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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
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06内なる悪魔

―――――リタ 視点―――――――


勇者に譲られた部屋の扉は私には敷居が高すぎた……。

もし、観光なんてせずに王都に一緒に来てたらこんなに扉は重くなかったはず。もし、もっと速く帰ろうとしてたら。もし、もし、……。

意味がないと分かっているのにそんな考えが止まらない。

メルトくんに何かあったら治せるのは私だけ。そう自分を慰めて、なんとか扉を開けようと……。


ガチャ。


ビックリした。

心臓がとまるかと思った。

「おお、リタか。お前もお見舞い?」


開けたのは私じゃなくてハッシュくん。私はかなり前から扉の前にいたからハッシュくんは長い間部屋の中に居たんだろう。

「う、うん。」


「メルトも喜ぶよ。入ってやって。」


巨大な関門だった扉はすんなり私を迎え入れてくれた。


「じゃあ俺イグマの方、行ってくるから。ゆっくりしてって。」


そう今回一番怪我をしたのはイグマくんだ。本当に珍しい。いつもなら宿屋の選定までめんどくさがるような人なのに。


えっ、ちょっと待って、これから私メルトくんと二人きりっ!

一瞬で顔が真っ赤になるのがわかる。これはまずい。

やめて〜ふたりにしないで〜。


バタン。


一歩遅かった。無情にも固く閉められた扉は、どうも私の力では開きそうもない。


とりあえず顔の熱下げよう……。何も考えない、何も考えない、何も考えない、何も考えない、メルトくん、何も考えない、メルトくん、何も考えない、メルトくん、何も考えない、メルトくん。


……駄目だ諦めよう。

どんな人でも不可能はあるもの。うん。


ぎこちなく眠るメルトくんを眺める。

メルトくんは負けない人だと思ってた。どんどん強くなって、どんなものにだって勝っちゃうとても追いつけそうもない凄い人。


でもそうじゃないってわかった。メルトくんだって負けるんだ。


「どうしたらいいのかなぁ。ねぇ、メルトくん。」

ううんわかってる。しなきゃいけないことぐらい。

決意した私は立ち上がりむかうべき場所へむかう。

「まってて。今すぐ追いつくから。背中ぐらいは私が守るから。」


――――優人 視点――――――――


俺は今、教育係に俺と正也が使っていた部屋を譲ってから、唯一友好的な(生け贄に出されたであろう)貴族(名前は忘れた。大体人と話すのに名前なんて必要ない)に会って舞踏会だなんだって話している。召喚された時にイテナさんに脅されてた人だな。


ん?賄賂?何を言っているのかちょっと良くわからないな。

打算なんてないよ?ただ単に心配しただけだよ?本当だよ?


「本当にあの方達が師匠で大丈夫なんでしょうか?酷くやられてましたけど……。」


聞いたのはまさに貴族!と言ったような人だ。ああ、いい方のね。品格がある穏やかな大人の人みたいな。まったく不公平なもんだ。世の中はいい人が貧乏くじを引くようにできてるんだ。


