにイテナさんの怒りを買って危うく土の下にドナドナされちゃうところだったのだ。

いやー人の過去をほじくるのは良くないよね☆




…………いや、真面目に間が空きすぎて忘れてるのすみませんm(__)m

本当は四話で外伝終わらせるつもりだったんです。信じて下さい刑事さん。

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