「ああ、その点は問題ないよ。この私シスクス=バリヤードの名において保証しよう。」


シスクス=バリヤードさんね。覚えておこう。


「ただ問題は……。S級冒険者である彼らがやられたってことだ。」


冒険者?ああ、ゲームで良くある。


「冒険者って魔物と闘う人達ですよね?」


情報のすり合わせは必要だ。肝心な時に情報が間違ってました〜。では困る。

「うん、違う依頼もあるけどね。大体はそんな認識で間違いはない。」


「それで問題っていうのは……。」


「冒険者っていうのはランクがあってね?新入りのFからAそれぞれの依頼を成功させていくとなれるんだけど。」


ピラミッドが形成されてるわけだ。


「S級だけは違っていてね。まぁ、わかりやすく言えばS級なんていうのはギルドから与えられた人外の証明なんだよ。

S級一パーティの戦闘能力は、S級を除く十万人いる冒険者ギルド。そのものに匹敵する。」


なっ!ということは……。


「問題っていうのはね。その彼らが倒されたってことなんだ……。」


――――メルト 視点――――――――


ポチャン。


圧倒的な浮遊感。いや違うか、どちらかと言えば水の中で漂ってるような感じか……。


回りに有るのは真水だ。ただし呼吸は出来るし、まったく苦しくない。


凄い透明度を持つ水は濁りというものがまったくなく、空を見上げる時のように光が届かない部分が暗く見えるだけだ。


上を見上げてもその限りなのでどうやらこの辺りが一番明るいらしい。


……いや、どういうことだとか聞かないてくれ。精神世界だからとしか言いようがない。


下にあるのは海のように生物の死体が積み重なった白い砂のようなものではない。

すなはすなでも砂漠の砂だ。ちゃんと日に焦がされたような赤茶けた褐色の砂である。


だから、精神世界なんだって!俺に何か言われても困る。


因みにあれを蹴るのはおすすめしない。あれは金属のように硬い。蹴った足の方が痛くなる。完全変化すれば砕けるが、そしたら今度はその砕け散った破片が刺さって痛い。


何を言っているか解らないだろうが、安心してくれ、俺もわからん。


「おい!いつまで寝てんだよ!」


この世界の全てに響きわたるような声。決して大きくはないはずだが、不思議とよく通る声だ。


「うるせぇなオメガ。今起きるよ」


まぁ、正確に言えば向こうの世界では寝ているわけだが…そこは気分だ、気分。


「ったく。無様にやられやがって、S級冒険者も形なしだな」


すらりとしたローブを着て高貴という言葉を体現したような金色の髪。皮肉そうな口に、鉄錆びのような黒い目、高くのびた鼻、悪魔という名に喧嘩の叩き売りをするような美男子だ。

まったく納得がいかん。悪魔のくせに。悪魔のくせにぃ。


「なんだと?えらく突っかかるじゃねぇか。てめぇだって魔王にやられたから俺んなかに入ったんだろうが!」


こいつは、まぁこいつが言ってるのが嘘じゃ無ければだが、悪魔族の最後の皇帝で現魔王のファルダに三日続いた決闘の末敗れたんだそうだ。こいつのステータスをみても嘘じゃないことがわかる。

――――――――――――


名前 オメガ=ディアボロス

年齢 148

種族 悪魔

職業 元皇帝

レベル 236

HP 118960/118960

MP 120980/120980

攻撃 5919

防御 5723

俊敏 2871


スキル

審眼レベル不足


称号

ラストエンペラー


――――――――――――

その決闘のお陰で力を失い回復するために俺の体にいるんだそうだ。 まったく迷惑な話だ。俺を巻き込むなよ。


「バカ言え、てめぇは瞬殺だろうが」


「ちっ、じゃあお前だって勝てたのかよ。ありゃ化けもんだぜ?」

答えは分かってる。大体からして自信家のこいつから何々時間内には〜とか何分以内には〜という言葉を聞いたことがない。


あの神狼でさえ1時間あれば倒せるなどと抜かしたのだ。呆れる程に自信家である。


「むぅぅ……。いいとこ勝算五割だな。

いや、正確には力量的には俺の方が倍近くあるが、技量では向こうの方が圧倒的に上だ。長期戦なら俺が勝てるだろうし、短期戦なら勝てないだろうな。」


……驚いた。こいつん中で実質ずっと勝算十割だったこいつの口からまさか勝てないなんて言葉が出るなんて……。


「そんな事はどうでもいいだろ。それよりも……なんで呼んだのかは分かってんだろ?」


「……ああ」


こいつは力は失ってる。いや、失っていた。

つまりは力を取り戻しつつある。 そして人格を乗っとってる方が取り戻しやすいらしい。


だが、そうはいかない。こいつの力は俺が使う。人格も俺だ。


「《能力最大活性》!《完全変化豪魔》!《纏禍》!」


身体能力を最大限底上げし、悪魔の筋力を得るために体がパンプアップする。一時的に悪魔になった事で体内魔力が変化し体のまわりに辺りを侵食する黒魔法のオーラが噴出する。それを制御し体に纏う。

いつもなら狂気に身を委ねたくなるし、筋肉も悲鳴をあげるが精神世界だからその心配はない。


「せっかちな野郎だな。《擬態解除》!《纏禍》!《魔剣召喚》!《操炎》!」

オメガは人化を解き俺と同じオーラを纏う。ただ、奴はそれだけじゃない。刀身に赤い紋様が浮かび上がる長剣の魔剣を召喚し、その魔剣が炎に包まれる。


「オイオイ、嘘だろ……聞いてねぇぞ……」


それを聞いた奴は不敵に口の端を吊り上げながら……


「そりゃそうだろ。言ってないんだからな」


俺が剣を使わない……いや使えないのには理由がある。


ただ単純に剣で叩き切るよりもぶん殴った方が強いからだ。そこらの剣ではオーラが届かないため全体的な攻撃力が落ちてしまう。


さらに手入れの問題もある。

力が強すぎて柄を壊すわ、刃こぼれするわ、曲がるわ折れるわ、でろくなことがない。

恐らく奴の剣は凄い丈夫で攻撃力も高くなるはずだ。

まったく前回どれだけ頑張って倒したことか……それを上回る攻撃力なんてじょぉうだぁんじゃない。ったく。


「お前をさっさと倒して非道な魔王を倒して臣下を救いにに行かなきゃならないんでな。こんなところでやられてる暇はねぇんだよ!」


「バカ言え。その力を使って俺がみんなを守るんだよ。負ける訳にいくか!」

負けられない!絶対に!

「じゃあいくぜ?力も人格も勝った方のそう取りだ!負けた方はスッこんでな!」


「来い!」


「「うおおぉぉぉぁぁぁああああああ!!」」


俺とオメガが激突する。意地と力と人格を賭けて……。

あれ?メルトの方が主人公っぽい

なんで?

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